『ショートコース・デビュー』
多摩川河川敷での練習を重ね、ユーティリティでジャストミートしたボールが100ヤードの表示板を越へ、左に引っかかりながら120ヤード付近までランを含めて飛ぶようになりました。準備期間での目標、100~120ヤードのスイングが可能となり、ショートコース・デビューの準備ができてきました。
しかし、私にはこのまま左に引っかかりながらのショットでコースに出て大丈夫なのかなと言う不安が常にありましたので、正治さんに尋ねました。
「その不安感はもっともだし、コースに出れば左の深いラフや林に打ち込むでしょう。しかし、練習を重ねて体のいろいろなパーツを動かしていれば、痛い経験が自然とスイングの調整を行うようになる。つまり、スイングのスピードを調整する感覚が働き、次第にストレートなボールが打てるようになるのだよ」
そう笑いながら言います。
「引っ掛け気味のショットはボールがつかまっているので、この調整が最も行いやすい方法なのだ。安心したまえ」
そう言われて、上達は試行錯誤の積み重ねの中で達成されていくのだなと納得しました。
河川敷での「左引っ掛けショット」に続く練習は50ヤード以内のアプローチです。正治さんは9番と7番、ユーティリティでのランニングアプローチを練習するようにと「Xラインドリル」「五角形打法ドリル」を伝授してくれました。
「Xラインドリル」とは次のものです。
50ヤード以内のアプローチは、距離に応じて、9番アイアン、7番アイアン、ユーティリティを使い、目標よりも右に向いてクローズにスタンスを取り、クラブを目標方向へ振り抜く。アルファベットの「X」の形のスイングです。この打法はピンに寄せるのではなく、グリーン全体という大きな目標に乗せることです。広いエリアをターゲットとすることで、リラックスして打つことができます。体の硬直を防ぎ、「脱力」が良い結果をもたらします。
次に「五角形打法ドリル」はですが、それは次のものです(写真参照)。
グリーン周りからのアプローチは9番アイアンでパターのようにボールを転がします。地面に真直ぐ垂直に立ち、クラブを自分の体に立てかけ、そのまま前傾してクラブを握ります。クラブを短く持つことはしません。手もクラブも体の近くにあります。
両肩と両肘とグリップは必然的に五角形になり、クラブが体に近いのでヒールが浮きます。つまり地面についているトウの部分でボールをヒットします。
打ち方はパターと同じ。五角形を崩さずストロークして、ヘッドのトウの部分でボールを打ちます。トウで打つのでダフることはありません。トップ気味にコンと打ちます。
ヘッドの芯から外れたところで打つので、ボールは勢いよく転がり過ぎることはありません。ゆっくりコロコロと転がるので安心です。距離に合わせて9番アイアンと7番アイアンを使い分けます。
また、砲台グリーンの場合は、掬い上げによるダフリ、トップのミスを防ぐことができるユーティリティが大きな武器になります。転がし上げるアプローチをすることが大切です。
私は、正治さんに「どうしてプロのようにサンドウェッジやアプローチウエッジを使わないのですか?」と尋ねました。正治さんは言います。
「ウェッジはロフトがあるため、本能的にすくい上げてしまうスイングになる。つまり、ダフリ、トップ、シャンクと様々なミスが出て、グリーン周りでいわゆる『往復ビンタ』をして大叩きとなり、スコアを大きく崩す原因してしまう。スコアを纏めることはできないのです」
さらに正治さんは言います。
「『レッスンを受ける心得10カ条』にあるように、最初から何でもできる優秀な人はいないのです。自分の実力を自覚し、それに見合ったスコアでプレーするのが、ゴルフを楽しむコツ。そのためには格好良くなくても、できるだけミスの出ない方法を取り入れることが大事なのです。何度も言うように『ゴルフは確率』のゲームなのだから。スコアアップにはコースマネジメントが大切だと言われているのがその意味がだんだん理解できるようになるよ」
正治さんは続けて言います。
「上げるのではなく、ヘッドを上から落として転がすのだ。ランニングだ。そうするとミスはピンに対して、ショートかオーバーかの2つに絞られる。後はパット勝負だ」と説明してくれました。
(次週に続く)

文:久富章嗣(ゴルフ向学研究所所長) 編集:島田一郎(書斎のゴルフSTAFF)
写真/五角形打法『久富ゴルフ・レッスンブック』p106-107引用
※このたび、久富さんのドリルを集めた本『月3回の練習で100を切る!久富ゴルフ・レッスンブック』の電子版がアマゾンより発売されました。オールカラーの改訂版です。『百打一郎と申します!』がよりわかりやすくなること請け合いです。