『引っ掛けフック→ドローボールへの方程式』
師匠の正治さんとショートコースをプレーしたことで、私はシャンクやスライスが出て大叩きになるのを避けるために、ボールをつかまえて打つ、引っ掛けショットが初心者のコースマネジメントとスコアアップにとっての基本だと再認識しました。
スコアをまとめるためにはアプローチが重要だということも知りました。ミスの確率の低い7番アイアンや9番アイアン、ユーティリティのランニングアプローチを選べばパーはとれなくとも、ダボ以上を打つ可能性が低くなり、大叩きを確実に減らせることも実感しました。
また、グリーン手前にボールを運ぶ意識は、ランニングアプローチの精度が上がれば寄せワンの確率が高まります。クラブはロフトが増えるほどボールに正しくコンタクトすることが難しく、ダフリ、トップ、ザックリ、シャンクが出やすくなると正治さんから説明を受けました。
ゴルフは確率のゲームです。プロのようにウェッジで上げて寄せるアプローチは初心者には不要なのです。
ショートコースではティショットが100~120ヤードで十分プレーが可能です。しかし、本コースでのデビューに備えて、飛距離を150ヤードまで伸ばす練習を試みました。
「正しいマン振りドリル」で体を柔軟に動かす
正治さんから150ヤードを打つスイングの説明がありました。
「ビギナーほど体の回転が少ない。それは回転するほどボールから遠ざかる恐怖観念が働くからです。そこで、敢えてスエーして、ボールから遠ざかるドリル、『正しいマン振りドリル』を教えたいと思います。
このドリルの目的は、腰を大胆に回転してバックスイングし、大きく戻してやるというものです。それもフォローで左足を大きく後ろに引いて、腰をさらに回転させてやるのです。骨盤をこれ以上ないほど回転させてやる。『骨盤を制するものはゴルフを制する』です。飛ばし屋に共通する動きとして、腰の回転が非常に早いのです。骨盤を素早く回転しています。ボビー・ジョーンズも『飛ばし屋は、腰を稲妻のような速さで疾走させる』と言っています。
このドリルは、動かない体を動くようにする良い練習ドリルだと、発破をかけられ取り組みました。
このドリルは大振りしてしまうため、タイミングが合わずミスが連続して出てしまい、体が疲れて硬直して何一つ収穫はありませんでした。ジュニアやラウンドプレーヤーは数百の球を打ち、徐々に体の硬直をほぐして練習の入り口に到達して成果を出しますが、私のように100球前後の練習では筋肉が柔らかくならず、年齢的にも腰の急激な回転はかえって腰を痛める危険性があると感じました。ただ、体の各パーツの動きを柔軟にする良いトレーニングドリルだと思いました。
そこで、次に取り組んだのは、アドレスです。レッスン書には左足つま先を開き、ボールはかかと線上に置くと書いてあります。この理論は正治さんが言うには、上級者がフックに悩み、それを矯正するためにインパクトで腰を開き、レートヒットしやすくするための方法だ、とのことです。つまりスライスを打つための理論です。腰が回りにくい私は、逆につま先を閉じたほうがボールのつかまりが良くなると正治さんに言われました。レッスン書とは異なるアドレスですが、このほうが私にはいいと思えました。
つま先を閉じたアドレスにして、「引っ掛け打法」で上から叩くとボールは力強く飛び、ボールが上がり出し、少しフック気味に飛距離が伸び始めました。「引っ掛けフック、これだ~」と少しヒラメキを感じました。
正治さんの話では、スイングには腰を止めて、ヘッドを先行させて打つフック理論と腰を回してヘッドを遅らせて打つスライス理論の2通りがあり、ゴルフには真っ直ぐ打つという理論は存在しないとのことです。
真直ぐ遠くに飛ばしたい初心者の私には理解が難しい話だと思いました。
初心者はフックとスライスの打ち方の違いを理解し、真っ直ぐなボールを打とうという意識から脱却することが大切だとのこと。そして、スライスよりもフックの方が、初心者にはボールがつかまり、上達曲線の上昇が早いということでした。
写真①-1 写真①-2
「引っ掛けショット」→「ドローボール」への方程式
では、ここで引っ掛けショットが、なぜドローボールになっていけるのか、正治さんの解説です。
「引っ掛けショットの練習を続けると、体の硬直が取れて、腰と腕が柔らかくスムーズに動くようになります。そうすると、引っ掛けショットに腰の回転、つまりスライスの体の動きが加わって、フックが打てるようになります。つまり、最初から左に飛び出していたボールが、それよりも右に飛び出してから左に曲がるようになります。これがフックで、このフックが理想のドローボールになるには、腰の回転と腕の振りのバランスが良くなればできるのです」


正治さんが言うには、ドローボールが打てるようになれば、さらに腰の回転を鋭くすればフェードも打てるようになると言います。とはいえ、初心者の私には「引っ掛けショット」→「ドローボール」にするということなのでしょう。
基本は「引っ掛けフック」はミスだと言う一般的な意識を、意図して打っているのだというポジティブな発想に転換できるかどうかということです。
上級者はこのフックとスライスの2通りの打ち方を、数千球の球数を打ち、試行錯誤して、多くの実戦経験を経ながら、自分が打ちやすいのは、フェードボールかドローボールかの見極めをして、球筋を会得していくそうです。
正治さんは言います。
「一般のレッスン書はこのプロセスを省いて、真っ直ぐ遠くに飛ばす方法を紹介していますが、ゴルフに真っ直ぐなボールはありません。それは架空の方程式に過ぎないのです。多くのゴルファーは架空の夢を描いて、悩み多きゴルフ人生を過ごすのです」
「正しいマン振りドリル」のおかげで、私はいろいろな体のパーツの動きが良くなり、腰の動きが前よりはスムーズになっていると感じました(スライス要素)。少しずつショットに変化が出てきました。ボールの位置も左、真中、右と、どの位置がボールを一番つかまえやすいかを、試行錯誤しながら試しました。最初は大振りして上手く当たらなかったのが、徐々にボールに当たり出し、引っ掛けショットが少しずつフックになってきました。
正治さんの考えた様々なドリルを取り入れることで、体と脳の回路がつながり「思考の脱力」現象で、体の硬直が取れてきたのだと感じるようになりました。
ミート率は未だに安定しませんが、ユーティリティの飛距離はフック気味に150ヤードまでランして伸びて行き、コースに出る準備ができてきました。
さらに正治さんから家で行う飛距離アップの基本ドリルとして、「前傾体操ドリル」を勧められました。
背筋を伸ばして真っ直ぐ立ったら、背中を丸めずに骨盤から前傾します。腰を入れて出っ尻にします。こうして背骨を軸にして、左肩を回して上体を回転します。次にそのままの前傾姿勢で、今度は右肩を左に回して上体を左に回転します。つまり、背筋を伸ばして前傾したら、背骨を軸に、右に左にと上体を回転します。
クラブを握ると、初心者は、たとえボールを打たない素振りでも腕を振ることに意識がいき、体の回転を正しく行うことができにくくなります。クラブを持たないで、腕も振らずに体を回転する動きを行うと手打ちを防ぐ効果があり、飛距離アップに役立つとのことです。左肩を下に回せば自動的に腕がついてくるので、左肩のことだけ考えていればよい。右肩の場合も同じです。
この「前傾体操ドリル」を部屋の中で行い、早くコースに出られるようにしたいと思います
写真②−1,②−2

次週に続く
文:久富章嗣(ゴルフ向学研究所所長) 編集:島田一郎(書斎のゴルフSTAFF)
※このたび、久富さんのドリルを集めた本『月3回の練習で100を切る!久富ゴルフ・レッスンブック』の電子版がアマゾンより発売されました。オールカラーの改訂版です。『百打一郎と申します!』がよりわかりやすくなること請け合いです。