YNGゴルフ研究会書斎のゴルフSpiritsその13

どうしたらスコアアップできるか Part 6 

コースマネジメントとは最後までボールを見ること

ナショナルティームに学ぶコースマネジメントの基本

ナショナルティーム出身のプロが大活躍しています。畑岡奈紗(2015・2016年ナショナルティーム)は世界ランク11位でUSLPGAでは3勝と大活躍しています。金谷拓実(2015~2020年ナショナルティーム)は元アマチュア世界No.1でプロ転向の翌月のダンロップフェニックスで優勝しています。4月のオーガスタナショナル女子アマ選手権では、17才の高校3年生、梶谷翼(現ナショナルティームメンバー)が見事優勝という快挙を達成しました。アマがプロの試合で活躍し、プロ転向後すぐに世界レベルのトッププロとして活躍する彼らの驚異的な強さの秘密は何なのか、ゴルファーなら誰しも興味の尽きないところです。

2019年の日本ジュニア選手権の際、霞が関カンツリ―クラブ東コース(オリンピックのコース)の18番グリーン近くでナショナルティームのコーチ、ガレス・ジョーンズを見かけたことがあります。ニコッとした笑顔は穏やかなおじさんという感じです。

ガレス・ジョーンズは、ナショナルティームの指導について次のように語っています。

ゴルフでは事前の準備(planning)がいちばん大事で、試合のラウンドでの出来は、コースの下調べに基づいたゲームプランをいかに忠実に実行できるかにかかっています。練習ラウンドでは徹底した情報収集を、試合のラウンドではプラン通り、迷わずにプレイすることを徹底させました。

コース攻略の基本はグリーンから逆算して、最後にいかに簡単なパットを残すかということです。そのために練習ラウンドでは、グリーンの情報をできる限り詳しく収集します。そのうえで、グリーン上の『ゼロライン』を見極めて、ゼロラインが残るエリアにボールを運ぶことを軸に攻略プランを立てていきます。

『ゼロライン』とは完全に真っすぐなラインということです。どのピンポジションに対してもゼロラインになるエリアが分かっていれば、打つべきショットがより明確になるので、迷いが生じる余地も少なくなるわけです。

プラン通りにボールを打っていけるエリアを『インポジション』、そうでないエリアを『アウトポジション』と呼んで区別しています。

例えば、軽い左ドッグレッグのホールで、ピンがグリーンの左端に立っている、ピンの手前にはバンカーがある、という場合、グリーンを狙うのにベストな地点はフェアウェイの右サイドです。この地点を中心として、おおむねフェアウェイにあり、ピン筋にバンカーがかからない範囲が『インポジション』となり、それ以外の範囲が『アウトポジション』です。

仮に、ミスでボールが『アウトポジション』に飛んでしまったら、必ず次のショットで『インポジション』に戻すということを徹底しています。

ミスした時に『ヒーローショット』に挑み、そのミスを一気に挽回しようすると、スコアを1打以上落とすリスクが高くなります。

先ほどのホールの例で言うと、もしティーショットを左にミスしてラフに入れてしまった場合、無理にバンカー超えのピンを狙うのが『ヒーローショット』です。しかし、私のチームでは必ずフェアウェイの『インポジション』に戻して、そこからパーを狙うのが基本です。

そして、ショートゲームの重要性を繰り返し伝え、ショートゲームの強化に取り組んでいます

ガレス・ジョーンズのコースマネジメントのポイント

〇コース、特にグリーンの情報を収集し、プランをたて、プラン通りにプレイする

〇コースの攻略はグリーンから考える

〇グリーン上の真っすぐな「ゼロライン」に乗せて簡単なパットを打つことが目的

〇そのためにプラン通りにボールを打っていける「インポジション」を狙う

〇ミスしたら「アウトポジション」から「インポジション」にもどしてパーを狙う。「ヒーローショット」は打たない

〇それを可能にするショートゲームを強化する

アベレージゴルファーは、コースマネジメントというと“ハザードを避けるゴルフ”、言い換えれば“刻みのゴルフ”“逃げるゴルフ”と考えている人が多いのではないでしょうか。ガレス・ジョーンズの考え方は少し違うようです。ガレス・ジョーンズは“「ゼロライン」に向かって確実に攻める”という考えです。

実際のプレイはティーイングエリアからはじまります。

ティーショット・・・セカンドショットが打ちやすい「インポジション」に運ぶ。「アウトポジション」からは「インポジ

ション」に戻す

セカンド・サードショット・・・「インポジション」から、グリーンの「ゼロライン」に乗せる。または「ゼロライン」を狙える「インポジション」に運ぶ

グリーン・・・ゼロラインの真っすぐなラインのやさしいパッティングを打つ 

ゲームプランはグリーンの「ゼロライン」からの逆算です。

アマチュアの場合は、このプランが逆になり、ティーショットの飛ばしからはじまります。この逆向きプランでは、当然ティーショットは飛ばす、セカンド・サードショットは乗せる、アプローチは寄せる、パットは入れるという考え方にならざるを得ません。そのためにティーショットからすべてのショットをグリーンとピンに近づけることを最優先に考えるために飛んだ飛ばないということを気にして、スコアメイクとは無関係の飛距離重視のプレイになってしまいます。この時点ですでにスコアを良くするという目標を見失い、ドライバーもアイアンも飛距離が最大の目標に変わってしまうのです。そのため、練習場でも飛距離を追求する練習になってしまうのです。

アマチュアの場合、グリーンの「ゼロライン」が分からなくても、せめてグリーンの真ん中に乗せる、アプローチが打ちやすいところから逆算してコース攻略を考えると、ガレス・ジョーンズの教えに近づくのではないでしょうか。

コースマネジメントを達成するための条件

あるシングルゴルファーが、こんなことを話していました。「なんの準備(ゲームプラン)もしないでプレイするのは、十分な装備もしないで冬山に登るようなものだ。試合になれば可能な限り事前に練習ラウンドを2回行い、コースの状況を確認する。それができない場合は、コースの情報をネットなどで調べて、コース戦略をたてます。コースの状況だけはなく、その日の天候も調べて、その準備も行うそうです。

スコア=マネジメント×ショットです。マネジメントには、コースマネジメントはもちろん、体・メンタル・クラ

ブ・自然条件などの要素があります。これをゲームマネジメントと言うこともあります。そのうえで、レベルに応じた60点、70点、80点のナイスショットが打てれば安定したスコアになります。

これはシングルゴルファーが言う冬山のルート設定と装備のようなものです。コースマネジメントがルート設定なら、装備はそれを可能にするさまざまな準備になります。

コースマネジメントを達成するためには、自分のショットについて二つの重要なポイントがあります。

〇自分の正確な飛距離を知る

〇自分のショットの癖、出やすいミスと大きさを知る

これがマネジメントを達成するための大前提です。どんなに精密なコースマネジメントを考えて、次打を打ちやすいところを狙っても実際にそこへ打てなければ、コースマネジメントは意味がありません。

正確な飛距離を知る

中部銀次郎は「ゲームプランは飛距離の認識から。重要なのは、自分の距離 ―― とりわけアイアンの飛距離をしっかりと認識しておくことだ。それも、キャリーでどれくらいの距離が出るか、そしてどれくらい転がるか ――の認識を、である。そうでなければ、グリーンをねらう目安は立たない」と語っています。

コースマネジメントを考えるうえで、自分の正確な飛距離を知ることは不可欠です。アベレージゴルファーにドライバーの飛距離はどれくらいかと聞くと、230Yとか250Yとか言います。しかし、それは正確なドライバーの飛距離なのでしょうか。

練習場でいろいろな目標に向かってショットの確認をしている人をほとんど見かけたことがありません。正面のネットの200Yの表示に向かって飛んだ、飛ばないという練習をしている人ばかりを目にします。100Y先のグリーンに向かって、クラブを替えて、グリーンの手前、中央、奥と左右にターゲットを変えて、セットアップやスウィングの大きさを変えて練習している人も見かけることがありません。一本のクラブでグリーンに届いた、奥まで飛んだ飛ばないということを繰り返している人がほとんどです。

ある100切りを目指す方がアイアンのグリップの下に120とか140とか書いたシールを貼っていました。「そのシールの数字は何ですか」とお聞きしたところ「これは、番手毎の飛距離です」ということでした。しかし、どう見てもその数字は実際の飛距離とは違っています。おおむね10~20Yくらい実際の飛距離より大きな数字になっているのです。その方はこれまでの最長飛距離を自分の飛距離だと思っているのです。たいていのアマチュアはドライバーもアイアンも最高に飛んだ距離が自分の飛距離だと考えているようです。最高に飛んだショットの確率はどれくらいなのでしょうか。それはまぐれあたりではないでしょうか。

飛距離を知ることは、平均飛距離を知ることが基本です。平均ということは最大飛距離と最小飛距離を含めて計算します。何回も同じショットを打って、計算してはじめて平均飛距離が分かります。アイアンではキャリーとランの飛距離を知ることも必要です。そういう確認をすることが本当の練習なのに、多くの人は最大飛距離だけを追求しているのではないでしょうか。

多くのアマチュアは自分のショットを最後まで見届けていません。コースではフェイウェイに飛んだボールはすぐにボールから目を離し、曲がったボールは「今のボールはどこへ行った」と打った本人から聞かれることがあります。最後までボールを見届けずにどうして自分の飛距離(キャリーとラン)が分かるのでしょうか。練習場でもミスショットは行方も見ずに、すぐに次の球を打っている人がおおぜいいます。それでは、平均飛距離すら計算することもできません。アプローチも同じです。

コースでは、飛距離は風やライなどコースの状況に大きく影響されます。正確な飛距離を知るためには、風やコースの状況(練習場でも)をスウィングする前にチェックして、自分の飛距離を計算する必要があります。自分の正確な飛距離がわからなければ、コースマネジメントは絵にかいた餅になってしまいます。

ときどきアプローチの練習を見てくれと言われます。多くの人から「距離感を出すにはどうしたらいいか」「高くてスピンの効いた球はどう打つか」と聞かれます。たいていは「最後までボールを見ることです」とお答えします。すると不思議な顔をされます。しかし、ボールの飛び方、着地点や転がり方を見ないで距離感をつかむことはできません。ボールが着地してからランの勢いを見ないでスピンの効き方はわかりません。

平均飛距離を知ることは、最後までボールを見届けることです。そしてコースマネジメントは、最後までボールを見届けることなしにはできません。

ショットの癖、ミスの出方と大きさを知る

「ナイスショットはまったくの偶然の産物である。」と球聖 ボビー・ジョーンズが語っています。

アマチュアの場合、ナイスショットは偶然というより奇跡と言ってもいいかもしれません。練習場で同じクラブで何球も打てば、ときとしてナイスショットが打てることもあります。平らなライで滑るマットで何球かに1球のナイスショットなのに、デコボコのライで芝もいろいろな状況があり、気象条件の影響をまともに受けるコースではナイスショットの確率は練習場より大幅に下がります。つまりほとんどのショットは多かれ少なかれミスショットというのが現実です。

コースでアイアンショットを打った後のクラブヘッドを見れば、ほとんど芯に当たっていないことがよくわかります。クラブの芯で打って、高くて真っすぐに飛ぶナイスショットは何球、いや何十球に1球でしょうか。だとしたら、ミスショットが普通のショットだと考えるべきです。ミスショットが普通のショットなら、どんなミスで、どれくらいのミスになるのかを知っておく必要があります。

ドライバーならスライス・フック・ヒッカケ・プッシュ・ダフリ・トップなどどんなショットが出やすいか、その曲がり幅はどれくらいなのかを知る必要があります。もし、自分のショットの癖・ミスとその大きさが分かれば、ショットのイメージがよりはっきりとわいてきます。コースマネジメントはシミュレーションです。ショットのイメージもやはり最後までボールを見届けない限りできません。

“平均飛距離を知る” “ショットの癖・ミスの出方と大きさを知る”

この二つのことを知らずに(コース)マネジメントは成り立ちません。そのためには日頃から練習場でもコースでもしっかりと自分のボールを見届け、飛距離(最大飛距離ではない)とショットの癖・ミスの出方と大きさを確認する必要があります。この二つをしっかり認識できれば、(コース)マネジメントはおのずと身についてくることは間違いありません。

中部銀次郎は「ゲーム設計次第でスコアが変わる。目の前にあるボールをどこに打つべきか、そのことだけに専念することが大崩れを防ぐ。ボールの行方をしっかり見届けられるというのは、ゴルファーのレベルなのである」と語っています。

スコアアップは、最後までボールを見届けることで自然と身につくのではないでしょうか。

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