練習は孤独で厳しいもの。
それを経てこそ、強くなれる

ゴルフは誰でもコースでプレーするほうが楽しい。
練習場での練習は根気が必要だし、好きじゃないと、ほとんどやらない人もいるだろう。
小学生の頃から父親と一緒に門司ゴルフ倶楽部でプレーをしていた中部さんも同様だった。練習するくらいなら、コースでプレーしたかったのだ。
当然ながら、コースでのプレーに慣れてくればスコアもある程度良くなっていく。しかし、中部さんは体が小さく、飛距離も出なかったこともあり、小学生時代はハンデが20を切るところまでは行かなかった。
ある夏休み。家族で佐賀県にある唐津ゴルフ倶楽部を訪れた。コースが経営するシーサイドホテルがあり、ゴルフをする傍ら、海水浴も楽しんだ。
中部家がコースに行くと、当時、関西プロや関西オープンなどを制覇し、関西に敵なしと言われた島村祐正プロが挨拶に来る。その島村は中部一家が早朝からのラウンドを終えた頃から練習を始める。
ゴルフに夢中になっていた中部さんは、どんな練習を島村プロが行うのか、とても興味があった。そこでこっそりと後を付けていった。すると、島村プロは練習場とは異なるコースから外れた窪地でボールを打っていた。
「そこは風の通らないとても蒸し暑いところで、島村プロはたった1人で汗をしたたらせながら、黙々とボールを打っていました。気温は芝生の照り返しもあるから40度以上はあったと思います。そんなところで、ずっとボールを打ち続けているのです」
中部少年は驚いた。一流プロというのはこれほど練習するのかと。しかも人目につかない厳しい環境の下で、黙々と練習するものなのだと。
「練習は人に見せるものじゃない。しかも過酷な条件のもとで行う」
中部さんは本当の練習というものを生まれて初めて知った。そして、それが上手くなるため、強くなるためにはいかに重要なことかを知ったのだ