「練習は裏切らない」いかに自信を持って打てるか!
島村祐正プロの孤独で過酷な猛練習を見て以来、中部少年は子供心に練習することの大切さを思い知る。
その頃、中部少年はバンカーショットが苦手だった。バンカーに入れば一発では出ない。スコアを崩す最大の難所だった。

門司ゴルフ倶楽部は名匠、上田治が設計したコース。上田はチャールズ・アリソンの弟子であり、深いアリソンバンカーが設計の特長となっている。
しかも、その頃はダイナマイトと呼ばれたサンドウェッジは普及していなかった。中部少年も、もっぱらニブリック、9番アイアンでバンカーから打っていたのだ。それでは、苦労するのも当然だった。
中部少年はようやくダイナマイトを手に入れたが、それでもバンカーからの脱出は手間取った。
中部少年は自分の長所と弱点を知るため、ラウンドするや1打毎に上手く打てたか、ミスが出たかを記すようになった。どんなミスかもである。
バンカーショットがスコアを悪くしていることを改めて知り、中部少年はラウンドするのを辞めて、バンカー練習に打ち込んだ。
「バンカーが上手くなれなきゃ、スコアが良くなることはないと思いました。それで、徹底的に練習しようと、アプローチ練習場のバンカーに入り、1日中砂と格闘しました」
朝スタートしたメンバーが夕方ラウンドを終えたときに、朝と同じ少年がバンカーの中にいたのに驚いた。
「ボールの手前の砂を打つことは教えてもらっていたのですが、なかなか脱出できなかった。思い切って打つと、もの凄く飛んでしまいそうで怖かったんですね。ところがやっていくうちに飛ばないことがわかってきた。こうして砂の勢いでボールを飛ばすことを覚えたのです」
ジーン・サラゼンが考案したダイナマイトの打ち方を習得したのだ。
「自信ができるまで練習すること。練習は裏切らないことを知りました」