YNGゴルフ研究会書斎のゴルフSpiritsその14

ゴルフが上手くなる要素 スウィングその前にあるもの Part1 体

練習場で多くのアマチュアは手や腕や体の使い方をいろいろと工夫しながら練習しています。飛ぶといわれるドライバーを手にして、マン振りで飛びを追求しています。それでも100が切れるのはゴルファー全体の約30%です。アマチュアゴルファーの平均スコアは110くらいといわれます。シングルゴルファーとなると約6%、スクラッチプレーヤーは1%以下です。クラブハウスのハンディキャップボードを見ても、シングルゴルファーはボードの端に数少ないプレートがあるだけです。

飛ぶといわれるドライバーを手にして、手や腕や体の使い方を工夫して、一生懸命に練習しても100が切れない、90が切れない、80が切れないのはなぜか。もしかしてアマチュアはスウィング以前の大事なことを見落としているのではないでしょうか。

スウィングその前にあるもの

先日練習場の前の打席で、いきなりドライバーのマン振りを始めた方がいました。かなり年配の方でトップのグリップの位置をしきりに確認していましたが、ショットの多くはダフリでボールはあちこちに飛び、なかなか狙った方向には飛んでいきません。正直言って、これは典型的な上達しない練習の例です。

上手くなりたい、100を切りたい、90を切りたい、80を切りたいとゴルファーにはそれぞれ目標があります。その目標を達成するためには、スウィングもさることながら、その前にあるものをしっかりと準備することで一歩ずつ着実に上達するのではないでしょうか。逆に、スウィングする前にすべきことをしなければ上達は難しいといえます。

ゴルフは、ゲームでありスポーツです。ゲームは頭を使い、スポーツは体を使います。ゴルフは、どちらも使います。

ゴルフでは、体の仕組みを知り、基本の動きの練習を繰り返すことで上達します。練習場では、昔ながらのコック、タメ、腕のローテーション、右手の返しをやっている人がおおぜいいます。

なかには、今流行りの地面反力を使おうとしてジャンプ気味のスウィング、GGスウィング(ジョージ・ガンカス考案)を真似して腰が引けたスウィング、シャロウイングをやろうとして無理な掌屈、ハンドファーストを手だけでトライしている人がいます。それで実際のショットはどうかというとほとんどミスショットばかりというのが現実です。地面反力を使うためには足腰の強さ、GGスウィングは体幹の強さと柔軟性、シャロウイングは柔らかグリップとボディースウィング、ハンドファーストのためには下半身のリードが必要です。

ブライソン・デシャンボーがUSPGAツアーに登場したときはちょっとした話題になりました。それは彼の使うクラブとツアーでは見かけない変わったアドレスとスウィングのためです。デシャンボーのアイアンはすべて7番アイアンの長さにしているワンレングスで、極太グリップを装着していました。それでいて番手間の飛距離はきちんと整っていました。アドレスはハンドアップでノーコックの左一軸の見るからに変わったスウィング。一見するとアマチュアのギッコンバッタンスウィングのようにも見えました。

2020年ツアーに姿を現したときには、まるでプロレスラーを思わせるような体型に変わっていました。デシャンボーはこの年全米オープンに優勝し、ドライビングディスタンスはNo.1(320.8y)、平均スコアもNo.1(69.432)で、今やUSPGAのトッププレーヤーです。

1950年にデビューしたジャック・ニクラスがオハイオの白熊と呼ばれ100kgの太った体型から、1972年に85kgのほっそりとした体型に変身してゴールデンベアと愛称まで変わったのとは真逆の変化です。

ゴルフはスウィングの前に、体、クラブがあり、コースマネジメントに応じたグリップとセットアップがあって、最後にスウィングという順番になるのではないでしょうか。

アマチュアは、体のコンディショニング、クラブとセッティング、コースマネジメント、グリップとセットアップ抜きで、飛距離を伸ばすフルショットとスウィングテクニックばかりを考えているようです。これは軟弱土台の高い建物のようなものです。それでは不安定な土台のスウィングになり、日替わりで手と腕と体の使い方を変えることでショットを調整しているようなものです。そのため、振れば振るほどスウィングは不安定になってしまいます。

スウィングその前にあるもの からだ=骨格・関節と筋肉

ゴルフでもっとも大切なことは、体です。まずは健康な体が大前提です。そのうえで、体の基本的な仕組みを知り、効果的なストレッチとトレーニングを行って、合理的な動き(スウィング)を練習すれば、ボールを打つよりはるかに効率的に上達することができます。体の構造・機能に反したスウィングをいくら練習してもスムースなスウィングはできず、むしろ怪我をすることさえあります。

スウィングにおける体の基本的な仕組みは、骨格・関節と筋肉とそれらの動きです。スウィングは骨・関節をスムースに動かすことで生まれます。その骨・関節を動かすのが筋肉です。筋肉の伸び縮みでスウィングのエネルギーがうまれます。ストレッチは関節の可動域を大きくすること、トレーニングは筋力を強くすることになります。

関節の可動域

スウィングは円運動です。それは人間の関節が丸くしか動かないからです。関節(骨)の多いところは細かく動き、関節(骨)の少ないところは大きく動きます。手や足にはたくさんの関節と小さな筋肉がついていて複雑に動き、脚・腰や胴体は関節が少なく大きな筋肉がついていて大きく動きます。

関節は丸くしか動きません。体の各部分関節の回転・回旋の差(捻転差、ねじれ)が大きいとクラブに大きなエネルギーを伝えることができるといわれます。この関節の動きが小さいと捻転差(ねじれ)がなく大きなエネルギーは生まれません。

一般的に、トップの位置では肩(鎖骨)は90度、腰(骨盤)は45度回すといわれます。アマチュアでこのような捻転差(Xファクター)が生まれるのはかなりの上級者しかいません。アマチュアのほとんどはこの捻転差が不十分です。練習場で見ていると、腰が回旋していない、肩(胸)が回旋していない、腰と肩(胸)が同じように動いて回旋の角度に差(ねじれ)がない人がほとんどです。

スウィングの主な関節の可動域

足首内転20度、外転10度胸椎(胸)左右回旋30度
股関節(骨盤・大腿骨)内旋・外旋45度頸椎(首)左右回旋50度
腰椎(腰)左右回旋10度肩甲骨(肩)屈展・伸展20度*

*肩甲骨の屈展は体の内側への動き、伸展は外側への動き

スウィングの切り返しでは、おおむね足首(内転)20度+股関節45度+腰椎10度+胸椎30度が回旋し、肩甲骨が20度伸展してプロは肩(鎖骨)が100度以上回って肩甲骨が背中からはみ出しているように見えます。アマチュアの上級者は、腰が45度、肩が90度回っているように見えます。ただし、一般のアマチュアはそれほど回転していません。この動きを注意深く観察すると、スウィングは極端に言えば、腰(骨盤)と肩(胸椎と肩甲骨)の回旋がポイントだといえます。

自分のスウィングを見るのは難しいので、練習場で他のゴルファーのスウィングを観察してみるとよくわかります。初心者は、肩も腰も回旋が少なく、手と腕だけでクラブを上に持ち上げている感じです。アベレージゴルファーは肩が少しだけ回旋していますが、腰は人によってはほとんど回旋していません。これに比べて上級者は、腰の回旋が大きく、それに連動して胸・肩が腰以上に回旋(捻転)して手と腕はそれほど大きく動いていません。アベレージゴルファーはオーバースウィング、上級者はコンパクトなスウィングという感じになります。

スウィングの順番は、プロは脚→腰→胸→肩が連動して最大限に近い角度で回旋して腕が振られています。アベレージゴルファーは手→腕→胸→肩(このあたりから動きがなくなる)→腰→脚の順に動いてプロや上級者の動きとは逆の動きの順番になっています。

関節は単に回転・回旋するのではなく、適度な緊張感をもって筋肉の伸縮(伸張反射)が連動した動きになることが重要です。適度な緊張感がないと、回旋・回転の軸のないグニャグニャした動きになってしまいます。関節の回転・回旋は100%回しきるという意識ではなく、100%回る寸前で次の動きが始まるという感じになります。足・脚・腰・胸・肩・腕の順にバックスウィングして、肩が最大限に回りきる直前に足・脚・腰が動いて、胸・肩・腕が連動した流れで切り返し(トップ)になる感じになります。

トップの位置で止まる(トップをつくる)と適度な緊張感がなくなり、各部分の筋肉の伸縮を連動させること(伸張反射)ができません。切り返しで“どっこいしょ”という感じになります。

スウィングのエネルギーを生む大きな筋肉

小さな筋肉より大きな筋肉を使った方が大きな力が生まれます。体の大きな筋肉は脚(もも)、お尻、胴体(体幹)の筋肉です。手や腕の筋肉と脚・お尻と胴体の筋肉を見比べれば一目瞭然です。

アマチュアは手や腕の小さな筋肉を使い、プロや上級者は脚・腰・体幹の大きな筋肉を使ってスウィングしています。

手や腕でクラブを速く振ろうとすると、体幹・腰・脚は止まってしまいます。脚・腰・体幹を動かすと腕と手は自然に振られます。手打ちは小さな筋肉を使い、クラブの動きが不安定になるスウィングになります。逆に下半身リードで体幹の捻転スウィングは大きな筋肉を使い、パワーのある安定したスウィングになります。

アマチュアとプロのスウィングの違い(捻転差の違い)

アベレージゴルファーのスウィングを観察すると、手と腕でクラブを速く振ろうとして、肩・胸・腰があまり回転していません。脚はあまり動きません。プロや上級者は脚・腰・肩の動きに差(捻転差)があります。ポイントは腰と胸と肩の回転に現れます。腰の回転の大きさは、左右の足・脚の踏み込みの強さに連動します。アベレージゴルファーとプロや上級者のスウィングの違いは、小さな筋肉を使うか大きな筋肉を使うかの違いと手から動くか脚から動くかの違いのようです。

足・脚の左右の踏み込みを意識すると自然に腰が回転し、連動して胸・肩が動いて自然に腕が振られます。アマチュアはあれもこれもはできません。左右に足・脚の踏み込みと腰の回転を意識するだけでも、スムースで力強いスウィングになってきます。手や腕でクラブを速く振ってボールを打つだけの練習では上達しません。足首、股関節と肩甲骨を意識して、せめて風呂上りのストレッチと日々の速歩きの散歩だけでもやってみてはいかがでしょうか。それと怪我をしないためにも練習前のウォームアップと練習後のクールダウンをお忘れなく。

ジャンボ 尾崎は「ゴルフは心・技・体ではなく、体・技・心の順なのだ」と語っています。そして今、多くの若者がジャンボの教えで羽ばたいています。

文●柳生田幹久(YNG研究会 書斎のゴルフSTAFF)

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