中部銀次郎「練習の心」其の七

10球連続で同じ所に落とす。

心に制約を持たせる練習を行う

 

 中部さんは練習場ではできて、コースではできないことを、何とか克服しようと努めた。

「練習では上手く打てて、コースではミスする。それは緊張するからですよね。コースではミスしても打ち直せない。だから、上手く打ちたいと心が制約されて、体が硬直してしまうわけです。であれば、練習のときから敢えて心の制約を作るようにすればいいわけです。心を鍛えるわけです」

 では、心を制約し、心を鍛える練習とはどのようなものだろうか?

「ひとしきり練習したら、最後に10個のボールを同じ所に落とす練習をします。クラブは何でも構いません。9番でも7番でも得意なクラブでいいです。目標をしっかり決めて打ちます。10個とも同じ所に落とすことができたら練習は終わりになります」

中部銀次郎

 これは中部さんが実際に行っていた練習である。

「こうすると、9個までは同じ所に落とせるのですが、10個目になるとできなくなってしまう。途端におかしなショットになってしまうわけです。『最後の一発』と思うだけで気持ちが変わってしまうのです。人間って弱いなと思いますね」

 つまりは「あと一球」ということが心の制約を生じさせてしまうのだ。

「ではどうすれば、心の制約を取り除くことができるのか。それは『最後の一発』と考えないで打つことに他なりません。これまでの9球を打ったリズムでポンと打ってしまう。さっさと構えてサッと打ってしまうわけです。それができなければ、同じ所に打つということを忘れるように、まったく別のことを考えるわけです。彼女のことでもいいし、夕食のことでもいい。そうして打ってみる。すると、意外と上手く打てたりする。だったら、それをコースや試合にも使ってみる。ミスできないな、緊張しているなと思ったら、別のことを考えて打ってみる。このようにして、自分なりの方法を練習場で見つけてしまうことです」

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