YNGゴルフ研究会書斎のゴルフSpiritsその18

ゴルフが上手くなる要素 スウィングその前にあるもの パート2 

クラブとセッティング その4 

ドライバー

レッスンの神様 ハーヴィー・ペニックは「キャディ―バッグの中にあるクラブのなかで、最も大切なクラブを3本あげるとすると何か」と聞かれ、「パター、次にドライバー、そしてウェッジ」と答えています。ベン・ホーガンに同じ質問をすると「一にドライバー、二にパター、三にウェッジ」と答えたといいます。いずれにしても先人の言葉に従えば、パター、ドライバーとウェッジが14本の中でもっとも大切なクラブになります。

同じ質問をアマチュアゴルファーに聞くとなんと答えるでしょうか。ゴルファーのレベルによって答えはさまざまで、なかにはパターとウェッジが大切な3本に入っていない人がいるかもしれません。それには理由があります。大切なクラブなら慎重にクラブを選んで一生懸命練習するはずです。しかし、多くの人は何を置いてもドライバーは一生懸命練習しますが、パッティングとアプローチの練習はほとんどやりません。アプローチはお茶を濁す程度でパッティングはラウンドの朝だけというのが現実ではないでしょうか。多くのアベレージゴルファーにとって、パターとウェッジは大切な3本ではないのかもしれません。

練習場ではほとんどの人がドライバーの練習に明け暮れています。一方、パッティングとアプローチの練習に多くの時間を割いているのはプロと一部の上級者だけです。スコア90のゴルファーは、1ラウンドでパターは36回、ウェッジ(アプローチ)は15回、ドライバーは14回くらい使います。この3本で合計65回くらい使うことになります。スコアの約70%(65/90回)はこの3本を使っているのです。しかもそのうちの約80%(51/65回)はパターとウェッジを使っていることになります。

練習場で必ず練習するドライバーについて「なぜそのドライバーを選んだか」と聞くと「飛距離がでるから」という答えになるのは間違いないでしょう。そして「そのドライバーはどんなドライバーか」と聞くと、答えは「・・・」ではないでしょうか。

「なぜそのパターを選んだのか」の答えは「入りそうだから」で、「どんなパターか」の答えは同じように「・・・」ではないでしょうか。

ウェッジはどちらの答えも「・・・」でしょうか。

使用頻度でいえば、大切なクラブはパターとウェッジとドライバーです。そして、それを使うのはゴルファーです。そのゴルファーがどんなドライバーとパターやウェッジをつかっているのかがわからないということであれば、それらを上手く使いこなすことなどできないのではないでしょうか。車でいえば、オートマかマニュアルか分からずに運転しているようなものだともいえるのです。

例えば、スライサーがフェイスの開いたドライバーを使えば、スライスはさらに大きくなります。体力のない人がロフトの少ない重くて硬いオーバースペックのドライバーを使えば、低い球しか打てません。フェイスの開閉の多いストロークのゴルファーが開閉しにくいパターを使うとラインもタッチも合わせづらくなります。バウンスの少ないウェッジではバンカーショットが上手く打てないということにもなります。

アマチュアゴルファーは自分の能力やスウィングの特性を知らずに、スライサーがスライスのでやすいドライバーや、フェイスの開閉の多いゴルファーがフェイスの開閉しづらいパターを使っていることはよくあることです。

その原因は、強いプロが使っているからという理由でドライバーやパターやウェッジを選んでいることも多いでしょう。その証拠に、アジア人、日本人としてはじめてマスターズに優勝した松山英樹が使うスリクソンのクラブは今注文が殺到しているそうです。一昔前は青木功、ジャンボ尾崎、中島常幸が使っていたパワービルトのスーパーサイテーションや、BSのJ’sMTNやミズノのTN 87はゴルファー垂涎の的でした。TN 87は今でも復刻版が数十万円で販売されています。

しかし、ゴルファーは自分の能力とスウィングやストロークに合ったドライバーやパター、ウェッジを使うことで見違えるほど、スウィングやストロークがよくなり、スコアがみるみるよくなります。そのためには、ドライバーやパター、ウェッジについて少し理解を深めること大切です。

ドライバーのスペック

先日47インチのドライバーを使っている方に「このドライバーを選んだのはなぜですか?」とお聞きすると「長いので飛ぶから」という答えでした。実際のショットではミスショットが多いので「グリップを少しだけ短く持ってスウィングしてみてはいかがですか」とアドバイスすると、ミスショットが減ってナイスショットになりました。つまり47インチを46インチにしただけのことです。これはクラブが長ければ飛ぶというクラブのスペックに対する勘違いの例です。クラブを長くしてHS(ヘッドスピード)が上がったとしても、ミート率が落ちればボールは飛ばずに曲がります。HSが速ければドライバーで飛ぶということはありません。

ドライバーのヘッド、シャフト、グリップのスペック

 ドライバーはヘッドとシャフト、グリップの組み合わせでできています。そしてそれぞれに大変に多くのスペックがあります。

ヘッド;見た目(デザイン・色など)、形状(大きさ・厚さ・投影面積・FPなど)、重量、ロフト角、ラ

イ角、フェイス角、重心の位置(重心距離、重心深度、重心の高さ、重心アングル)、有効打点距離、慣性モーメント(縦、横、ネック軸まわり)、素材、構造など

シャフト;見た目(デザイン・色など)、長さ、重量、シャフトの硬さ(振動数・センターフレックスな

ど)、トルク、キックポイント(元・中・先調子など)、素材、構造など

グリップ;見た目(デザイン・色など)、形状(バックラインの有無など)、重量、太さ、硬さ、長さ、

素材、構造(コード入り・複合構造など)、下巻テープ(巻き方、重ね巻など)など

これだけのスペックとその効果を理解することはアマチュアには難しいことです。そのために専門家であるクラブフィッターやプロのアドバイスが必要になります。

これらの多くのスペックのうちで何をチェックポイントにするかが問題になります。クラブ設計家の故・竹林隆光は次のように語っています。

自分が使いこなせるクラブ」が絶対的な条件で「クラブには能力があって、自分の能力に最も近い能力のクラブを選ぶと結果がいいんです。これはもうクラブ選びの絶対的な条件です。

例えば、300Yを効率よく飛ばせるドライバーであれば、シャフトの重量は70g以上で硬度はXでトルクの小さいもの、ロフトは9度で総重量は325g前後。260Yを効率よく飛ばせるドライバーであれば、シャフトは60g台で硬度はSでトルクは少し多くなり、ロフトは10度で総重量は315g前後。220Yを効率よく飛ばせるドライバーであれば、シャフトは50g台で硬度はRでトルクが大きいもの、ロフトは11度で総重量は300g前後。各数値はだいたいの目安ですが、つまり各クラブの能力に応じてクラブのスペックというのはおおむね決まってしまうんです。言い方を変えると、300Yセット、260Yセット、220Yセットという具合にわかれていて、ゴルファーは自分の能力に最も近いセットを選べばいいわけです」とクラブ選びの基本をアドバイスしています。そうでないと、ゴルファーそれぞれの能力を発揮できなくなるというわけです。

このアドバイスに従えば、ドライバーのスペックのポイントは、ヘッド重量、シャフトの重量・硬さとトルク、グリップの重量、ロフト角などがクラブ選択の目安となります。これらのスペックはクラブの長さに連動するためにクラブの長さも重要なスペックになります。しかし、ある程度スペックをチェックしても実際にスウィングしてみると必ずしもフィーリングがいいとは限りません。そこで専門家であるクラブフィッターやプロのアドバイスが必要になります。

ショットの分析データ

ショットはスウィングの結果です。ショットのデータは適正なクラブ(スペック)を決めるうえで重要なデータになります。フィッティングスタジオでは、トラックマン、CGクワッド、スカイトラックなどのシミュレーターを使って実際のショットから適正なスペックをチェックします。大型量販店などでは簡易フィッティングを行っているところもあります。

フィッティングでは、ドライバーはクラブのスペック、ショットデータ、フィーリングで、ゴルファーにとって最適なクラブを選ぶことになります。この中でショットとフィーリング(感覚)はそのときの状態で変化しますが、クラブのスペックは不変です。その意味でクラブのスペックは大変重要な要素になります。フィッティングを受けると、どんなスペックのクラブを使うとどんなスウィングになり、どんなショットになるかという傾向が見えてきます。

US LPGAツアーのトラックマンデータの平均値

Club Speed(mph)Attack Angle(°)Ball Speed(mph)Smash FactorLaunchAngle(°)Spin Rate(rpm)MaxHight(y)LandAngle(°)Carry(y)
DR94+3.01401.4813.226112537218
3W90-0.91321.4711.227042339195
5W88-1.81281.4712.145012643185
7W85-3.01231.4512.746932546174
5Ⅰ79-1.91121.4214.850812345161
6Ⅰ78-2.31091.3917.159432546152
7Ⅰ76-2.31041.3719.066992647141
8Ⅰ74-3.11001.3520.874942547130
9Ⅰ72-3.1931.2823.975892647119
PW70-2.8861.2325.684032348107

上段の計測項目;左から、クラブスピード(ヘッドスピード)Mile(1.61km)/Hour 94mph≒42m/s、入射角(+アッパー、-ダウン)、ボールスピードMile(1.61km)/Hour、ミート率、打ち出し角、スピン量、最高到達点Yard(0.91m)、着地角、キャリーYard

ドライバーでは、飛びの3要素である、ボールスピード、打ち出し角、スピン量のデータが重要なポイントになります。いくらヘッドスピードやボールスピードが速くても打ち出し角が低すぎれば飛距離は伸びません。ボールスピードが速くて打ち出し角が適正でもスピン量が多すぎれば飛距離は伸びません。いいフィーリングのクラブでもショットのデータからさらに適正なクラブが見えてきます。

フィーリング

クラブを振った感覚も重要です。しかし、人間の感覚は常に変化します。同じ重さのクラブを振っても冬は軽く硬い感じで、夏は重く柔らかい感じになります。「アマチュアでも夏用のクラブ、冬用のクラブ、特にドライバーを2本用意するといい」と竹林隆光は語っています。

練習場でよく見かける方がいます。スライサーでアドレスしたときにクラブフェイスをかなり被せて構

えています。ショットは低いヒッカケと右へのプッシュが交互にでます。そのドライバーはテーラーメイ

ドのM6です。このドライバーはフェイスが開いていて(フェイス角2度オープン)、しかもライ角(54・75度)がとてもフラットです。そのためスライサーが使うとスライスがさらに大きくなります。どんな意図でM6にしたのか分かりませんが、盛んに右手を返してストレートを打とうとして、いわゆる腹切りスウィングでストレートボールはほとんど見たことがありません。球の高さは低い球ばかりです。

ショットのデータを分析すればM6以外のドライバーでミスが減ることがわかるはずです。もしこの方に適正なドライバーを勧めるとしたら、同じテーラーメイドならグローレF2をお勧めします。グローレF2はフェイス角が+1度とややフックフェイスでライ角が58.25度とアップライトでスライスしにくいスペックになっているためです。

また、その方が使っているアイアンのシャフトは120g台のダイナミックゴールドS200です。M6ドライバーのシャフトは50g台の純正のS(カスタムシャフトならR)ですから、これではドライバーが軽く、アイアンが超重いアンバランスなセッティングになるので、ドライバーとアイアンで打ち方を変えなければナイスショットが打てないことになります。実際アイアンはほとんどがダフリ気味でした。

おそらくこの方はクラブのスペックとショットデータを参考にすることなく、感覚と好みでM6と、シDGS200を装着しているアイアンを選んだのではないかと思われます。アマチュアの場合、多くはこんな感じのクラブセッティングになっています。しかし、これではどれほど練習してもスムースなスウィングでナイスショットは打てないでしょう。少しだけクラブのスペックとショットのデータを確認すれば、違うクラブを選んでいたのではないかと思います。

ドライバー選びの基本

ドライバーはクラブのスペックとショットのデータとフィーリングで選ぶことが基本です。しかし、スペックはクラブフィッターでなければ分かりづらいものもあります。ショットのデータもプロかクラブフィッターにチェックしてもらう必要があります。アマチュアはそういうデータをチェックすることなく、ほとんどフィーリングだけでドライバーを選んでいるのではないでしょうか。シングルゴルファーといえども問題がある人もかなりいます。ドライバー選びは、可能な限りクラブフィッティングとプロのアドバイスを受けることが必要です。それだけで格段に上達することは間違いありません。

ドライバー選びの3つのポイント

〇フィーリング(試打)

〇クラブのスペック

〇ショットのデータ

クラブは14本のセットの流れが重要です。セットの流れがバラバラだとクラブごとにスウィングを変

える必要があります。そんな器用なことはプロでもできません。そのためには基準になるクラブを決める

ことが最も重要なポイントになります。アマチュアの場合、基準になるクラブはやはりショートアイアンになるのではないでしょうか。

基準になるクラブが決まれば、ドライバーのスペックもおおむねその流れで決まります。ドライバーはティーアップして使うことから、多少セッティングの流れとは違っていてもいいかもしれません。

一般的にはドライバーは市販品のなかから選びますが、メーカーによってはゴルファーのHSに応じて推奨スペックを表示しています。また、最近はカスタムシャフトや可変スリーブ付きでスペックを変えることができるものも多くなっています。クラブでもっとも大事なことはフェイスの芯に当たることです。いくらHSが速くてもヘッドの芯でボールが打てなければ飛距離は伸びずに曲がります。

重要なクラブのスペック(カタログ表示のないスペックはネットなどで検索できるものもあります)

〇クラブの長さ(メーカーによって計測法が異なる)

〇クラブ重量(ヘッド重量(要計測)・シャフト重量・グリップ重量)

〇バランス

〇ヘッドの大きさ(体積)

〇ヘッドのロフト角(リアルロフト(要計測))、ライ角

〇フェイスアングル(重心アングル(要計測))

〇シャフトの硬さ(振動数・トルク、SやRはメーカーやブランドによって異なる)

〇シャフトのキックポイント(調子)

〇グリップの太さ ほか

XXIO11のスペック(カタログ表記・ネット検索)の例

クラブの長さ 45.75インチ、 クラブ重量 R 280g(ヘッド 196g シャフト Rシャフト 37g グリップ 30g)、 シャフトの硬さ R 振動数 209cpm トルク6.5、 ヘッドの大きさ 460cc、ロフト角 9.5(リアルロフト 10.0)、10.5(11.0)、11.5°(12.0)、 フェイスアングル+1°(フックフェイス)、 シャフトの調子 中調子、 Rシャフト D2、 推奨HS Rで32~41m/s

カタログとネット検索(振動数、リアルロフト、フェイス角)でこれだけのスペックがわかります。これにショットデータと試打のフィーリングで最適なドライバーを見つけることができます。これくらいチェックすればクラブ選びで失敗することがなくなります。

スムースで気持ちよくスウィングできてヘッドの芯に当たるクラブがいいクラブです。いくらHSがでても打ち出し角が適正ではない、スピン量が適正ではないクラブでは、飛距離は伸びずにボールは曲がります。それをスウィングが悪いと勘違いして、手や腕でクラブを操作することばかりを意識して練習してもスムースなスウィングはできません。ドライバー選びにちょっとだけ手間と時間をかけるだけで猛練習しなくてもショットに自信が持てるようになります。ドライバーで自信をもってスウィングできれば、それだけスコアにパットとアプローチの練習に時間を割くことができます。そうすればスコアはぐんぐんよくなることは間違いありません。

一度ドライバーとクラブセッティングについてチェックしてみてはいかがでしょうか。ドライバーで自

信がうまれれば、ティーイングエリアの緊張感を大幅に減らすことができます。ストレスなくティーショットが打てるとコースマネジメントがより見えてきます。そうなればスコアアップは間違いありません。

文●柳生田幹久(YNG研究会 書斎のゴルフSTAFF)

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