中部銀次郎飛ばしの悟り 其の四

「弾道が同じになると、自分の弾道が作れる。

自分の球の『飛び姿』ができあがる」

 スイングが安定すれば、弾道も一定になる。何球打っても同じ弾道になる。それが自分の弾道となるわけだ。

「いつでも同じ弾道が打てるようになると、自分の弾道が作れます。『ああ、中部の球だな』と人が言う弾道ができあがるわけです。私の場合、中弾道でスーッと真っ直ぐ伸びていく弾道です。自分自身、とても気に入っていた弾道で、いつでもその弾道が打てるように練習しました」

 そうした弾道を「飛び姿」と呼ぶ。それは人によって違う。大きな弧を描くハイドローもあれば、低いシュートのようなフェードもある。中部さんは中弾道のスーッと真っ直ぐ伸びていく弾道だった。何にせよ、いつでも同じ弾道を打てるようになれということなのであり、それがその人の球の「飛び姿」であり、それがあれば、ショットが抜群に安定するということなのだ。

「私の弾道は距離が出るものではなかったかもしれませんが、風が吹いていたときもよれることのない弾道でした。

ですから、いつでも狙ったところに打てました。また、無風でもフォローでもアゲンストでも距離が変わらない。アゲンストになると、急に距離が出ない人がいますが、そうしたことはなかった。安心できる球でした」

 どんなときでも同じ飛距離になる。あるときは飛び、あるときは飛ばないという飛ばしではなかった。いつも同じ飛距離。それは風が吹いているときでもそうだったのだ。それは球のスピンが揃っているだけでなく、低スピンであったということである。それ故に吹き上がったり、曲がったりせず、落ち着いて飛んでいく球だったのだ。

 倉本昌弘プロはこの中部さんの球の「飛び姿」を見て、「飛行機雲のようだった」と語っている。スーッとゆっくり真っ直ぐに進んでいく弾道。「とても美しかった」とも言っている。目標に飛ぶだけでなく、曲がりがないから美しかったのだ。

中部銀次郎

 線だけでなく、点を狙う飛ばしだった。

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