中部銀次郎飛ばしの悟り 其の八

「ゴルフは対角線のゲーム。

フェアウェイを左右に二分割して狙う」

 ホールは真っ直ぐ作られていることはほとんどない。緩やかであっても左右に曲がっていることが多い。となれば、グリーンを狙うにはフェアウェイの左右のどちらかから打つほうがオンしやすくなる。2グリーンのホールであれば、尚さらそういうことになる。

 中部さんは言う。

「ゴルフは対角線のゲームです。真っ直ぐに打つと言っても、グリーンが正面にはない以上、フェアウェイセンターを狙ったらいいというわけではありません。グリーンが狙いやすいように、フェアウェイを2等分して、右か左に目標を決めて打つことです」

中部銀次郎

 もしもグリーンが右にあれば、フェアウェイの左半分に打つ。グリーンが左にあれば、フェアウェイの右半分に打つ。それができれば、花道から乗せることもできるし、グリーンも長く使える。つまり、対角線に狙いを付けることができれば、パーオンがやりやすくなるというわけだ。

「できるできないは関係ないです。普段から、ホールレイアウトを見て、フェアウェイを2等分して、左右のどちらに打つかを決めてプレーしてみてください。対角線のゴルフを習慣づけてみてください。そうすれば、ラフに入ってもグリーンを狙えますから」

 もちろん、正確に打てた中部さんにとってはフェアウェイを2等分して打つことなどたやすかった。というのも、よく練習していた東京の芝ゴルフ場では、ダンロップの1字ずつの5枚の看板目がけてドライバーショットを打っていたという。

「ダ」を当て、「ン」を当て、「ロ」「ッ」「プ」と5連続当てて、再び「プ」を当てて「ダ」まで5連続。10発を正確に当てたというのだ。

 まさに伝説、神様と謳われるに違わぬ人だった。

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