障害者ゴルフの普及に勤しみ、健常者と一緒に愉しめるように
2021年の夏は東京オリンピックで感動し、その後のパラリンピックで一層の感動をさせてもらいました。いずれもメダルを目標に精一杯闘う姿に胸を打たれたものです。
ゴルフは2016年のリオデジャネイロオリンピックで112年ぶりに開催され、続く東京オリンピックでも採用され、男子は松山英樹選手が最後の最後まで金メダル争いを行い、女子は稲見萌寧選手が世界の強豪相手に銀メダルを獲得しました。大変に嬉しい出来事だったわけですが、その後のパラリンピックではゴルフという種目は行われませんでした。
これはオリンピックとパラリンピックの大会組織が異なるため、全種目が同時開催になるとは限らないからです。そもそもオリンピックでも長い間、ゴルフが採用されてこなかった背景には世界中で盛んなスポーツではないと判断されていたからです。これは野球やソフトボールでも同じことが言え、毎回の正式種目となってはいません。
さらにパラリンピックとなれば障害者でゴルフを行う人は世界では本当に少ないだろうという判断があると思えます。種目の採用基準には、世界選手権が定期的に行われているか、世界ランキングがあるかなども考慮されますが、障害者ゴルフは世界大会も行われていますし、世界ランキングも存在しています。そこで国際ゴルフ連盟はパラリンピックでの障害者ゴルフの採用を認めてくれるよう活動を推し進めている最中です。
日本では日本障害者ゴルフ協会が1991年に設立され、今年の10月には北海道ゴルフ倶楽部で26回目となる日本障害者オープンゴルフ選手権が開催されています。この大会で優勝した選手は世界選手権にも派遣されているようですし、名実共に実績を積んできています。
こんなふうにわかったように書いてきていますが、私自身は実際のところ、今年のパラリンピックで初めて障害者スポーツを目の当たりに見たわけで、とても大きなことが言える立場ではありません。しかし、両腕のない中学生、山田美幸ちゃんの銀メダルを獲得した泳ぎに心底感動し、視覚障害を持つ競泳選手、富田宇宙選手と木村敬一選手の金銀争いに昂奮し、ボッチャの杉村英孝選手や車椅子テニスの国枝慎吾選手の金メダル獲得への執念、さらには車椅子バドミントンや男子車椅子バスケットなどにも感激して涙に暮れました。(ちなみに山田美幸ちゃんと国枝慎吾さんについてはプレジデントオンラインで書かせてもらいました)。
障害者たちの凄いを通り越した素晴らしいプレーぶりに、どれだけの人が勇気づけられたことでしょう。健常者はもちろん、家に籠もったままの障害者にとっては、何かやってみようという大きな動機付けになったのではないでしょうか。そうしたことからしてもパラリンピックでの種目採用は大きな意味を持つと言えると思います。
ゴルフはパラリンピックの種目にはなっていないため、人目に触れることも少なく、どのようにして競技が行われているか、知らない人も多いことでしょう。ゴルフの障害者大会では、他の障害者スポーツのように、障害の部分や障害の重度によってカテゴリーを分けて競い合うことが多いようです。例えば、脚など下肢に障害がある人、手や腕など上肢に障害がある人、両方の重複障害、麻痺のある人、車椅子の人、知的障害など、いろいろな部門に分かれます。いずれのカテゴリーであっても、彼らの真剣な戦いぶりが人の目に触れれば、障害者の中には自分でもできる種目が見つかるかも知れないと思います。

また、ゴルフはハンデキャップを付けて老若男女が競い合えるスポーツだけに、健常者が障害者と一緒になってプレーもしやすいスポーツです。ゴルフ好きの家族に障害者がいたとして、家族揃ってプレーできたらどんなによいことでしょう。それは夫婦でも然り、兄弟や友達でも然り。家の中に籠もっていた障害者が青空の下でゴルフができたら、もの凄く楽しいでしょうし、それが家族や夫婦、友達とプレーできれば最高だと思います。
ハンデを使えば、障害者のカテゴリー分けをなくすこともできるでしょうし、健常者と障害者というカテゴリーだって消滅することもできるでしょう。ゴルファー全員がハンデを持てば均等に競い合うことができるのです。ゴルフが素晴らしいスポーツであることが改めて認識されるはずです。
そうしたことから私は、障害者ゴルフの普及と発展に寄与していきたいと思っています。ゴルフ好きならば皆さん気持ちは一緒のはず。まずは障害者がゴルフコースでプレーできるようにすることが重要でしょう。障害者はプレーがゆっくりになることは致し方ありません。そのことをゴルフコースはもちろん、ゴルファー全員が理解することが第一でもあります。こうしたゴルフ環境になること、その後に健常者と障害者の枠を外した大会が行われることを切に祈るものです。