「練習とは基本の見直しを行うこと。
その繰り返しでしか他ならない」
中部さんは子供の頃から練習の虫だった。できないことがあれば、1日中、そのショットに取り組んだ。特に2人の兄ができて、自分がやれないことは何としてもできるようになりたかった。
「ゴルフは思うようにできないから面白いのでしょうね。子供の頃、バンカーから上手く出せないので、父や兄がラウンドしているときも、自分はアプローチ練習場でバンカーショットをやっていました。朝から夕方まで一日中、砂まみれでしたね」

そうやって苦手なショットを克服していった。飛距離の出なかったドライバーショットも飛ばせるように努力したし、得意なアイアンショットもさらに磨きをかけた。こうして、中学生になったときには大人たち負かせるくらいまで上達していた。
高校生では日本アマに出場したものの、大学3年生になるまで勝てなかった中部さんは、恐ろしいまでにゴルフにのめり込み、日本一のタイトル奪取のために猛練習を自らに課した。
日本アマに何度か勝ってから気がつくことがあった。練習の仕方である。
「上達したいと、いろいろな技を身につけたくなるものだが、実際には多くの技など勝つためにはまったく必要ない。自分ができることをミスなく行えるようになること。ミスがなければ勝てる。そのためには新しい技を身につけるのではなく、自分が持っている技をさらに磨くこと。基本を繰り返し行い、いつでも完璧にやれるように練習することなのです」
いつでも同じように正しくグリップできること。いつでもスクエアに構えられるようになること。そしていつも通りのスイングをいつも通りのリズムで行えるようにすること。それをドライバーからショートアイアンまでしっかりと稽古することなのだ。
「それでなくてもスイングは余計なことが身についてしまう。それをいつでもそぎ落として自分のスイングをできるようにする。それが最も練習でするべきことなのです」