ゴルフは本でうまくなるか〈2〉2022年4月25日

『伝統のプレーヤーが直伝 ゴルフの神髄』

本條 強 著 日本経済新聞出版

 ゴルフが英国で生まれ、米国で派手になったといえます。ゴルフ専用番組では一日中ゴルフが流されています。2022年ソニーオープンinハワイで、松山英樹選手の277ヤードのフェアウェイウッドの空中飛行はみごとな映像となりました。初速時速200キロ以上、滞空時間5秒前後を飛ぶ撮影には、大規模な準備が必要で、テレビ撮影技術は革新的に進歩しているといえるでしょう。

 プロゴルファーがヒーロー的に大きく取り上げられるのは、プロゴルファーたちが伝統的につちかってきた公的精神やスポーツマンシップの蓄積の成果といえるのかもしれません。その繁栄の事例のように、アメリカにはイラストがふんだんに入ったゴルフの本が多くあります。ゴルフのコーチとして知られるデビッド・レッドベターの『ザ・アスレチック・スウィング』はイラストだけでも楽しめたのです。

 こんなことを思いながら、書店のゴルフコーナーで目を引いたのが、英国伝統の郷愁に満ちたイラストの表紙が美しい『伝統のプレーヤーが直伝 ゴルフの神髄』です。キャッチコピーには、「タイガー・ウッズも学んでいたレジェンドたちの伝説のレッスン 一挙公開」とあり、期待が広がります。

 最初に出てくるボビー・ジョーンズは聖人といわれる創始者です。あのマスターズの会場となるオーガスタをつくった人です。ここで、ボビーは、心強い勇気づけをしてくれます。

≪「最初に叩いたら、もうミスは使い切ってしまったと思うこと。もうこれ以上の悪いことは起きないと開き直ることです。そして、最初に叩くほうが最後に叩くより、よっぽど結果が良くなるというゴルフの不思議な法則を信じることです」(17頁)≫

 何とも、自信が湧いてくる。今度のゴルフはこの気持ち一本でいこうという気になるものです。アマチュアゴルファーにとって、朝の一打目は何度やっても不安がよぎるものです。それを打ち消すために、構えたら不安を感じる前にサッと打ってしまうなどと強調する向きもあります。いずれにしてもボビー流は、最初の数ホールは「今日はどういうミスが出るのか!」を知って、あとの展開を楽しむ前向きな気持ちになることが肝心だということです。

ウォルター・ヘーゲンの項は「奇跡は起こそうと念じれば本当に起こすことができるのだ」。

≪「スポーツ心理学では予言したことは起きやすいということがよく言われる。これはネガティブにもポジティブにも働くが、ヘーゲンは常にポジティブにそれを行っていた。最初はギャラリーを喜ばすために口にも態度にも出していたが、たびたび成功するうちに、自然になった。「有言実行」がヘーゲンの専売特許になったのだ。(54頁)

ゴルフの熟達につれ、獲得した知恵が社会生活でのヒントにつながってほしいものです。一般社会でもいいことや逆のことの予感はたくさんあります。特に悪い予感は現実になりやすいようで、実は記憶に残りやすいだけとも分析されます。結局、いろいろなことが混ぜこぜになって適度に起こっているようです。ヘーゲン流で口にも態度にも出す予言は、日常でも役立ちそうです。

レッスンの神様、ハーヴィー・ペニックは次のように語っています。 

≪「ゴルフは楽しいスポーツですよね。ナイスショットが出たときは、気分が高揚しますし、ベストスコアが出たときはとてもうれしい。でも、そういうことはとても少ない。だから、それをわきまえて楽しくプレーして欲しいのです。ミスショットが出ても、大叩きをしても、ゴルフである以上、起きうることなのです。でも、それも自分にとって必要な経験だと思って欲しい。あなたを人間的に成長させてくれる大事な経験だったのです。だから、そうしたこともすべて含めてゴルフを楽しんで欲しい。そう願っています(251頁)

英国や米国、そして世界のゴルフの歴史が社会生活にも通じる数多くの名言を生んだといえます。この他にレジェンドとなったあるいはなりつつある十人のプロゴルファーの示唆に富んだ話しがカラーイラスト付きで紹介されています。***

文/柴山茂伸(書斎のゴルフ編集部スタッフ)

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