飛ばしの思考其の2(2022年4月18日UP)

「飛ばしても曲げてはスコアにならない。

大事なときに崩れてしまうのだ」

 中部さんはニクラウスを見て、飛ばしは絶対的なアドバンテージになると信じ込んでいた。

「ティショットをドライバーで飛ばせば、グリーンを狙うセカンドショットは持つ番手が短くなる。となれば、パーオンする確率がかなり高くなり、ピンに絡む可能性も高くなりはずですよね。それでニクラウスがバーディラッシュできると思ったわけです」

中部銀次郎

 我々もそう思ってしまう。

「しかし、よく考えてみれば、これはもの凄く飛ばしてもフェアウェイにボールがあるときに限るわけです。林からではピンを狙えず、ラフからではボールが止まりにくい。OBに打ったらそこで万事休すです。ニクラウスはもの凄く飛ばしても、フェアウェイにきちんと打っていたのです。それを圧倒的な飛距離に目が行ってしまい、すっかり抜け落ちていたというわけです」

 中部さんはそのことに心底気づくことになったのにはその翌年の2度目の日本アマに勝てなかったときである。

「決勝で石本喜義さんに負けてしまいました。それも4-3の完敗です。前半は私がドライバーショットを曲げてリードを許し、後半は石本さんがドライバーショットを曲げる。何度も追いつけそうだったのに、肝心なところで私もショットを曲げ、ショートパットを外してしまったのです」

 さらにこの年は関西学生選手権も日本学生ゴルフ選手権も勝てなかった。それもこれも、勝負時に力んでドライバーショットを曲げたからだ。

「相手よりも飛距離で負けたくないという気持ちがありました。また、短いミドルホールやロングホールではなるべく飛ばしたいと思いました。しかし、そうした欲が結局はショットを曲げることになり、そのホールを取られてしまう。いくら飛ばしても曲げたら勝てません。正確性こそが最大の武器になることを自覚しました」

 こうして中部さんはショットの正確性を磨き、次の年に念願の日本アマチャンピオンとなるのだ。

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