「飛ばしはスコアにつながらない。
それはプロを見てもわかること」
「ゴルフは飛距離を争うゲームではなく、スコアを争うゲームです」
中部さんの言葉は実際、本当のことだ。しかし、飛距離がスコアにつながると我々アマチュアは思ってしまうところもある。中部さんは言う。

「確かにドライバーショットの飛距離が20ヤード伸びれば、セカンドショットで使う番手が2番手小さいクラブになります。ミドルホールならグリーンに乗る確率がアップするように思えるし、ショートアイアンが使えればピンをデッドに狙えるでしょう。ショートホールでもティショットで使うクラブが小さくなるので、やはりグリーンをとらえる確率が増えそうだし、ロングホールなら2オンできる可能性が増えそうだ。しかし、だったらスコアはかなり縮まるように思える。ところが、そうはならないのがゴルフなんですね」
それでもすぐには納得できない。
「これはプロのドライバーショットの飛距離データを見てもわかります。昨年よりも20ヤード飛んだからといって、スコアがうんと縮まったかと言えばそんなことはありません。また、ドライバーショットの飛距離ランキングの上位の人がスコアでも上位かと言えば必ずしもそんなことはありません」
これは昨年のJGTOでもわかる。平均ストローク1位の今平周吾は賞金王にも輝いたが、ドライバーディスタンスは32位である。逆にドライバーディスタンス1位の額賀辰徳は平均ストローク95位なのだ。
「マスターズでジーン・サラゼンはオーガスタの15番ロングホールでダブルイーグルを奪ったけど、それ以後、クラブやボールが進化して飛ぶようになっても、ダブルイーグルを奪ったという話はトンと聞かない。ホールが長くなっているかも知れないが、それ以上に飛距離は伸びているだから」
確かに今では350ヤードも飛ばす選手が続出しているのに、ダブルイーグルを奪った選手はいない。中部さんが指摘するように、飛距離アップは必ずしもスコアに直結はしていないのだ。