ゴルフは本でうまくなるか〈4〉2022年5月23日

『脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方』

ジョンJ.レイティ/エリック・ヘイガーマン 著、野中香方子 訳 NHK出版

今回ご紹介する本『脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方』は、心と体の結びつきや運動と脳活性化の相乗効果が克明に説明されています。著者はアメリカの医学博士で、文中「ゴルフはすぐれたスポーツ」と定義しています。

この本はスポーツと精神医療の相性のよさに触れる箇所が多く、著者は〝簡易に書いた〟としていますが、専門用語も多く、一般にはなじみにくいかもしれません。

ここに出てくるドーパミン(神経伝達物質)は快感ホルモンといわれ、心地よさや気力の元といえるものです。一方、ニューロン(神経細胞)は脳内のネットワーク的な働きをしており、ゴルフをやっているときにも活発に機能しているといえます。これらを背景に、ゴルフのよさが医学的に導きだされるといった趣向です。

《老いにともなう問題のひとつは、立ち向かうべき課題がなくなることだが、運動していると、いつまでも向上心をもってがんばりつづけることができる。運動は、ドーパミン――意欲と運動システムの要となる神経伝達物質――の自然減少を予防する。体を動かすと、ドーパミン・ニューロンどうしのつながりが強められ、自然とやる気が増す。パーキンソン病の予防にもなる。(296頁)》

病気になる理由は様々ですべてが解明されてはいませんが、体を動かす効果が感じられます。そして、ゴルフです。

《このことは『忙しく生きていないと、体は急速に死に向かう』という考えを裏づけている。計画や目標を立て、約束を入れることは大切だ。ゴルフやテニスのようなスポーツが非常にすぐれているのは、自分を客観的に評価することと、上達しようとする意欲が求められるからだ。(296頁)≫

確かにゴルフは《上達しようとする意欲》は持ち続けられやすいかもしれません。上達が思うに任せないからです。そして、スポーツで筋肉が使われると、どういうメリットがあるかが続きます。

《さらに、筋肉を収縮すると(中略)成長因子が放出され、それらは体から脳に送られ、脳の成長を後押しする。こうしたすべての構造上の変化は脳の能力を高め、学習、記憶、高度な思考、感情のコントロールがよりうまくできるようになる。(297頁)》

脳の機能が筋肉の動きと相互作用しているのは理解しやすいことです。「外れるかもしれない」と思えば、パターを持つ手先がくるうのは毎度のことです。

そして、壮大な話となります。人類が野生の動物を追いかけていた時代に目を向けると、健康=運動=ゴルフという図式が浮かび上がります。

《もちろん今日では、生きるために採集や狩りをする必要はない。しかし、わたしたちの遺伝子には狩猟採集の行動様式がしっかり組み込まれていて、脳がそれをつかさどるようになっている。

従って、その活動をやめてしまうと、一〇万年以上にわたって調整されてきたデリケートな生物学的バランスを壊すことになる。(312頁)》

昔の狩りに使った武器がゴルフクラブなら、“獲物”であるボールを追っているようにみえます。まさに遺伝子によるゲームといえそうです。

《簡単に言ってしまえば、体と脳をベストの状態に保ちたいなら、この歴史の長い代謝システムをせっせと使うべきなのだ。DNAに刻み込まれた古代の活動は、おおまかにウォーキング、ジョギング、ランニング、全力疾走に置き換えることができる。そして、この祖先の日常の活動を真似しなさい、というのがわたしに言える最善のアドバイスだ。つまり、毎日、歩くかゆっくり走るかし、週に二、三回は走り、ときどきは全力疾走で獲物を狙うのだ。(312頁)≫

以上の医療専門家のアドバイスから、ゴルフは狩猟時代のなごりがあって、プレーヤー自身を大昔に戻した感覚でゴルフをやれば、新たな楽しみと効果が期待できるということです。

さて、人間が野生でいた頃は、日常的に外敵に脅かされており、そのセンサーあるいは触覚の役割が「ストレス」であったことは注目です。

《現代生活のストレスをいかに減らすかを説くさまざまなアドバイスが見失っているのは、人間は困難があればこそ努力し、成長し、学ぶという点だ。(79頁)》

これは、ストレスが困難をもたらすばかりではないと主張するものです。

《細胞レベルでもそれは同じで、ストレスは脳の成長に拍車をかける。ストレスがそれほど過酷なものでなく、ニューロンが回復する時間があれば、その結びつきは強くなり、わたしたちの心の機械はよりスムーズに動くようになる。よいか悪いかの問題ではない。ストレスは必要不可欠なものなのだ。(79頁)≫

このようにみてきますと、ゴルフで受けるストレスは適度で良好なものと解釈できるでしょう。ゴルフコースはまさに運動の場であり、脳がよく鍛えられるのです。***

文/柴山茂伸(書斎のゴルフ編集部スタッフ)

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