『誰もいわなかったゴルフの基本 本当に必要なことはたったコレだけ!!』
中井 学 著 河出書房新書
“小学校では野球と剣道に明けくれ、校庭の遊具破損で肩からひじを損傷。負担が少ないだろうとゴルフに向かう。”そして米国留学し、現在の中井プロゴルフコーチにつながったとあります。
本の帯に《伸び悩んだら、勇気をもって基本から》と《1カ月で満足なコースデビュー確約》とあり、初心者と“悩み多きベテラン”の両方に役立てようという目的が伝わってきます。
《バランスのいいアドレスをつくるための要素はいくつかありますが、ゴルフをこれから始める人たちに守って頂きたい絶対的なポイントをひとつだけ取り上げたいと思います。(34頁)》
「ひとつだけ」と強調され、この本「誰もいわなかったゴルフの基本」の凝縮されたような説明が続きます。

《それは「左腕が伸びて右腕が曲がっている」というセットアップを実行することです。(34頁)》
《インパクトというクラブフェースがボールをとらえる瞬間に、パワーをボールに効率よく伝達するには、右腕が曲がっていなくてはなりません。(34頁)》
プロの連続写真では、打つ瞬間から低いフォローにかけて、右腕は左腕と三角形を保ちながら伸びきって見えます。しかし、インパクトの瞬間は伸びきってはいないということです。
《ボクサーのストレートパンチのように、相手の顔面をヒットする瞬間は右腕が曲がっていて、ヒットしてから右腕が一気に伸びていくのが理想的な動きです。(34頁)》
スイング事例に出てくるカナヅチでも右ヒジは曲げたままで、打っては上げる動作です。ヒジが伸びきることはありません。なお、「ヒットしてから右腕が一気に伸びていく・・」は、意識してではなく遠心力で自然に伸びてゆくと理解されるものです。
《ビギナーがスイングをつくっていく過程で、インストラクターや経験豊富なゴルファーからは、「しっかり腕を振りなさい」とか「肩を大きく回しましょう」などとアドバイスされることでしょう。(40頁)》
《まず、腕を振るという内容ですが、序章でも述べたようにこの解釈は間違いです。体の回転が先にあって、腕やクラブは体の回転にしたがって振られるのです。(40頁)》
先ほどのカナヅチは、小指を支えに手のコックから始まります。餅つきの杵(きね)は、腕から動き出すと考えるのが自然です。そのため、ゴルフでは「体が先」と教えられても、にわかには受けいれられないのではないでしょうか。
《肩を回すという表現にしても、正しいようでいて実は曖昧です。「左肩を深く回しましょう」とか「アゴの下に左肩を入れましょう」「右肩を後ろに引きましょう」などと教える指導者もいますが、肩ばかりに目がいくと間違った動きになりかねません。(40頁)》
左肩がアゴの下に何で楽に入るのだろうと思い続けるも、出来ない。それで、「自分はアマチュアだから、肩なんかどうでもいい」、と投げやりぎみというのが本音でした。ところが、中井プロコーチは。この考えを解き放ってくれます。
《肩よりも胸を意識してください。両腕を胸の前で組み、バックスイングで胸を90度くらい右に向けましょう。そこから今度は胸を左に180度回すのです。(40頁)》
“胸を右、そして左に回してフィニッシュ”は、できそうな気がしてきます。
「両腕を象の鼻のようにブランブランと振ろう」の標題で《腕は自分の意図で振るものではありません。(44頁)》とあります。
《胸を象の頭とすれば、腕は象の鼻のイメージです。両足を広げて立ち、体重を右足に乗せながら胸を右に回しましょう。すると両腕が後からついてくるように勝手に振られる感じがわかるでしょう。(44頁)》
念のため「象」で検索してみました。象が鼻を手のように使う動画では“鼻のたて振り”が多くあります。顔はわずかな動きでも、鼻先は遅れ気味にムチのようにはねるのがわかります。
《両腕が右側に振られたら、今度は体重を左側に乗せて胸を左に180度回します。同じように腕が象の鼻のように振られることが体感できます。(44頁)》
《この動きを左右連続で続けているうちに、胸の回転と腕の振りの時間差の感覚がつかめてきます。この時間差が、腕が振られることの真相です。(44頁)》
「腕が振られることを先に覚えれば上達が早い」《自分で腕を振らずに、腕の回転を主導させて腕が振られることによって、スイングのメカニズムがシンプルになります。(44頁)》
このイメージをもって女子プロの動画を見ると、この通りであることがわかります。
《胸の回転よりも先に腕を振ろうとすると、腕や手に力が入りすぎたり、グリップが緩んだりしやすいのです。(45頁)》
この注意書きが大事です。
「下半身主導の動きなら反復性や再現性が高い」《要するにスイングの動力となるのは腕や手ではなく、お尻周りや脚などの大きな部位です。フットワークを使いながら胸を左右に回す動きは下半身主導といえます。(45頁)》
《最初のうちはどうしても「腕を振ろう」とか「クラブを振ろう」としがちです。中には下半身が完全に止まったまま、腕だけを振ろうとする人もいます。(45頁)》
以上から、自分で腕を振る癖がついてしまっていても、象の鼻が振られるように、両腕が振られる練習を積んで、リズム感のいい、きれいでダイナミックなスイングのマスターへの近道だということです。
自宅で簡単にできる練習法として「額(ひたい)を壁につけて体を左右に回す」《両腕を胸の前で組み、額を自宅の壁や柱につけて、体を左右に回転する練習法です。(94頁)》
《額を固定したままで胸を右に回し、そこから今度は胸を左に回しましょう。頭を動かせませんから、体の回転は制限されますが、それでOKです。(94頁)》
《ゴルフの未経験者が陥りやすい、ボールを上げようとしてダウンスイングで上体が右に傾いたり、インパクト前に顔が早く目標を向いて上体が起きたりするといった間違った動きを完全防止する効果があります。(94頁)》
そして、もう一つの練習法は、同じように壁に頭をつけたままで、腕を像の鼻のように振る練習です。
《腕や手を先に振るのではなくて胸を先に回転させて腕や手が遅れて下りてくる「時間差」を感じ取ることが、大切なポイントになります。(96頁)》
この要領でクラブを持って《インパクトゾーン素振りでクラブの動きを理解》へとつながります。
《インパクトゾーンというのは腰、またはヒザくらいの高さの振り幅のことで、この扇状の区域がスイングのもっとも重要な部分です。(66頁)》
《通常のスイングでは、バックスイングでもフォロースルーでも、腕や手が自分の体よりも前に見え、スイング中は腕や手、クラブがつねに体の正面に保たれていることが重要です。(67頁)》
《ところが、テークバックの際に手やクラブヘッドを自分の背後に持っていこうとする人がとても多いのです。(67頁)》
《ゴルフの経験の長い人にもよく見られますが、左手甲や右手のひらを真上に向けながらクラブヘッドを飛球線の内側に低く引こうとしすぎると、スイングが崩れてしまうことになります。(67頁)》
「うう~ん。確かにそうかもしれない」とのつぶやきが聞こえてきそうです。
《インパクトゾーンにおける腕や手、クラブの動きが安定すれば、それだけインパクトの精度も向上します。(72頁)》
《そしてインパクトゾーンがつくられれば、インパクトの3原則が成り立ちます。インパクトの3原則とは、「軽いハンドファースト」「アドレスのライ角の再現」「スクエアフェースです。」(72頁)》
この本では他にも「9番アイアンのヒール浮かせてパットのようにスイングする“パット式アプローチ”」などビギナーでもやさしいヒントが盛りだくさんです。今回は、手や腕からの始動ではない、体幹から動くスイング方法を中心にまとめてみました。***
文/柴山茂伸(書斎のゴルフ編集部スタッフ)
新連載「ゴルフは本でうまくなるか」(隔週)
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