YNGゴルフ研究会 書斎のゴルフSpirits その2

ゴルフの練習で大切にしたいもの その2 アドレス(ポスチャー)パート1

 ゴルフにはスコア作りの方程式があります。

 スコア=マネジメント(からだ・メンタル・クラブ・コース・自然条件など)×ショット、ショット=(グリップ・セットアップ(スタンス・アドレス(ポスチャー)・ボールの位置))×スウィング、スウィング=グリップ×セットアップ(スタンス・アドレス(ポスチャー)・ボールの位置)×下半身と体幹の捻転運動

 このうちマネジメント・グリップ・セットアップ(スタンス・アドレス(ポスチャー)・ボールの位置)はからだを動かす前の準備です。からだを動かすことは難しいことですが、静止した準備は誰でもできます。そして準備ができて余計なことさえしなければ、準備したとおりの動き(スウィング)になります。

 どんなにナイスショットが打てても風の判断が違っていれば、スコアにはなりません。どんなにいいスウィングをしても、グリップが歪んでいれば、ナイスショットにはなりません。同じようにアドレスの向きが目標を向いていなければ、狙った方にボールは飛んでいきません。

 ボールの位置が間違っていれば、スムースなスウィングはできず、狙ったようなボールは打てません。100m走なら100m走のスタート、マラソンにはマラソンのスタート、水泳の背泳には背泳に適したスタートがあります。

 ゴルフのスウィングのスタートはグリップとセットアップです。スウィングはわずか1.5秒の動きです。わずか1.5秒のスウィングの動きの間にグリップ・スタンス・アドレス(ポスチャー)・ボールの位置の歪みを調整することなどできません。そのためにスウィングではグリップとセットアップは極めて重要な基本になります。

アドレス(ポスチャー)を練習する

 アドレス(ポスチャー)とは文字通りボールの届け先です。郵便番号、都道府県、市町村、番地が正しくなければ郵便も宅急便も届きません。間違っていたら宛先不明で戻ってきます。まさにOBと同じです。ゴルフでもアドレスが適正でなければボールは狙ったところに届きません。

 中部銀次郎は一貫して「ゴルフはアドレスがすべて」と語っています。なかでも、前傾姿勢については細かく分析しています。「ミスショットしたときは前傾姿勢が深くなるということに気づいた」と語っています。日によって感覚が変わるために、パッティングではパターのソールを地面にピッタリとつけてパッティングの前傾姿勢をチェックしていたそうです。

 多くのゴルファーは、寒い、風が強い、雨、逆光など環境が悪くなると、前傾姿勢が深くなります。寒い日に練習するとなぜかダフリが多くなることはないでしょうか。この間練習場でまわりのゴルファーを見ているとダフルの人がたくさんいます。寒さでからだが縮んでしまい、スムースにからだが動かず手打ちのしゃくり打ちが強くなるためです。その原因は、上手くボールにコンタクトしようとして、目がボールに近づいて前傾が深くなるためです。

 はじめてゴルフの手ほどきを受けると、グリップ、アドレス、ボールの位置を教わります。初心者のうちはそれなりの恰好しかできません。上級者に比べればおかしな恰好でしかありません。その後レベルアップするに従ってグリップ、アドレス、ボールの位置は徐々に合理的なものになっていきます。

 U-tube、雑誌やレッスン書でもグリップ、セットアップ(スタンス、アドレス、ボールの位置)をテーマにしているものはごくわずかしかありません。そしてその多くは初心者向けというタイトルがついています。レッスンの多くは、飛ばすための手や腕やからだの動かし方をテーマにしています。こうした環境が、アドレスが重視されない原因になっているのかもしれません。

 グリップやセットアップはゴルフのレベルが上がれば上がるほど精緻にならなければいけません。アベレージゴルファーならクラブヘッドの芯を数センチはずしてもナイスショットだと思います。しかし上級者になれば数センチ芯を外せばミスみなります。アベレージゴルファーのウェッジの打球跡とシングルゴルファーのそれをみれば一目で分かります。

 練習場では、アマチュア同志でアドバイスしていることがあります。そうしたアマチュア同志のアドバイスにはアドレスについてのアドバイスはほとんどありません。お互いアドレスの大切さに気付いていないからかもしれません。「スウィングが速い」「肩を回せ」「インパクトで右手を返せ」という感じのはなしばかりではないでしょうか。

 しかし「骨盤から前傾する」「前傾姿勢が深くする(浅くする)」「肩・胸・腰・脚の向きを飛球線に平行に構える」という感じのアドバイスをしたり、アドバイスされたことはあるでしょうか。しかも、繰り返しアドバイスしたり、されたりということはほとんどないのではないでしょうか。またそうしたアドバイスを求める人がほとんどいないのも現実です。

 たった1回のアドバイスでアドレスが合理的なものになることはありません。繰り返しチェックし続けなければアドレスはすぐに崩れてしまいます。

 「骨幹理論(うで体あし体)」鴻江寿治は人間のからだの歪みに着目した運動理論です。うで体(腹筋タイプ)は右肩下がりで右の骨盤が前に出で上になり、あし体(背筋タイプ)は左肩下がりで左の骨盤が前に出て上になっています。からだの歪みはアドレスに大きく影響します。

 中部銀次郎は、普段から正しくアドレスするために歩く姿勢をただし、利き手ではない左手でカバンを持つ、酒を飲むときも姿勢を崩すことはなかったと言います。「普段の悪い姿勢を正しくしておけばアドレスに狂いが生じることはない」と語っています。

 体調によってアドレスは日々変化します。自分のアドレスの歪みに気づくことは難しいことです。人間の感覚は不安定なものです。それを解消するためには、プロのアドバイスを受ける、プレー仲間(上級者)からチェックしてもらう、鏡などで自分なりにチェックするなどして常に注意することが必要です。

アドレス(ポスチャー)は関節をスムースに動かすための準備

 アドレス(ポスチャー)はスウィングを決めます。人間の関節は柔軟性の違いで動かせる範囲は違っていても、動かせる方向は誰でも同じです。この関節を合理的に動かすことができれば効率的で安定したスウィングになります。

 関節を動かす前に関節自体が歪んでいたらスムースなスウィングはできません。アマチュアはこの関節自体の歪みや関節の動きが歪んでいるためにどうしてもスウィング中に手や腕でその歪みを調整しようとしています。その結果200Y飛ばすこともむずかしくしかも曲がってしまいます。プロは300Y飛ばして狭いフェイウェイをキープできるのはこの歪み少なくするために努力しているからです。普段からたゆまないストレッチやトレーニングを欠かさず、ラウンド前には入念にストレッチやウォームアップ、ラウンド後はクールダウンを行っています。ほとんどのアマチュアは、練習場の打席についてすぐにクラブをもって振り回します。それではミスショットが出るは当たり前です。

 歪んだからだでアドレスすれば、歪んだアドレスになり、歪んだスウィングプレーンになります。それを調整するためにどうしても手と腕を使ってしまいます。

スウィングのエネルギーはアドレス(ポスチャー)の前傾で決まる

 「飛ばすためにはどうしたらいいか」と問われれば、多くの人は「クラブを速く振ってHSを上げる」と答えるのではないでしょうか。「クラブを速く振ってください」というと多くの人は、手と腕を思いっきり速く振ってクラブを振ろうとします。すると、下半身は止まります。手と腕でクラブを速く振るとクラブヘッドは同じ軌道を通りません。これが練習場のゴルファーの現実です。

 手と腕でクラブを振ると速く振れるように感じますがスウィングプレーンは小さくなります。手首だけを動かすと手は速く振ることができます。腕を使って速く振ろうとするとスピードが遅くなったように感じます。上半身を使って速く振ろうとするとスピードはさらに遅く感じ、下半身を使うともっと遅くなったように感じます。

 キャッチボールで手首だけでボールを投げても遠くには飛ばせません。腕を使うと少しだけ遠くに飛ばせます。しかし、イチローのようにレーザービームを投げようとすれば全身を使う必要があります。

 誰でも分かっていることのようですが、なぜかゴルフでは、ボールを遠くへ飛ばそうとすると手と腕だけでクラブを速く振ってしまうのがゴルファーです。

 ボールを遠くへ飛ばすためには全身のエネルギーが必要です。そのエネルギーは手と腕だけでつくることはできません。下半身を使ってからだ全体を使う必要があります。そのエネルギーをつくる準備がアドレスです。

 スウィングのエネルギーは下半身と体幹の捻転で生まれます。極端に言えば、股関節がスウィングのエネルギーの主たる製造元になります。

 骨盤が適正に前傾していればスウィングのエネルギーを効率的に生むことができます。骨盤が適正に前傾していないと下半身と体幹の捻転が弱くなり飛ばしのエネルギーは弱くなります。

 昔からアドレスでは、お尻を突き出すようにとかお尻を持ち上げるようにというアドバイスがあります。初心者やアベレージゴルファーは、お尻が落ちたり、お腹をへこませて前傾することが多いようです。脚の付け根(骨盤)から前傾することが最大のポイントです。

 骨盤の前傾はスウィングのエネルギーだけではなくスウィングプレーンを決める重要な役割があります。また、適性な前傾ができていないと体幹が斜めに適正な回旋ができず、からだが上下左右にスウェイしてしまいます。

 せっかく骨盤を前傾してもスウィング中に骨盤の前傾が浅くなることはアベレージゴルファーによくある現象です。するとスウィングのエネルギーが蓄積されず、スウィングプレーンも歪んだものになってしまいます。

 ゴルフでは地面にあるボールを打つ運動です。下にあるボールを打つためにはからだ(骨盤)が前傾していることは当然と言えます。アドレスの前傾姿勢はどんなレベルのゴルファーでも、いつも注意して、プロや上級者からチェックしてもらうことも必要です。永久シード選手の片山 晋呉はアドレスする前に必ず両手でクラブを持って脚の付け根に当てて前傾姿勢をとることからアドレスをつくっています。

からだの向きは飛球線に平行が基本

 からだ(足、脚、腰、胸、肩)の向きは飛球線に平行が基本です。

 ターゲットに正対してスウィングはできません。斜めでも窮屈なスウィングになります。からだのパワーはからだを旋回することで最大になります。飛球線に平行にアドレスすることからスタートしてからだの捻転のエネルギーが生まれ、腕とクラブを振ることができます。

 クラブを持たずにアドレスして、からだ(脚・腰・胸・肩)を飛球線に平行にすることは誰でもできます。しかし、クラブを持った瞬間にそれが難しくなります。理由は右手が下になるようにグリップするためです。グリップせずに単に前傾しただけなら両肩は水平で肩を飛球線に平行にするのは簡単にできます。グリップすると肩・胸・腰・脚の向きが歪みやすくなります。

 さらに、ボールを目の前にするとからだの向きの歪みはさらに増幅されます。クラブを持って(グリップして)、ボールを目の前にすると、多くの人は右肩が前にでて、肩が開いてしまいます。

 これは初心者・アベレージゴルファーはもちろん上級者でも相当注意すべきポイントです。シングルゴルファーでもからだの向きが飛球線に平行になっていない人はたくさんいます。からだ(脚・腰・胸・肩)の向きは自分では精確に分かりません。プロや上級者にチェックしてもらう、自分で鏡やクラブを使って常に注意する必要があります。

 プロや上級者(ジュニア)は必ずと言っていいほど、アライメントスティックなどを使ってからだの向きをチェックしています。2019年のルール改正で禁止となりましたが、女子プロはティーイングエリアでキャディーがアドレスの向きをチェックしていました。それほどアドレスのからだの向きに注意をはらっているのです。アドレスのからだの向きこそボールの運び先を示す最大のポイントです。

 ゴルフのスウィングで大切にしたいものは、アドレスです。アドレスで骨盤から前傾することは下半身と体幹の捻転でスウィングの最大エネルギーをつくりその後のスウィングプレーンの基礎になります。アドレスのからだ(脚・腰・胸・肩)の向きはボールが飛ぶ方向を決めるポイントです。これが歪んでいたらスムースなスウィングができず、ナイスショットは生まれません。歪んだアドレスからは手と腕に頼ってクラブを操作せざるを得ない手打ちになってしまいます。クラブを振ることだけが練習ではありません。クラブを振るより、その前の準備(アドレス)にもっと注意したいものです。アマ100勝の坂田哲男は「打つ前にミスをするな」とアドバイスしています。

文・柳生田幹久

 

 

 

 

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