『疲れないカラダ大図鑑』夏嶋隆 著 株式会社アスコム(2021年初版)

アスリートの疲労やケガは、「間違った姿勢・動作」からもたらされるそうです。すると、「正しい姿勢・動作」を身に付ければ、疲れづらく、ケガしにくい体を得られ、本来の力を発揮しやすくなるに違いありません。
この本「疲れないカラダ大図鑑」では、日常生活にちなむ100の方法が展開されます。ここではゴルフに役立ちそうな項目をいくつか紹介します。
《椅子から立ち上がるときは、ぎっくり腰になりやすい場面です。最初に頭を前方に出して、膝に両手をつき「エイッ」と立ち上がると、腰に大きな負担がかかります。地面に対しての体の表面積が、座っているときよりも広くなっているので、重力のダメージを大きく受けてしまうのです。(90頁)》
ゴルフでは、立ち上がる場面が多くあります。頭を動かして立ち上がるのは、人に教わることなくやっていることです。それが違うというのですから、どういうことでしょうか。
《腰に負担をかけない立ち上がり方をするには、まず椅子の前方までお尻をずらします。そして、前に出していた足を引き寄せながら垂直方向へ立ち上がるようにしましょう。座っているときと同様に、耳、肩、骨盤が一直線に並んだまま立ち上がるので、上から見ると体の面積は小さいままです。そのため、重力のダメージを最小限に抑えることができます。(90‐91頁)》
深く座ることが疲れない方法とされているので、前に出るのが面倒なときは、足を引き寄せるだけでも、かなり真直ぐに立ち上がれることが分かりました。
一般に、ティ-を地面に刺すとき、前かがみになります。しかし、両膝を交差して曲げ、しゃがんで刺すと頭が下がりません。骨盤を前傾させないことが要点のようです。それで、真直ぐに立ち上がれます。「オヤジっぽい」と言われそうですが、楽が第一でしょう。
《みなさん、ご自身の普段の歩き方を思い出してみてください。かかとから着地していませんか? それが人間の「正しい歩き方」だと思い込んでいませんか? しかし、その歩き方は人体の構造に反しています。だから、歩くだけで疲れてしまうのです。(106頁)》
競技会に出るマラソンランナーは「かかとから着地」しているように見えます。歩行でも同じと思い込んでも仕方ないところです。
《歩く際、ほとんどの人がかかとから着地し、足指のつけ根を折りながら力を入れて、足を前に振り出しています。この動きをすると、足首の角度は、着地して足の振り出す直前、鋭角(90度以下)になっています。足首が鋭角になっているということは、一歩進むたびに、ふくらはぎの筋肉が緊張するということです。ふくらはぎの緊張は血流を悪化させ、疲れや痛みの原因になります。(106頁)》
さらに次が要注意です。
《大股で歩く人は、かかとへの衝撃が強まり、足首もより鋭角になるため、疲労感はさらに増します。つまり、「疲れない歩き方」の基本は、かかとから着地しない、大股であるかないことです。(107頁)》
ゴルフコースは平たんに見えても、アップダウンがあります。足首の角度も変わり、疲れにつながる。足の疲労感がミスショットにつながっているのでしょう。《基本の疲れない歩き方》が次に示されています。
《・骨盤幅(骨盤の横幅)で歩く ・前に踏み出す足は、そっと引き上げて、体の前に落とす ・かかとからではなく、足裏全体で着地する(その際、足の指で地面をつかむように) ・同時に、後ろに残った足をスッと引き上げる(その際、足首を伸ばす) ・つねに着地している足に体の重心があるようにする(耳、肩、骨盤、着地した足を一直線にする)(107頁)》
人間は、このように歩いてきたのですが、かかと着地になったのは、ソールの厚い靴ができて、足裏全体で着地しなくても歩けるようになったから、と説明しています。急ぐときは、歩幅は小さくして、ピッチを上げるということになります。
《大股で歩く人は、かかとへの衝撃が強まり、足首もより鋭角になるため、疲労感はさらに増します。つまり、「疲れない歩き方」の基本は、かかとから着地しない、大股で歩かないことです。(107頁)》
この本では、何がなんでも大股がダメとはせず、交互に使い分けて歩き、バランスを取ることが適切としています。さて、ゴルフコースにある坂道ではどうでしょうか。
《坂道を平地と同じように歩くと、前に出した脚の筋肉に力を入れて踏ん張ることになるので、疲労感は倍増してしまいます。でも歩き方をちょっと工夫すれば、体が軽くなり、スムーズに坂を上がれるようになります。(112頁)》とのことで、方法は次です。
《骨盤幅で、足を「逆ハの字」に開く ・足首を90度に固定する ・骨盤を上下させて歩き、なるべく脚の筋肉を使わない(112頁)》これは、《ノルディックスキー選手が、スキー板を「逆ハの字」にして登る》イメージといえば分かります。
《下り坂を歩くのは、疲れないと思いがちです。それは、心肺機能の話で、筋肉や関節は重力の影響を受けてむしろダメージを受けやすいといえます。山登りをした翌日になどの筋肉痛は、登りではなく下りの歩行によって引き起こされています。また、下り坂を歩くときは膝を痛めやすいです。(114頁)》それで具体例です。
《・骨盤幅で歩く ・骨盤を下げながらつま先から着地するイメージで ・前傾姿勢にならないように注意する(体の軸は一直線に)(114頁)》
《骨盤幅より内側に足をつくと、安定感を失って膝を痛めやすくなります。足の指を猫のように曲げて、地面を確実にキャッチしながら進むとスムーズです。また、できるだけ脚の筋肉は使わず、骨盤を動かして下っていくイメージを持ってください。(115頁)》
「脚の筋肉ではなく、骨盤を動かす」とは、腕ではなく肩を動かしてスイングするようなイメージを感じます。体の末端を動かすよりは、中心部を動かすことが安定しやすいといわれるゆえんでしょう。
《雨で濡れたタイルの上や、雪が溶けて凍ったアイスバーンの道を歩いて、転倒しまった経験があるかもしれません。(120頁)》
これらも、すでに紹介した「足裏全体で着地し、小股で歩く」ことが肝要とダブルチェックしています。
《重い荷物を歩いて運ぶとき、手や腕の筋肉がパンパンに張って、何度も左右の手を持ち替えたり、休息して回復を待ったりしたことは誰でもあるでしょう。なぜすぐに疲れてしまうのかというと、理由は単純で、荷物を体の前か脇で持っているからです。(168頁)》
ゴルフでは重いバッグからゴルフクラブまで持つ物は多くあります。また、目土用の砂袋もあります。
《体の前で荷物を持つと、手と腕だけで荷物の重さを支えなければならず、筋肉は緊張して悲鳴を上げている状態になります。同時に荷物の重さによって前傾姿勢になるため、歩行時の体の軸も崩れ、肩や腰、足への大きな負担がかかります。これが、重い荷物を運ぶとき、すぐに疲れてしまう理由です。(168頁)》
そうならないための方法は簡単だというのです。
《荷物を持った手を、体の前ではなく、体の後ろ側(お尻のあたり)に持ってきてください。その際、腕は胴体に密着させるようにして、手首は曲げないで伸ばしたままにします。筋力ではなく、自分自身の胴体を使って、荷物の重さを支えるイメージです。(168頁)》
これまで、コースでゴルフクラブを持つときは、前方向に腕を曲げて持っていました。試しに、クラブを逆手に吊り下げる感じで持ち、でん部あたりに手がくると楽な気がします。次回のゴルフで試してみるに気になるものです。
《体の中の深部体温が温まっていないまま筋肉に刺激を与えると、急激に引っ張られた筋肉は、元に戻ろうとしてかえって縮こまってしまいます。疲れやこりがある部分が一時的に軟らかくなった気がしても、時間が経つと、それまで以上にガチガチに硬くなってしまうのです。(266頁)》
スタート前にストレッチをやることが多いのですが、クラブハウスからティーイングエリアまで早足でいくと、体が温まります。練習後なら十分に温まっているでしょう。本文にも《ストレッチをする際は、まずウォーキングやジョギングで体を温めてから行うのが基本です。(267頁)》とあります。
朝の受付で住所、氏名などを書くときに、鉛筆を寝かせて持っていました。それは効率がよくないことをこの本で知りました。
《ペンを持つときは、手首が甲側に反らないようにすることが大切。前傾姿勢で文字を書くことは、全身の疲れの原因となる。(81頁)》
それで、ペンを立てて《小指の骨でペンを支える》と、姿勢よく筆圧が適度になる感覚が味わえました。日常の気配りで「疲れない姿勢と動作」をつくれば、ゴルフ上達につながると実感した瞬間です。***
文/柴山茂伸(書斎のゴルフ編集部スタッフ)
新連載「ゴルフは本でうまくなるか」(隔週)
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