いいゴルフの基本 体 その2
怪我しないことが大前提
理学療法からみたゴルファーの体について
ゴルファーにとって体は基本中の基本です。今回は理学療法という専門的な視点からゴルファーの体と機能について考えてみます。
埼玉医科大学かわごえクリニックで理学療法士として日々患者のリハビリテーションを行い、特にゴルフと怪我の予防について研究されている濱田勇志さんに、理学療法からみたゴルファーの体について伺います。

濱田 勇志
修士(理学療法学)
認定理学療法士(スポーツ)、Golf Physio Trainer、埼玉県理学療法士会スポーツリハビリテーション推進部部員(高校硬式テニス)
濱田さんは昨年埼玉医科大学大学院修士課程で「ゴルフにおける左股関節のストレッチとその効果」を研究し、現在は同博士課程(指導教員 赤坂清和教授)で引き続きゴルフと怪我の予防、体のパフォーマンスの向上について研究されています。はじめに昨年研究された「ゴルフにおける腰痛予防とウォームアップについて」の基本的な考え方を以下、紹介します。
腰痛の原因
ゴルフの傷害では他のスポーツ競技と比較し、腰痛の多いことが特徴です。腰は解剖学的に回
旋することがほとんどできない関節であるため、無理に回旋させようとすると痛みが出現しま
す。腰痛があるゴルファーはスイング中に腰の動きの多いことが報告されており、ゴルフのスイ
ングでは過剰に腰を回旋させて負担をかけることのないようにすることが大事です。
体の回旋の基本とは
まず体の中でどこの部位で回旋という動作が起きてくるかを理解する必要があります。それは胸椎(胸郭・肩甲骨を含む)と股関節です。そのため、胸椎と股関節が固くなり十分に体の回旋運動が機能しなくなると、その間にある腰を回旋させなければならなくなるため、腰に負担がかかってしまいます。
左股関節の柔軟性が腰の回旋のポイント
右利きゴルファーでは、左股関節が固くなることによって腰の回旋が増えることが報告されています。つまり、股関節が固くなることは腰への負担を増やすことに繋がっている可能性があります。そのため、私たちの研究では近年、筋膜リリースの方法として使用される頻度が多くなってきているフォームローラーとストレッチを組み合わせた方法を実施し、右利きゴルファーの左股関節の柔軟性を高めることにより、スイングにどのような変化があるか、三次元動作解析装置などを用いて調べました。


右手にクラブを持ち、左足を固定した状態で右足が左足を超えていくようにステップをすること
で体を捻じり、左足のお尻の筋肉をストレッチする運動を15回×2setを行う(右)
結果は右利きゴルファーの左股関節の柔軟性を高めることにより、スイング中に起きる左股関節の回旋する動きが増えること、スイング中に股関節の回旋動作が増えた人ほど腰の回旋が減る関連性があることが明らかとなりました。またゴルフのパフォーマンスとして、フォームローラーとストレッチを実施後ではキャリーが平均5y増えたことも明らかとなりました。股関節はゴルフスイングにおける回旋動作の半分以上を担っています。練習やラウンド前に股関節のストレッチを取り入れてみてはいかがでしょうか。
ゴルファーのウォームアップについて
どんなスポーツにおいても、スポーツをする前のウォームアップは傷害予防、パフォーマンス向上のために必要なものです。
諸説ありますが、練習前にウォームアップをしないゴルファーは全体の60%を超えており、ウォームアップする必要がないと感じている人が39%もいたと報告されています。全てのスポーツで、運動前に準備体操はすることは誰もが知っていて行っているのにも関わらず、なぜゴルフにおいて、ここまで実施率が低いかは不思議です。
そして、ウォームアップをするゴルファーでも10分以内の人よりも10分以上する人のほうが怪我の割合が少ないことも報告されています。したがって、ウォームアップの目安の時間としては10分以上取り組んでいただけると良いと考えています。
そして、ゴルフはコンタクトスポーツでないことから慢性的に腰に負担がかかるため、練習量も傷害に大きく関わってきます。詳しいウォームアップ内容については、次回以降にご紹介したいと思います。
以上、濱田勇志さんの「ゴルファーの腰痛予防のためのウォームアップについての研究」で説明されているとおり、スウィングは胸椎(胸郭・肩甲骨を含む)と股関節で行われます。それ以外の動きが大きくなるとミスショットになり、またその動きが大きくなり過ぎると怪我に繋がります。
一般的には肩を回す、腰を回すと言われます。肩は胸椎、腰は股関節の動きです。この感覚が身についているゴルファーは一握りしかいないのが現実です。胸椎と股関節が硬くなると他の関節を無理に動かして本来の回旋を補う動きになります。こうした動きはデスムーブ、ミスの上塗りなどと言われます。これらは無理な動きが過度になると怪我の原因になります。
胸椎と股関節をスムースに動かすためには、ウォームアップが不可欠です。濱田さんは、ウォームアップの目安の時間としては10分以上をアドバイスしています。
スムースなスウィングは動ける体が大前提になります。次回以降、ゴルフにおける体についてさらに詳しくお話を伺います。
(・・・次回に続く)
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