百打一郎と申します! 第1ステージ第2回

『出費』

部長からクラブとゴルフバックをいただいいたのですが、シューズや手袋、ボールも 必要だと言われ、早速スポーツショップに行きました。そのお店は広く、クラブ、ゴルフ バッグ、ウエアと多くのゴルフ用品が陳列されていました。 部長からいただいたクラブがいくらくらいするのか、値段に興味があったので、最初 にクラブの陳列場所に行ってみました。値段はピンからキリまで様々でしたが、いただ いたクラブは中の上くらいの値段だったので、なにか得をしたような気になりました。次 にシューズ売場に行くと、店員さんが「何かお探しですか?」とタイミングよく声をかけ てくれました。

 私は自分の状況を話し、「どのシューズがお勧めですか?」と尋ねると、タイガー・ ウッズが履いているシューズなど、運動靴タイプのシューズ等を丁寧に説明してくれま した。でも、もっと値段がリーゾナブルで、自分の好みに合うシューズがいいなと、そう したシューズを選びました。

 次にボールです。箱積みされたボールや、袋に入ったボールが陳列されていまし た。ボールにもいろいろな種類があり、店員さんの説明で、弾道が高い、低い、スピン がよくかかるなど、プレーヤーのレベルで選ぶものが異なることがわかりました。

 店員さん私の顔を見て言います。 「最初はOBや池に入れて、ボールがなくなることがとても多いのです。もしもプレーの

 途中でボールが足りなくなったら大変です。プレーができなくなってしまいますから ね。ですから、最初は袋に入った、安くて数の多いロストボールがお勧めです」 というわけで、ロストボールをたくさん買いました。 次は手袋です。手袋が左だけというのも不思議でしたが、店員さんに聞くと「ゴルフの スイングで大切なのは左腕だからです」ということでしたので、勧められた手袋を試着 し、購入しました。 最後はティショットの時に使うティペッグです。安いティを求め、プレーに必要な物が 一応揃いました。 これが私にとってゴルフをするための初めての出費でした。シューズ、手袋、ボール などが入った手提げ袋を手にした時、「さぁー、これから、ゴルフを始めるんだ」という喜 びが心の底から溢れてきました。 その気分はとても爽やかで、すでにコースでプレーしているような愉快な気持ちでし た。まるで遠足に行く前の日の子供のような感じでした。

 『初練習』 約束の日が来ました。私は部長に指定された練習場に1時間前に行き、ロビーで 座って待っていました。 日曜日でしたので、多くの人がロビーで待っていて、「こんなに練習する人がたくさん いるのだ」と初めて見る光景に驚きました。 やってくる人々はニコニコして本当に楽しそうに見えました。 ロビーでは皆さん、ゴルフ雑誌を読んだり、テレビを見たりしながら、打席の順番が来 るのを少し落ち着かない様子で待っていました。 フロントから呼び出しのアナウンスがあると全員の意識がフロントに向かい、「自分の 順番が早く来ないかなー」という気持ちがビンビンと伝わってきました。 やがて部長も到着し「おはようございます」、「場所はすぐわかったか」などと挨拶を交わし、打席の呼び出しアナウンスを待っている間に、部長から「レッスンを受ける心得 10カ条」と書いた紙を渡されました。そこには次のように書かれていました。 「レッスンを受ける心得10カ条」

  1. 1.  頭の中を空っぽにする。「できない!わからない!」の言葉は言わない
  2. 2.  違和感を感じると身体が拒否反応を起こすが、逆にそれを面白いと考える。拒 否反応を起こすと否定的な言葉を思い浮かべる。例えば「そんなので当たるの でしょうか」と。そのときに「なるほど、そのような形にするのか、面白い、やって みよう!」と180度、考えを切り替える。
  3. 3.  当面は「当たる、当たらない」、「できる、できない」は問題ではなく、自分の身体 を、自分の意識で動かす努力をする。
  4. 4.  今の自分が劣っていることを認める。最初から何でもできる優秀な人はいない。 小さなヘッドでボールを打つこと自体、天才の始まりと考える。
  5. 5.  上達する速効性のある理論など存在しない。
  6. 6.  思い込みを捨てる。筋肉ではなく思考の力を抜く。「思考の脱力」を目指す。
  7. 7.  上達は半年後、1年後と思い定めること。
  8. 8.  「わからない」は当然なので、今やっていることだけに集中する。今やっている ことをただ繰り返す。
  9. 9.  1つの動きに集中し、それを「形」として覚える。
  10. 10.  練習場やコースはプライベートな場所なのでプレーする人は皆平等、部長で はなく、正治さん、一郎君とお互い呼び合う。

 『練習に入る前』 私がこの「レッスンを受ける心得10カ条」をざっと読み終えたところを見計らって、部 長はその考えの背景を説明し始めました。 「ゴルフスイングには普通の身体の動きとは異なる矛盾した動作が多いのです。そこ で、君にとっては自然な体の動きと違うと感じることが多いはず。よって、最初はわから ないことだらけだろう。しかし君にそのことを説明しても、多分、理解不能で複雑になる だけだと思う」部長は私を見て言います。 「だから、その説明はしないので、言われるままにやって欲しい。その際、私の方法は 一般的なものとはかなり違うと思うが、私のやり方で練習していけば、必ず君は上達で きる。だから私を信じて素直に実践して欲しい。1つ1つコツコツ積み上げていけば必 ず上達できる。近道だと思ってやり続けて欲しいのだ」 そう言われても私は何がどう違うのか、わかりません。そこで「なぜそのような独自の 方法を考え付いたのですか」と尋ねてみました。
 そうしたら部長はこう言うのです。 「それは早く簡単に上達する方法を私自身が真剣に考え、自分でやってみて、間違い ないやり方だと思ったからなのだ。月数回の練習、年に数回のラウンドで上手くなる方 法を私が自分で編み出したのだよ」 そう言って、にやりと笑いました。どんな方法なのか、私はちょっと不気味な感じも抱 きましたが、とにかく部長にすべてを任せようと思ったのでした。

文:久富章嗣(ゴルフ工学研究所所長)編集:島田一郎(書斎のゴルフSTAFF)

あるアマチュアゴルファーの挑戦
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