ゴルフは本でうまくなるか 〈1ー18話ダイジェスト版〉

(2022年12月19日)

 2022年(令和4年)4月から隔週掲載で始めた「ゴルフは本でうまくなるか」が〝第18号〟にたどり着きました。

 ゴルフの本や一般書籍に題材を求め、「ゴルフっぽい目線や感覚」で編集した1号から18号をダイジェストで振り返ってみます。

〈1〉『弘兼流 やめる!生き方』弘兼憲史 著 青春新書インテリジェンス刊(2020年刊)

 この本で提唱された「それがどうした」というつぶやきは、ゴルフコースで何度も頭をよぎるようになり効果を上げています。

 《自分の物差しを持っていれば、今の自分のありようを測る時に、人と比べる必要がなくなります。幸せの尺度は人それぞれ違うのですから、人と比べてみたところで意味がない。自分の尺度さえあれば、「もう60歳か」などとネガティブな発想をしなくなるのです。(157頁)》

 《他人と比べがちな人や、物事を悲観的に受け取りがちな人は、意識して「もう」ではなく、「まだ」から物事を考えるクセをつけるといいですね。(158頁)》

 そうすると、「午前中のハーフで“もう50叩いてしまった」ではなく、「まだ50しか叩いてない」となるのでしょう。それで50のスコアが変わるわけはありませんが、気休めにはなりそうです。

〈2〉『伝統のプレーヤーが直伝 ゴルフの神髄』本條 強 著 日本経済新聞出版(2021年刊)

 欧米にはゴルフ文化がある!といえます。ゴルファーたちが残した言葉が今も力を失ってないからです。ゴルフは英語のリズムに合っていて、文化が生まれやすいのかもしれません。

 ベン・ホーガンはゴルフ手帳に練習日記を付けていたそうです。

 《その日に練習したテーマや問題点はもちろん、どのようにして上手く打てたのかの理由や、どのようなミスが生じたか、その原因なども克明に書いておくのです。(98頁)》

 世界のゴルファーやコーチの名言は、人を勇気づけ、実利をもたらしてくれます。

 ゴルフ文化のために、「言葉で勝負する」あそして「テクニックを言葉で残す」ことをさらに期待したいところです。

〈3〉『本番に強くなる!アヤコ流』岡本綾子 著 ゴルフダイジェスト社(2016年刊)

 女子プロのイメージは、「なんで、あれで飛ぶんだろう」です。    

 ヘッドの芯、あるいは芯の辺りに当たれば飛ぶということです。その開祖のような岡本プロには驚嘆と憧ればかりでした。

 そのスィングのように、割り切りのいいコメントはアヤコ流ゴルフそのものです。

 《こうだと思った速さや距離感が違い、どうすればいいのかワカラナイ状態になったとしたら、思い切って短く、シャフトの部分まで下げてグリップしてみてはどうでしょうか。(58頁)》

 実際にやるかどうかよりは、試す価値ありです。

《前屈みになって打つなんてミットモナイって?それなら、わたしから一つ質問。見栄を張るのとスコアをよくするの、どっちがいいですか?(58頁)》

〈4〉『脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方』ジョンJ.レイティ/エリック・ヘイガーマン 著、野中香方子 訳 NHK出版(2009年刊)

 昔なら、頭を鍛えるというのが一般的でした。クイズやパズルで頭を鍛えようとしたのです。

 現代医科学では、心と体の結びつきや運動と脳活性化の相乗効果が認められ、「ゴルフはすぐれたスポーツ」と定義されるようになりました。  

 《老いにともなう問題のひとつは、立ち向かうべき課題がなくなることだが、運動していると、いつまでも向上心をもってがんばりつづけることができる。(296頁)》

 体を動かす効果が感じられます。

 《このことは『忙しく生きていないと、体は急速に死に向かう』という考えを裏づけている。計画や目標を立て、約束を入れることは大切だ。ゴルフやテニスのようなスポーツが非常にすぐれているのは、自分を客観的に評価することと、上達しようとする意欲が求められるからだ。(296頁)

 ゴルフでは、《上達しようとする意欲》は持ち続けられやすいといえます。上達が思うに任せないからです。

〈5〉『彼方への挑戦』松山英樹 著 徳間書店(2021年刊)

 《体を本格的に動かす前から、心臓がバクバク音を立てている。息苦しい。標高の高いメキシコにいるときみたいだ。体に酸素が入ってこないような感覚さえある。不安でしかたがなかった。(249頁)》

 2021年にマスターズで優勝した最終日の状況です。レベルが違うとはいえ、「プロでもここまで緊張するんだ」と変な安心感が出てきます。

 《なぜ、うまくいかないかを考え、それを突きつめるのが楽しい。「人生と同じ」などと偉そうなことは言えないけど、ゴルフは「うまくいかないを楽しむ」スポーツだ。少なくとも僕は、その楽しさと等身大で向き合っている。(278頁)》

〈6〉『ゴルフ場の法律に強くなる!』西村國彦 著 ゴルフダイジェスト社(2007年刊)

 「自分は事故に合わない」と思い込んでいるものです。さもないと、日常は危険だらけでノイローゼになりかねません。しかし、ゴルフ場は、“楽しみと危険”にあふれています。

 バンカーからトップして飛んできたボールの直撃を受けた友人から聞いた話です。

 同伴プレーヤーはバンカーショットを打とうとしている。友人は、斜め前方20メートルほどにいた。ボールは狙い外れて友人に向かってくる。目では見えたけど体は動かない。避けられない。幸い右腕の付け根に当たり、負傷せずに済んだ。

 友人は、「前方にいた自分が悪い」と反省しきりであった。

 起こらないと軽んじたときに突発的なことが起こるのです。ゴルフ場でのケガや事故防止の法的知識を意識するだけで、注意ポイントが分かります。

〈7〉『小娘たちに飛距離で負けないための授業』八木一正 著 ゴルフダイジェスト新書(2006年刊)

 フィギュアスケートの回転をゴルフに応用した運動理論は役だちました。

「人はフォローでインパクトを感じる」といいます。

 《人の反応時間は、気がついてから動き出すのに、誰でも0.2秒程度かかる。スイング速度は、最下点で少なくとも秒速40mはあるので、0.2秒間の移動距離は「速度×時間=40×0.2=8m」となり、インパクトを感じ取るのは8m通過後だ。(209頁)》

 秒速40mは時速144kmです。プロ野球のピッチャーが投げるボールの速さに匹敵します。

 《従ってインパクトを感じとるのはフォロー。またこれは、スウィングの途中で何かに気づいた時、それを修正するのは困難だということでもある。よくプロが「インパクトのミスをフォローで修正した」ような発言をするが、これはムリ。あくまでも感覚の世界だ。(209頁)》

〈8〉『すべての不調は口から始まる』江上一郎(歯学博士)著 集英社新書(2020年刊)

 虫歯菌と歯周病菌は相反するらしく、虫歯はないけど歯周病で悩まされるということが起こるようです。

 両方の菌に対抗しなければならないのでしょう。ドライバーはいいけど、アイアンはだめだったという関係に似ているような気がします。実際は、逆のほうが多いかもしれません。

 ゴルフでも歯をいしばって頑張る、という場面があります。すると歯が丈夫でないといけません。口を半開きにすると力まない、ということを聞いたことがあります。

 よく噛んで、唾液を出し、料理の真髄まで食べ尽くす。これが健康の元であり、結果、ゴルフの上達につながるという推論です。

〈9〉『誰もいわなかったゴルフの基本 本当に必要なことはたったコレだけ!!』中井 学 著 河出書房新書(2015年刊)

 

 《クラブを両手で持ち、体を回すから腕やクラブが「振られる」というのがスイングの真相です。それを勘違いして、体を止めて腕だけを振ろうとするから、結果的にインパクトでクラブヘッドが正しく戻ってこないのです。(18頁)》

 その対策として、手と胴体との関係を比喩的に、“でんでん太鼓”とすることがあります。この本では、“像の鼻”でした。

 このことで、自由に動く腕や手が、確率の低いスイングの原因であることを教えています。

 また、「ゴルフスイングに両手を肩より高く上げる動きはない」では、《トップオブスイングやフィニッシュで両手が肩よりも高く見えるのは、アドレスで前傾姿勢をつくるからで、実際には両腕は水平の高さにしか振っていないのです。(83頁)》

 “実感と実際の違い”を理解しなければ、ゴルフの上達はままならないことが分かります。

〈10〉『心配事の9割は起こらない』枡野俊明(ますの・しゅんみょう)著 三笠書房(2019年刊)

 《余計な不安や悩みを抱え込まないように、他人の価値観に振り回されないように、無駄なものをそぎ落として、限りなくシンプルに生きる。(3頁)》   

 まるでゴルファーに向けた訓話のようです。

 禅僧である著者は、不安や悩み、迷いの質問を多く受けるようです。

 《そのほとんどが、実は「妄想」や「思い込み」、「勘違い」や「取り越し苦労」にすぎない、ということです。「実体がない」といってもいいでしょう。(3頁)》

 仏法の世界感は宇宙の定理と連結することがあります。人間が宇宙という大自然の一部である。そして、日常生活から一時の解放感を求めてゴルフに興じます。

 そこでフラストレーションがたまっては本末転倒です。

 ゴルフの最中に言い聞かせるのは、『心配事の9割は起こらない』ということです。

〈11〉『世界標準のスイングが身につく 科学的ゴルフ上達法』板橋繁 著 講談社ブルーバックス(2019年刊)

 プロゴルファーをめざした著者は、腰を痛めコーチになるべくオーストラリアの新設ゴルフスクールに赴く。そこでスイングを披露すると、「ベリーヘビースイング。スイングがガチガチじゃないか」と指摘された。 

 しかし、彼のスイングは、「軸をつくって身体を止め、身体の正面で腕をビュンと振ってヘッドを走らせる──。」当時は、プロでもこうしていた。

 しかし、認められずゴルフを教えることを禁じられたそうです。

 彼らが教えていたのは、〝まったく別物〟で、日本流の正反対だった。それは、しなやかで、柔らかくて、身体に負担のかからないスイングだった。

 「ゴルフを教えてもいいぞ」と言われたのは10年目のこと。そして、現在の「ノーリストターン」「ゼロトップ」「Xファクター」や「Y字バウンド」が開発されたのです。

 「右手は常に左手の下」という理論は、トップでは右手が上になるのでは?などありますが、「インパクトから、手を返さずに、体を回転させる」ことは、理論的に納得できるものです。

 それで、引っ掛けず、スムーズに振れると説かれます。「GIメソッド」として“超人気レッスン”となっているようです。

〈12〉『疲れないカラダ大図鑑』夏嶋隆 著 株式会社アスコム(2021年初版)

 ヨーロッパの学校では、歩き方を授業で教えているという記事を見たことがあります。

 大人になれば、歩き方の大事さは認識するでしょうが、幼少の頃から家庭で実践したいものです。

 この本では、体のちょっとした動きを変えれば、日常の動きに快適感が増すとしています。

 《「疲れないカラダ」をつくるための100の方法(14頁)》では、《「疲れる姿勢・動作」を、「疲れない姿勢・動作」に変えることで、肉体的疲労を改善し、「疲れない体」を手に入れるための方法を厳選し、紹介したものです。(16頁)》

 日常的な動きを良くしながら、“つられてゴルフもよくなる”。こんな安上がりで実質効果の高いことはありません。

〈13〉『ドライバーの飛ばし方がわかる本』吉田 洋一郎 著 実業之日本社 (ワッグルゴルフブック)(2019年刊)

 「地面反力」という言葉が難解さを感じますが、地面を踏み込み、その後に力を抜くような意味あいです。

 日常的に使っていることですから、これを意識してスイングに取り組むといいのです。

 一般に飛距離が落ちると何となく気力も落ちて、ゴルフから離れてしまうことがあるようです。

 《「地面反力」、つまり「外力」を利用したスイングであれば、体への負担は軽減され、ケガのリスクを最小限に抑えつつ、一定の飛距離を長く維持することが可能です。それどころか、「地面反力」の使い方が洗練されていけば、年齢を重ねてもなお、飛距離を伸ばすことができます。(173頁)》

 この本では、世界的プロのスイング分析に加え、著名レッスンプロを多数紹介しています。

〈14〉『運を味方にする「偶然」の科学』 バーバラ・ブラッチュリー 著 栗木さつき 訳 東洋経済新報社(2022年刊)

「運も実力のうちだ!」と思える人は、“運の強い人”に違いありません。

 ゴルフでは、常に選択が迫られています。残り200ヤードをフェアウェーウッドで狙うか、150と50ヤードの安全策をとるか。 

 周辺状況やその日の調子から判断するのですが、刻んでOBになれば、アンラッキー(不運)と思うかもしれません。

 一方、狙ってOBなら「ナイストライ}とおだてられますが「アンラッキー」は同じです。

 しかし、気分が違うので、ついつい無謀なチャレンジをしてしまうことがあります。

 《「自分は幸運だ」と思っている人は、予測できない、偶然起こった問題に直面し、その問題を克服しなければならない場合でも「自分は幸運なのだから」と信じることで、希望と自身をもっているらしい。(167頁)》

 これがプラス思考の原点なのかもしれません。「自分はついてる」と唱えると、そうなってくるといわれます。

 現実に、頭のなかでこういった言葉を唱えたり、念じると効果があるように感じるから不思議です。

〈15〉『勝負論』青木功 著 新潮新書(2015年刊)

 アマチュアの世界では、そこにシングルプレーヤーがいると、別次元を感じるものです。  

 まさに飛んで曲がらない。そして、ボールを打った音が違います

 そういう凄い人たちと勝負しようとは思いません。まぐれが続いても絶対に勝てないからです。

 一方、プロの世界ではどうなのか。より強い者と勝負したい。だから海外試合に出るという流れがあるのでしょう。

 しかし、世界に出た女子プロに比べ、男子は少ないといえるでしょう。女性は環境に慣れやすいのでしょうか。

 そんななか、青木プロは、何にでも興味を抱きます。当時はスポーツ交流が禁止されていた南アフリカの試合参加のため、外務大臣と談判して認められるという活発さです。

 1973年にスペインでの試合の折に闘牛を見て、赤い布に触発された。「ここ!」っていう最終日には赤いウェアを着るようになったそうです。

 タイトルどおり“勝負してきたプロ”の「勝負論」は、アマチュアに度胸のよさをもたらしてくれそうです。

〈16〉『ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義』(2022年刊)

 欧米社会では、ユーモアを企業発展の武器として有効活用していることが分かります。

 最終章の「ユーモアは人生の秘密兵器」を「ユーモアはゴルフの秘密兵器」と読み代えてみます。

 《大胆さ 「もっと大胆に生きればよかった」恐怖心は、人生を左右する大胆な選択をする妨げとなる。だから、もっと大胆な生き方をしたいと思ったら、まずは恐怖心に向き合わなければならない。それを可能にするのがユーモアだ。(350ー351頁)》

 ゴルフボールが池に飛び込んだら「お魚さん、ごめんね、脅かして」などと言えるようにしておくといいのかもしれません。

 《私たちは、ユーモアによって勇敢で恐れしらずになれるのではなく、変化や可能性に対して心が開かれるのだ。ユーモアの効果で大胆になれば大きなリスクを取れるし、挫折しても早く立ち直ることができる。たとえ転んでも、ほこりを払って立ち上がり、もう一度挑戦するために。(351頁)》

〈17〉『好転力 心をシンプルにすればうまくいく』服部道子 著  世界文化ブックス(2021年刊)

 一人のゴルファーの歴史が“楽しい驚き”で事例集のようにまとまっています。

 「ちょっとした工夫で印象は変わる」では、名前を覚える効用を強調しています。

 《ゴルフ界で帝王と呼ばれるジャック・ニクラスさんは、取材に訪れる記者たちを常にファーストネームで呼びます。(中略)そうやって記者たちとの距離を縮め、お互いに信頼関係を醸成していったのです。(163頁)》

 メディアは、いいことよりは、ワルイことを書くものです。それでも日頃からの会話で信頼関係があれば、高いレベルの話しが理解され、広い読者層に読まれるようになるでしょう。

 《日本では、女子プロゴルファーのイ・ボミさんが好例です。日本と韓国という国境を越えて、あれだけ深く愛されるには理由があります。女性の私でもファンになってしまうくらい、対応が温かいのです。しっかり目を見て心を込めながら、「お元気でしたか、服部さん?今日は寒くないですか?」と必ず名前を呼んで話し掛けてくれます。(164頁)》

〈18〉『競争の科学 賢く戦い、結果を出す』ポー・ブロンソン&アシュリー・メリーマン 著 |児島 修 訳  実務教育出版(2014年刊)

 ポジティブ思考を否定するかのような理論展開は「なるほど」と思わせてくれます。

 そして、競争の効果をふんだんに取りあげています。

 《私たちはよく、敗者に「勝つか負けるかより、いかにプレーしたかが大切だ」という、使い古された慰めの言葉をかける(だが、勝者に同じ言葉を向けることはめったにない)。だが、この言葉は敗者に与える残念賞のようなものではない。それは、自分自身と自らのプレーについてしっかりと振り返り、次にさらに良いプレーするための方法を知ることの大切さを訴えているのである。(341頁)》

 「自らのプレーをしっかりと振り返り」とは、ゴルフでの教訓となり得ます。

 《人は経験を通じて、勝利と敗北はどちらも、成長や改善という長期的な目標のための一時的な結果にすぎないことを学ぶ。(342頁)》***

文/柴山茂伸(書斎のゴルフ編集部スタッフ)

新連載「ゴルフは本でうまくなるか」(隔週)

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