百打一郎と申します! 第1ステージ第3回

『練習』

 部長が私に渡した『10カ条』によって、私は部長を正治さんと呼ぶことになりました。

 私は正治さんとフロントに向かい自動販売機で5千円のカードを購入しました。正治さんは3階の打席の申し込み用紙に名前を書き、続き2面の打席番号を申し込みました。私は不思議に思い、正治さんに聞きました。「3階の打席は空いているのに、どうして待っている人がいるのですか?」

 正治さんが教えてくれます。「海外や田舎と違って、都会の練習場は土地が狭いこともあって、2階、3階建てとなっている。3階は初心者やビギナー用と言われていて、待っている人は1階の打席で打ちたいのだね。それがステータスだと考えているんだよ」

 それで1階打席が開くのを待っているのかと腑に落ちました。部長はさらに説明してくれます。「ゴルフコースは平坦な場所よりは、打ち上げや打ち下ろしといった、高低差があることが多い。そうすると、どこにボールを運んでいくかという距離感が大切になって来る。2階や3階の打席からはどこにボールが落ちたかを確認しやすい。3階は一番よくボールの行方が見えるからそこで打つことを勧めるのです」

 話をしている間にエレベーターが3階に着きました。

 私はカードを機械に挿入して100球をカゴに入れました。打席に着くと、正治さんから次のように言われました。

 「いきなり球を打つと筋肉を痛めてしまう。ゆっくりストレッチをして筋肉を伸ばす。プロは試合の3、4時間前に起きて1時間ほどストレッチをし、ベストなコンディションを作って試合に臨む。アマチュアはコースへぎりぎりに着いて、素振りを2、3回するだけでスタートする。時間をかけてコンディションを作ることが大切なのです」

 私はプロになるわけではないのだから、早くボールを打ちたかったのですが、正治さんと準備体操を行いました。「初心者は空振りや、ボールの手前を打つダフリやボールの上っ面を打つトップが出る。つまり、まともに当たらないわけだ。でもそれは当たり前のこと。最初から小さなボールを打つことなど所詮無理なのです」そこでまずは素振り。ボールを打たしてはくれない。クラブは言われるままに8番アイアンを使います。

 「しっかりとマットを叩く。空を切る素振りは意味がない。ボールがマットの上にあるつもりでクラブを振るのです」

 正治さんの言葉に従って、ドーンドーンとマットを叩く。

 「そうそう、その調子。でも力は入れない。クラブを上から自然に落とす感覚でクラブを振るのです」

ドーンドーン。

 「そうそう、重力を使う。自分からクラブを振らない。クラブが重力で落ちるに任せて振るのだ」

ドーンドーン。

 「いい感じになってきた。ではボールを打ちましょう」

 自分では何がいいのかまったくわかりませんでしたが、ようやくボールが打てるのです。

 最初の打球は、というと、何とスカッと打ててしまいました。

「うわー、気持ちいい!」思わず、顔がほころびます。正治さんも笑っています。

 2球目を打つ。これも結構上手く打てました。

 私は正治さんの顔を見て言いました。

「部長のお陰で上手く打てました」

「部長でなく、正治さんだ」

 部長が笑って言います。そうだった、部長でなく正治さんだ。何だかとても楽しい。

 しかし、そのうち当たらなくなってきました。トップやダフリが出てきたのです。

 「もっと上手く打とう、遠くに飛ばそうとするからです。そんなことは考えない。重力を使ってクラブを落とすだけです」

 すると、また上手く打てるようになりました。しかし、右や左に飛び出してしまう。正治さんが言います。

 「これを私はポップコーンショットと呼んでいます、ボールがあっちこっち飛び散って、何処にボールが飛ぶか、自分ではコントロール出来ない状況です」

 確かにポップコーンだ。

 「でもそれも仕方がない、初心者なのだから。今はどこに飛んでもいい。重力を使ってクラブを振り、クラブにボールが当たればそれでいい。上手く当たったときの体の感覚を思えておくことです」

 私は言われるままに、ボールを打っていった。上手く打てたときの感覚を忘れないように、1球1球丁寧に、素振りをしてからに打ちました。

 そのうちすっかり自分の世界に入ってしまい、正治さんがそばにいることも忘れていたくらいです。

 2時間後、籠の中の100球を打ち終えました。結構疲れました。

 「ははは。練習はたったひとカゴ、100球でも十分なのです。大事なことは現実の自分を知り、今やるべきことを1つ1つ学んで行くこと。それが大切なのです」

 最後に「レッスン受ける心得10カ条」の再確認がありました。

 正治さんの教えでとにかくボールを上手く打つこともでき、とても有意義な練習となりました。ゴルフがとても愉しいものに思えたことが大収穫でした。

文:久富章嗣(ゴルフ工学研究所所長)編集:島田一郎(書斎のゴルフSTAFF)

PAGE TOP