YNGゴルフ研究会 書斎のゴルフSpirits その3

ゴルフの練習で大切にしたいもの その3 アドレス(ポスチャー)パート2

 世間では、飛距離が伸びればスコアがよくなると思っている人がたくさんいます。ところが、たいしてボールは飛ばないのにスコアがいいという上級者はおおぜいいます。ボールは飛ばなくても狙ったところに運ぶことができれば、ナイスショットになりいいスコアになります。逆にボールが飛んでも、狙ったところに運ぶことができなければいいスコアになりません。ボールを狙ったところに運ぶためには、そのための準備(セットアップ)が最も重要です。ゴルフの聖書「モダン・ゴルフ Five Lesons The Modern Fundamentals of Golf」 ベン・ホーガンの前半はグリップとスタンス・姿勢について解説しています。

 練習場では、多くの人が飛距離を伸ばすために一生懸命スウィングの練習をやっています。一生懸命スウィングの練習をしてもシングルプレーヤーになれるのはほんの一握りのゴルファーだけです。練習しても上達できないのは練習の中身に問題があるのかもしれません。

 「ゴルファーの練習のやりかたには4種類ある。すなわちむやみやたらと練習するもの、賢明な練習をするもの、おろかな練習をするもの、全然練習をしないものである。」バーナード・ダーウィン

 練習場ではバーナード・ダーウィンがいう“むやみやたらと練習するもの”が多いようです。打席につくとすぐにクラブを持って球を打ち始める人、打ち放題で次から次へと球を打つ人が目立ちます。

 中部 銀次郎は「ゴルフはアドレスがすべて」とアドバイスしています。

 ナイスショットはスムースなスウィングから生まれ、スムースなスウィングは適正なグリップとセットアップ(スタンス・アドレス(ポスチャー)・ボールの位置)から生まれます。

 アドレスとは文字通りボールの届け先です。アドレスが間違っていたら、どんなショットを打ってもナイスショットとは言えません。

 アドレスはショットの生命線である方向性のキーポイントです。

 「飛距離は捨てても9割が残る、方向性を捨てたら何も残らない」ナサニエル・クロスビーの言葉に従えば、練習すべきは、スウィングよりもセットアップとりわけアドレスではないでしょうか。

アドレスの頭の位置と背骨の傾きに要注意

 20世紀最高のプレーヤー ジャック・ニクラスの先生ジャック・グラウトは「頭はスイングのバランスの中心である。もしそれが動けば、あなたのバランスも、スイングの弧も、体の運動も、この姿勢でスウィングすると、そしてタイミングまで変えてしまうのだ。」と語っています。グラウト先生は、ニクラスの髪の毛をつかんでフルスウィングの練習をやっていました。

 練習場で前方の打席のゴルファーを観察すると、ドライバーで頭がボールの真上にあり、背骨が左に傾いているゴルファーが目につきます。頭がボールの右にあり、背骨がまっすぐあるいは右に傾いている人はほとんど見当たりません。頭がボールの右にあり、背骨が右に傾いている人はスムースで力強いショットを打っています。練習場ではごくわずかしかいない人ですが、是非探して観察してみてください。

 アドレスで前傾姿勢をとってグリップすると、右手を下にグリップするために、右肩は下がります。そのとき、頭はボールの右にあり、背骨は右に傾くことが合理的なアドレスです。この合理的なアドレスは実は不自然な構えなので、繰り返し練習してはじめて習得することができます。

背中からアドレスをチェックする

 アドレスを他の人に背中からチェックしてもらう、写真を撮ってもらうとアドレスが適正かどうかよく分かります。正面から見るよりはっきり分かります。

 初心者のときに、ドライバーでは、〇右脚に荷重する〇右肩は左肩より下げて構える 〇ボールは横から見ると教わったはずです。ところが初心者・アベレージゴルファーの多くは、この基本ができずに、左脚荷重でボールを真上から見るように構えています。これは上級者でもよく見られることです。

 以前シングルクラス十数人のドライバーのアドレスの写真を前面・背中・飛球線後方から撮って分析しました。背中からの写真を見ると、初心者のときにアドバイスされたとおりのアドレス(頭がボールの右、背骨が右に傾く)になっている人は、わずか数人でしかありませんでした。

 アベレージゴルファーの方からアドバイスを求められるときは、後ろの打席から背中からの写真を撮って、見てもらうと、よく分かってもらえます。

 アドレスで右脚荷重、頭をボールの後ろ、右肩を下げるようにアドバイスすると、球が上がらない、スライス・ヒッカケが出るといった症状が簡単に改善して、スウィングが想像以上にスムース(軽く)なり、適度な球の高さになって、方向性も驚くほどよくなります。何よりもスウィングがスムースになることで飛距離が伸びます。この感覚を少しつかむことができれば、苦手なフェアウェイウッド、UT、長いアイアンまで良い感じにスウィングできます。初心者のときはプロのレッスンを受けるのが当たり前ですが、ある程度短いアイアンが打てるようになると、レッスンを受けなくなるからではないでしょうか。

 これは前号のスタンスでもお知らせしたことと共通しています。7番アイアンがそこそこ打てるようになると、レッスンを受けなくなり、それ以上の長いクラブを自分一人で練習する人が多いためではないでしょうか。だからすべてのクラブを7番アイアンのスタンス、グリップ、アドレスでスウィングも7番アイアンのスウィングをしていると言ってもいいのではないでしょうか。そのために6番アイアン以上のクラブになると途端にミスを連発しているようです。

 ブライソン・デ・シャンボーのワンレングスアイアンはそういうゴルファーにはうってつけのアイアンと言えます。ウッド・UTを除けば、すべてのクラブで同じグリップ、セットアップでスウィングできるのですから理にかなっています。ミズノからは同じ長さのフェアウェイウッドも販売されています。

 本当に上達を望むなら、レベルアップすればするほどプロのアドバイスが必要になります。レベルが上がれば上がるほど、スタンス・グリップ・セットアップはセンチ・ミリ単位で精密さが求められます。それは、アマチュアでは判断できません。片山晋呉はさまざまな練習器具を使ってグリップ・セットアップはもちろんスウィングのチェックも行っています。

 先日も練習場の後ろの打席で、2人の方がアドバイスしあっていました。「右脚をける」「もっと速くクラブヘッドを戻す」「フォローを大きくとる」というようなアドバイスをしあっていました。少し目を向けると、2人ともにアドレスでは頭がほぼボールの真上です。2人ともにドライバーでは球は低く左右に曲がっていました。ショートアイアンのアドレスでドライバーを打とうとしているために望むようなショットは打てません。このアドレスで高い球を打とうとすれば、右手ですくい打ちするしかありません。

 アマチュアがインパクトの時に左手が背屈(手の甲側に手首を折る)右手が掌屈(右手が手のひら側に折れる)のはこれが原因です。

 アイアンでもハンドファーストにしようと手と腕でかたちをつくっている人がいますが、アドレスと下半身主導のスウィングに変えない限りハンドファーストのインパクトにはなりません。

 機会があれば背中からアドレスの写真を撮ってもらい、よく観察することをお勧めします。9番アイアンとドライバーのアドレス(スタンス・ボールの位置)が同じということがあるかもしれません。

ひざ・足首はスムースに動く位置を見つける

 下半身と体幹の捻転を行おうとするとき、ひざと足首は重要な役割を果たします。

 直立して片足首を回すとひざが回り自然にからだが回ります。少し足を広げて骨盤から前傾すればおおむねスウィングは完成です。バックスウィングでは右足首、ダウンスウィングは左足首を回すようにすると自然にスムースな下半身主導のスウィングになります。手と腕でクラブを振ろうとするとひざも足首も固定してしまいます。スウィングは下半身主導で行いますが、腰を回そうとするとスウェイする場合があります。そんなときは足首から始動すると余計な動きがなくなります。

 足首・ひざがスムースに動くためには、アドレスしたときの足首とひざの曲げ方がポイントになります。初心者の人に前傾姿勢を作ってもらうと、ひざが伸びて足首が固まってしまうことがあります。ひざを曲げてアドレスするようにアドバイスするとひざを足指より前に突き出して、足首が曲がりすぎて腰が落ちてしまうことがあります。ひざと足首は曲げ過ぎず、伸びすぎない適度な曲がりが大切です。

 順番としては、両脚を伸ばして、骨盤から前傾します。このときハムストリング(脚の裏側)が伸びた感じになります。伸びたハムストリングを緩めて適度な緊張感がある感じがひざと足首の適正な角度ではないでしょうか。ベン・ホーガンはその状態をセミシッティングポジションとよんでいます。セミシッティングはひざが足の前に出ず、すこしだけ曲がった状態です。スウィングでは、ハムストリングの伸縮が大きな役割を果たします。その動きがスムースにできるひざと足首を意識して練習するとスウィングの意識が大きく変わる可能性があります。

 アドレス・スウィングの感覚は主に目・手と足裏からの感覚がたよりです。

 頭の位置はスタンスが変われば変わります。パッティングではボールの真上に目がありますが、ドライバーでは左鎖骨の長さだけ右寄りになります。つまり頭はボールよりかなり右にあることになります。

 下半身主導のスウィングは足裏の感覚に頼っています。アドレスしたとき、両足の土踏まずに荷重されたものが、バックスウィングでは右足母指球から右足かかとに荷重され、ダウンスウィングでは左足母指球から左足かかとに荷重が移動すると言われます。

 アドレスしたときの頭の位置(背骨の傾き)とひざ・足首の曲がりを練習するときにチェックしたいものです。

文・柳生田幹久

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