
『ゴルフ【苦手】を【得意】に変えるパッティング』 森 守洋 著 池田書店(2014年刊)
《オーバースピンをかける意識はマイナス(84頁)》や《軌道は曲線を描き、フェースが開閉して見えるのが正解(91頁)》など、思い込みのゴルフ理論がくつがえされるのは〝爽快な驚き〟です。
サブタイトルが《「縦カン」と「インパクト」が分かれば、パットは簡単》とあり、アマチュアは様々な<勘違いでスコアを崩している>と指摘します。
《パターのライ角に合わせて構えるのが基本:アドレスでもっとも重要なのは、パターのライ角どおりに構えることです。ライ角とはパターヘッドを地面にソールしたときのシャフトの傾斜角で、ライ角に合わせて構えればフェースをスクエアにセットしやすく、ストローク中もライ角をキープするイメージで振れれば、フェースの向きが変わりにくくなるというメリットがあります。(24頁)》
<ライ角を保つ>と考えたことがないので、この本をちゃんと読むことにします。
《ストロークの「真っ直ぐ」を勘違いしない:「パットは振り子のイメージでストロークする」。これもよく聞くアドバイスです。まさに的を射た表現と思いきや、これほど多くのゴルファーを惑わせる表現は他にないでしょう。ボールを狙った方向に転がしたいから、パターを真っ直ぐに振ろうとします。「真っ直ぐ」自体はいいのですが、勘違いしてしまうととんでもないことになります。ほとんどのゴルファーはパターのフェース面をスクエアに保とうとして、パターヘッドを直線的に動かそうとします。(28頁)》
<スクエアに保とうとして、パターヘッドを直線的に動かす>が正しいと信じ、これに取り組んできました。
《自分から見て「ヘッドを真っ直ぐ」と思い込むわけです。するとストロークの支点がグリップエンド、つまり手元に近い場所となるため、リストをこねてフォロースルーでヘッドを跳ね上げるような動きとなります。これこそ振り子の間違ったイメージです。(28頁)》
「振り子」のようにパターを振るというのは、物理的な気がして説得力がありました。しかし、微調整が必要なようです。
《正確なストローク軌道は軽い曲線を描きます。簡単に言えばインサイドインですが、この軌道に沿ってフェースをスクエアに保つのが本当の真っ直ぐです。軽いアウトサイドイン、またはインサイドインの軌道で振る人も中にはいますが、インパクトでフェースがスクエアに戻りさえすれば、ボールは狙った方向に転がってくれます。パットの上手い人はフォロースルーでヘッドが跳ね上がらず、低い位置にキープしています。ハンドファーストにインパクトし、左手の甲を上に向けずに手を低く振り抜くのです。(29頁)》
本号〈36〉で取り上げた『無意識のパッティング』には、次の説明がありました。《ストローク中は、(中略)左手の甲を低く保ち、目標方向に動かすことだけだ。インパクト後もパターが地面に対して低く保たれている点に注目してほしい》
《真っ直ぐ振ろうとしてフェースをどこまでもストレートに引くと、正しいストローク軌道に対してフェースがかぶることになります。そしてインパクト後もフェースをどこまでも真っ直ぐ出すと今度はフェースが開きます。フェースが「かぶる→開く」という動きがインパクトでのフェースの向きの再現を妨げてしまい、カップイン率が低下するのです。(29頁)》
短い距離では真っ直ぐ引くパッティングでもよさそうですが、ロングパットでは違和感があり、その理由が分かりました。
《衝撃!タイガーはどんな距離でもストローク幅が変わらない!?:パットのレッスン書などには「振り幅で距離感をコントロールする」とよく書かれていますが、タイガーに限らず、どんなプロでも振り幅で距離を合わせているわけではありません。振り幅が変わらないなら何が変わるのかというと「スピード」です。力の出し具合をコントロールしたいと思ったら、誰でも本能的にスピードが変わります。(74頁)》
実際はタイガーでも振り幅が変わるようですが、1メートルと5メートルのパットの振り幅はほぼ同じだと説明します。その要点は《ボールの転がりを目で追いながら、前傾姿勢はアドレスのまま変わらず、パターを振り抜いた位置で停止しています。(100頁)》
《振り幅で加減しようとするとインパクトが緩む:こうした方法が間違っているとはいいませんが、自分の感覚を無視してしまうことになり、かえって距離感が合いにくいのは事実です。それに振り幅で距離感を出そうとすると、インパクトが緩んでしまいがちです。テークバックが大きすぎて、インパクトでヘッドを減速したり力を弱めたりしてインパクトが緩むと、フェースの向きが変わりやすくなります。(中略)逆にテークバックが小さすぎてダウンスイングに入った途端に急いでしまうパターンもあります。この場合もフェースの管理が難しくなり、方向性と距離感の両面でミスが発生しやすくなります。(75頁)》
大きく振ってインパクトで緩めるパッティングはよく見かけます。それが身に付いてよく入る人もいます。
《パットもハンドファーストに打つのがいい:アイアンやアプローチでダフリを徹底防止するなら、クラブを構えたときに自分から見て軽い「く」の字に折れている右手首の角度をインパクトで再現するのがポイントになりますが、それをパットに当てはめて考えてください。インパクトで右手首が逆「く」の字にならず、「く」の字をキープしたままでフォロースルーへと出していけば、ヘッドが自然に低い位置へ振り抜かれます。右手の甲が下を向かないようにして、パターヘッドのトゥ側が少し回転しながら低く出ていくのが正しい動きです。(82頁)》
<右手首を「く」の字に保ち、右手甲を下に向けない>パッティングを肝に銘じることにします。
《テークバックよりフォロースルーが小さいのが正解:パットの名手の多くはアドレスよりインパクトのほうが両手は先に出ていますし、ショットと同じようにしっかりインパクトし、ボールを打ち抜いているのです。つまりパットもハンドファーストに打つというわけです。インパクトで右手首が伸びるとアイアンやアプローチ同様、ハンドレートになりますから、ボールをしっかりとらえられません。感覚的にはショットのようにダウンブローにヒットし、ボールをつかまえるのがパットの正しいイメージです。(83頁)》
ショットもパットもクラブを振る原理は同じなので、ハンドファーストに利が多いというのは理解できます。<しっかりインパクトし、ボールを打ち抜く>と、転がり過ぎてしまいそうなので、練習で試行錯誤するしかありません。
《ストロ―クの振り幅を語るとき、「テークバックとフォロースルーの大きさは左右対称とよくいいますが、これに惑わされてはいけません。振り幅を頭で考えること自体がおかしいですし、テークバックと同じ大きさだけフォロースルーを出そうとするから、ヘッドを跳ね上げてしまうことになるのです。(中略)ボールがなければインパクトの衝撃とか抵抗がないから、ストロークは自然に左右対称形となるでしょう。でも、ボールをヒットする衝撃や抵抗によってヘッドの運動エネルギーが消耗されて、インパクト後の稼動が制限されるのです。テークバックの大きさを2とするなら、フォロースルーは1でいいと思います。(84頁)》
これを「パットの2対1理論」として頭に留めておきます。この実現には、パターヘッドがボールに当たった後は、ヘッドに手の力を加えないと理解します。
《オーバースピンをかける意識はマイナス:「ボールにオーバースピンをかけるのがいい」という人もいます。最初からボールに順回転を加えるように打つことで、球足が長くなるという考え方です。パットの常識のようでいて、これもまた誤解を生みやすい表現です。なぜならオーバースピンをかけようとすると、ボールの上半分をヒットするイメージを生み、インパクトで右手首が手のひら側に折れて、ヘッドが高く跳ね上がる結果となるからです。(84頁)》
ボールにオーバースピン=順回転をかけるのは、原理原則と考えてきました。
《パターにも4度前後のロフト角があって、イメージ的にはインパクトで0~1度くらいのロフト角にしてボールを打つ感覚です。オーバースピンを打つ感覚を持つとロフト角が10度近くか、それ以上になり、かえってボールがつかまらず、転がりが安定しなくなります。インパクトの衝撃でボールがスッと真っ直ぐ出て、芝の摩擦によってスピードが減速されてから縦に回転していくのが正しい転がりです。(85頁)》
パターにわずかなロフト角があるのは知っていましたが、このように具体的な説明があると、今後のパター操作がよくなる気がします。
《中には5度くらいのロフト角が多めのパターもあり、長い距離を打つときにはボールが少し空中を飛んでいく時間が見られます。超低空飛行のキャリーが生まれ、この場合はボールがグリーンに着地してから真っ直ぐ転がります。逆にインパクトがハンドファーストになりすぎて、マイナスのロフト角で打つとボールが跳ね上がってしまいますから、軽くハンドファーストに打つイメージを持つことです。(85頁)》
パターでボールがわずかでも〝飛び上がるとミスショット〟と思っていました。<超低空飛行のキャリー>がオーケーなら、パッティングの悩みが一つ減った気がします。
《インパクトで止める練習でヒット感覚を覚える:パットの練習として、アドレスの姿勢をつくったらテークバックを取らずに、最初からフォロースルー側にヘッドを出して転がすという方法があります。(中略)パットもボールをしっかり打ち抜く「ヒット感覚」が大事です。これを体感するにはインパクトで止める練習を勧めます。テークバックして、ヘッドの衝突のエネルギーをボールに伝わったところでヘッドを静止させるのです。インパクトでヘッドを止めようと思っても、実際には惰力によってフォロースルーでヘッドが少し出て行きます。この練習で適正のフォローが体感できるはずです。(180頁)》
これでパッティングの話しが3回目です。ゴルフスイングの基本は大差ないのでしょうが、パッティングは解釈と表現が様々です。こういったバリエーションから人のパッティングを分析し、自分の流儀を探す興味は尽きません。***
文/柴山茂伸(書斎のゴルフ編集部スタッフ)
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