『再現性を高め、カップインの確率を上げる 重心パッティングのススメ』 大本研太郎 著 マイナビ(2015年刊)
パターレッスン専用スタジオ「パットラボ」を開設した著者が、解析機器を使ってパッティングを分析し、対応策を示してくれます。
《パッティングでは安定したストロークを作ることが大切になりますが、再現性を高める上で重要なのが重心位置なのです。バランス良く直立するだけでも非常に難しいものですが、重心の位置が一定になるとバランスを取るために同じ筋肉で始動し、同じ筋肉を使いストロークするようになります。これが高い再現性を実現するのです。手の動きや、クラブの動きを説明するレッスンを多く見かけますが、これは修正ではなく調整。体幹の意識も、バランスが取れる状態でストロークしないと逆効果になってしまいます。(3頁)》
パッティングでの〝重心位置〟とは初耳です。それが再現性の高いストロークのカギだといいます。
《「パットに型なし」の意味とは~大切なのはショットとパットを一致させること~:先に結論から言ってしまうと、私の考えはパッティングに理想的なかたちはなく、自由に打っていいという立場です。ただし、再現性が高く、いつも同じように打てることが条件です。極端な話をすれば、つねに同じ場所でヒットするなら、パターの芯でボールを打たなくても構わないのです。(10頁)》
ゴルフでは、自己流の人が多いでしょうから、条件付きとはいえ「それでいいんです」という言葉は頼りになります。
《私のレッスンでは、まずパッティングとアプローチを一致させるようにします。アプローチで距離感が出やすく、同じように打てる打ち方と、パッティングの動きを近づけます。そして、フルショットのスイングを、アプローチのスイングに近づけます。そうすることで、再現性が飛躍的に高まります。(12頁)》
「パッティング、アプローチ、フルショットが一致する」とは、そうなったらスイングの確実性が増すだろうと思えます。これを意識するだけでも相乗効果がありそうです。
《「ストロークはストレートが正解か? イントゥインが正解か?」という問題は、実は本質的な問題ではなく、自分の振りやすい軌道を見極め、それを受け入れて、そのなかで、自分の思うところに打ち出せて、再現性を高いストロークにしていくのが正解なのです。(20頁)》
〝ゴルフ理論に正解はない〟と考えると、行き詰まることはないでしょうが、「自分にとっての正解探し」には、時間がかかりそうです。
《背筋を伸ばすように構え、肩甲骨が横回転に近い動きになると、ストローク軌道はイントゥインの曲線になり、フェースは開閉するようになります。逆に背筋が猫背気味になり、肩甲骨の動きが縦回転に近くなると、ストロークの軌道はストレートに近くなり、フェースの開閉の度合いも少なくなります。(21頁)》
背筋が伸びた典型的な選手はローリー・マキロイや石川遼、丸くなるのはアニカ・ソレンスタムや宮里藍とのことです。この説明はイメージ的なもので、実際には肩甲骨は回転しません。
《ゴルファーは、自然にアドレスした時に背筋が伸びる人と猫背気味に丸くなる人に分かれます。どちらも極端な姿勢は直したほうが良いですが、出来るだけ、自分の身体の特性に合った構えをして、それに合わせたストロークを目指すことが、再現性の高いパッティング上手への第一歩になります。(21頁)》
自分の姿勢を気にするよりも、自分に合ったパッティングを見つけることが大事だということが分かります。
《ダウンブローがいいのか、アッパーブローがいいのか ~ロフト角とハンドファーストとの兼ね合いで決める~ 打っているプレーヤーはダウンブローのつもりでも、実際のパターの動きはレベルに近い動きをすることが少なくありません。パッティングには、こうしたことが非常に多く、イントゥインでストロークしたつもりでも、実際の軌道はアウトサイドインであったりします。客観的、物理的に見ると、プレーヤーの意識通りにストロークしているわけではないのです。そうした理由から、ダウンブローで打て、アッパーブローで打てとプロやコーチが言っても、鵜呑みに出来ない難しさがあります。(34頁)》
自分のスイングを動画にすると「こんな下手じゃない!」と叫びたくなるぐらい<イメージと現実が離れている>ことがあります。
《そして、私が前出のハイスピードカメラ「クインテック ボールロール」で測定したところ、もっともボールの転がりがいいのは、インパクトでのロフトが0.5度くらいということがわかっています。これは、多くの皆さんが思っているよりも少ない角度ではないかと思います。(36頁)》
〝人間の感覚と実際のすき間〟が数値的に解き明かされる感じです。
《結論から言うと、私自身はダウンブローでのインパクトを強く推奨します。なぜなら市販されているパターのロフト角、2度~4度を考えた時、少しロフトを減らし気味に打ったほうが、理想的な0.5度のインパクトゾーンをつくりやすいからです。(37頁)》
パターはどれも直立に見えますが、微妙な差が転がりに影響を与えると再認識しました。「理想的ロフト角0.5度」を気にして練習することにします。
《距離感は振り幅でつくり、パンチを入れないという誤解 ~自然な距離の感覚を大事にしよう~ パティングが苦手というゴルファーは、ショートパットが入らないケースもありますが、そもそも距離感が良くなく、ファーストパットが寄らないケースが多いようです。(中略)私は距離感で振り幅を出そうとするのは反対です。一番の問題点は、意識が振り幅に向いてしまうことです。バックスイングでパターヘッドの振り幅を目で追ってしまいやすくなります。決まった振り幅で止めなければと思うと、ストロークの動きに注意してしまい、テンポが速くなったり、グリップが強くなったりすると、同じ振り幅でも距離が一定しません。(46頁)》
振り幅を気にすると、インパクトで緩めてしまう実感があります。振り過ぎを察知して、緩めてしまうのかもしれません。
《振り幅で距離感を出すときに、失敗してしまうのが、いわゆる「パンチ」が入ってしまうことです。ストロークの「幅」にとらわれてしまって、思わず力感が増して強く打ってしまうミスです。「パンチ」が入るクセのあるゴルファーは、ゆったりしたストロークで、振り幅で距離を合わせれば、「パンチ」が入らないと考えがちです。しかし、これは大きな間違い。「パンチ」が入る理由とは、ストローク中、ダウンスイングが急加速することです。バックスイングが遅い場合も、切り返しからインパクトにかけて、急加速しやすくなります。(49頁)》
小さめのフォローでしっかりとボールをヒットしたほうが「パンチ」が入らないという説明は〝なるほど感〟があります。
《パッティングが上手くない人は、例外なくフォローがルーズ。一方、プロゴルファーならほとんどすべての選手が、フォローでピタッとヘッドが止まっています。「SAMパットラボ」で計測すると、プロや上級者のパッティングでも、結果的にバックスイングよりもフォローのほうが、大きくなる傾向があります。しかし、意識の中ではフォローは小さめのほうがうまくいくはずです。バックスイングよりもダウンスイング以降のほうがヘッドが加速するので、自然とフォローが大きくなりやすいからです。(51頁)》
この練習方法は次のとおりです。
《まずは、目線を近くにしたり、遠くにすることで、目標によって自然と身体が反応するのを感じてみてください。そして、目標を見て、小さなフォローで距離感を出す練習をしてみてください。あなたの感性は、見た距離を身体で表現できるセンサーが備わっています。その感覚を呼び起こして養っていく練習をしてみてください。慣れてくると、面白いようにタッチがあってくるはずです。(51頁)》
「小さなフォローの練習で、面白いようにタッチがあってくる」とは魅力的なことです。早速やってみたくなりました。
《パッティングの距離感は、常にオーバーしてくださいと言うと、多くの方が、ファーストパットが大きくオーバーしてから、返しが入らず3パットする危険を意識します。ファーストパットがバーディ狙いだとなおさらです。バーディチャンスが3パットでボギーになる経験をすると、強目の距離感で打てなくなってしまうのです。また、強めに打ったパットが、クルンとカップを回って、外れてしまうことも失敗のひとつとして、心にダメージを残します。(58頁)》
オーバーして3パットすると、カッコ悪いという意識が先だちます。「もったいない」などと同伴者が言ってくれても、なぐさめになることはありません。
《そんな心配のある人に、私は、年間パッティング数とか生涯パッティング数という概念を用いて説明しています。たしかにオーバーして3パット、強く打ちすぎてカップを舐めて外れてしまうことはあります。しかし、強めに打つことでカップインするケースもまたあるわけです。仮に3パットしようが、カップを蹴られようが、年間を通してのパッティング成績は、強めの距離感で打ったほうが、良くなるはずなのです。(58ー59頁)》
パットの結果を年間で考えると「失敗を恐れず、強めのタッチで狙う」優位性が分かった気になります。
《もちろん、強めといってもノーカンはダメです。オーバーしても50cmから1mくらいまでに留めるようにしましょう。また、強い下りの傾斜で、どこまで転がるかわからないようなとき、カップの手前でいいので、合わせたくなることもあるはずです。そんな時は、カップまでの距離を打つことに集中し、やみくもにオーバーしてはいけません。(59頁)》
ごく当たり前のことですが、心するものとします。
《ゴルフでは意図にあったプレーをすることが大切です。オーバーするつもりで打って、オーバーすれば、結果にかかわらずOK。カップに合わせるつもりで、オーバーしてしまったら、それは失敗のパットです。「こういうボールを打つ」と決めて、それを思い切って実行する、しかし、結果は気にしないのが、スコアメイクのコツです。(59頁)》
この〝意図した失敗〟は、委縮しがちなゴルフマインドを前向きにしてくれそうです。
《重心をそろえて、安定感のあるアドレスに ~軸のあるストロークの土台をつくろう~ これまでのセオリーは、股関節から骨盤を前傾してアドレスするというものです。このやり方は、重心が前にかかり過ぎます。重心が前にかかると、その分、腕や頭など、別の部分が動き、バランスを取ろうとします。この動きは再現性を高めるには、マイナスに働きます。(72ー76頁)》
この本の勘所が説明されました。次に続きます。
《ポイントは、直立姿勢の段階で頭、肩、腰、膝と、身体の部分を縦に一直線に揃うようにし、そのバランスのとれた状態を活かしながら、アドレスを作ることです。胴体の上に頭がバランス良く乗って、身体の重心がそろった姿勢は、軸が作れている状態。それを維持するために、前傾の前に、頭を出さないように腰を落とす動作を入れているのです。この姿勢は、ゴリラの立ち姿に似ています。(76頁)》
身体の重心を縦に揃えてから傾斜する方法は、重心が縦に揃っているので、軸回転しやすくなるとのことです。そして、この軸回転が、再現性をアップさせ、パフォーマンスを高めるコツで、大きな動きが必要なフルスイングでは、さらに高い効果を発揮するということです。
最新機器を駆使した技術指導で、パットは思い切りやるのが正解と理解できました。この本で、グリーン上で〝攻めるゴルファー〟に変身できそうです。***
文/柴山茂伸(書斎のゴルフ編集部スタッフ)