YNGゴルフ研究会 書斎のゴルフSpirits その5

ゴルフの練習で大切にしたいもの その5 グリップ

 ゴルフレッスンの神様ハーヴィー・ペニックはアマチュアのゴルフスイングに問題があるとすれば、それは9割の確率でグリップかスタンスに問題がある。」と語っています。

 どんなグリップがいいかは人それぞれです。ウィーク、スクウェア、フック、オーバーラッピング、インターロッキング、テンフィンガーなどさまざまです。一般的なレッスンでは、ややフックグリップでオーバーラッピングです。グリップはおおむねクラブの進化とともに変化してきました。グリップはからだの構造と動きそれにクラブのコンビネーションで決まると言えます。

 ボビー・ジョーンズはヒッコリーシャフトでフックグリップ、ベン・ホーガンはスティールシャフトでスクウェアグリップ、そしてカーボンシャフトで大型ヘッドドライバーのタイガー・ウッズはややフック気味のグリップです。ゴルフは道具を使うスポーツです。グリップもクラブの進化とともに進化します。

 現JGTOの選手会長 時松 隆光はテンフィンガーグリップです。丸山 茂樹は時松 隆光にアドバイスを受けてテンフィンガーグリップに変えたと言います。古くはUS LPGAで33勝を挙げ、ゴルフ殿堂入りしているベス・ダニエルもテンフィンガーグリップで有名でした。

 横田 真一はグリップに悩んだ時期があったそうです。アマチュアでナショナルティームに入る実力があり、プロになって周囲からは彼のグリップ“は”くそ握り”と言われていたそうです。彼のグリップは、左手はロングサムのパームグリップでオーバーラッピングでもほとんどテンフィンガーに近いグリップだったといいます。その“くそ握り”と言われたグリップをショートサムの一般的なオーバーラッピングリップに直そうとしたところシード落ちし、手首を痛めて手術まで覚悟したといいます。それを4スタンス理論に従って、元のロングサムのパームグリップに戻したところ再びツアーで優勝することができたといいます。

 アマチュアゴルファーの多くは手打ちです。手打ちの定義はいろいろありますが、簡単に言えば右手(利き手)を使い過ぎる球打ち(スウィングではない)です。

 アマチュアの多くは、オーバーラッピンググリップです。オーバーラッピンググリップはメジャー7勝のハリー・バードンによって生み出され、現在ではもっとも一般的なグリップです。それゆえバードングリップとも言われます。オーバーラッピンググリップは右手を使いづらくするグリップです。ところがアマチュアの多くの人は右手が使いづらいオーバーラッピンググリップで、右手の球打ちです。右手が使いづらいグリップで、右手を使って球を打つというのは理にかなっているでしょうか。

 からだの構造は昔も今も変わりません。それを前提として、スムースなからだの動きでクラブを合理的に使えるグリップが適正なグリップと言えるのではないでしょうか。スムースなからだの動きとは、スウィング中にいろいろな動きを加えないシンプな動きと言えます。スウィング中に意識して手や腕であれこれ操作しないスウィングです。わずか1.5秒のスウィング中にバックスウィングでは手をまっすぐに引くとか、トップは手を高く上げるとか、インパクトで右手を返すとか・・・そんなことを意識することなく何も意識しないでクラブを振ることができればスムースなスウィングになります。だから素振りが最高のスウィングになります。素振りの時のグリップをもう一度確認してみてください。おそらくそのグリップがスタートになります。

グリップにもレベルがある

 初心者はぎこちないグリップになります。アベレージゴルファーになるとグリップも何となく恰好がついてきます。シングルゴルファーになるとさらに恰好がついてきます。グリップにもゴルファーのレベルがあります。たとえシングルゴルファーといえども合理的ではないグリップの人はいます。シングルゴルファーですから、かなりいい感じのスウィングでいい感じのショットでスコアをつくってくるのは当然ですが、グリップを見るとアベレージゴルファーに見えることもあります。初心者・アベレージゴルファーからシングルゴルファーに至る

までどれだけグリップに注意を払って修正しているかが問題です。

 グリップについては先人たちの苦労話に貴重な示唆に富んだはなしがあります。

中部 銀次郎のはなし

 中部 銀次郎は高校生になるころベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」のグリップを見てグリップとスウィングの大改造に取り組んだといいます。

「わたしは大きなショックを受けた。当時としてはベン・ホーガンのスクウェアグリップは見慣れない奇妙なものに見えた。しかし、いかにもホーガンの構えは自然で、それに驚いた。そして、そのグリップをまねしてみた。しかし、そのグリップで構えてみると、とても自分にはボールが打てない気に襲われたにもかかわらず、わたしは『よし、トライしてみよう』と思った。あれだけ自然に見えるものなら、直して悪くなるはずがない。今よりよくなるはずだ。そう信じた。

 結局、わたしはホーガン流のスクウェアグリップを信じ、スウィング全体を改造することになった―――というよりは、スウィングを改造せざるを得なくなったのである。

 グリップ一つでスウィングというものは変わるものだ。いや、もっと正確に言えばグリップがスウィングをつくるのである。“グリップはスウィングの心臓である”とはホーガンの言葉だが、名人・上手のゴルファーがグリップにしつこくこだわるのも、この心臓がしっかりしていなければ、スウィングする間に体のどこも満足に動いてくれないことを知り尽くしているからである。」

陳 清波のはなし

 陳 清波は戦後台湾から日本にゴルフの武者修行に来ました。そのときにスクウェアグリップを覚えたといいます。その後マスターズに6年連続で招待され、しかも予選落ちなしという見事な成績を残しています。

「私はグリップをスクウェアに握っています。ゴルフをはじめたときはフックグリップでした。

 戦前、陳 清水さんや宮本 留吉さん、浅見 緑蔵さん、戸田 藤一郎さんたちが米国のツアーへ出て行って、そこで最先端の握り方であるスクウェアグリップを覚えてきて、日本に広めはじめたときだったのです。

 しかし、スクウェアグリップを身につけるのは大変でした。一気にスクウェアに直すことはできませんから、かぶせて握っていた左手を1日1ミリずつスクウェアにしていく作業を繰り返して、半年かかってどうにかそれらしくなりました。その結果打球に伸びが生まれて飛距離がでるようになったばかりか、方向も安定するようになったのです。」

青木 功のはなし

 青木 功は一日中グリップを手ぬぐいで縛ってグリップの修正をしたといいます。それにつきあった鷹巣 南雄は次のように語っています。

「青木のグリップを直すきっかけは、青木自身がフックボールを直したかったからなんだよ。俺のところに相談に来たときには、すでに優勝も何度かしていたから、『ゴルフが壊れてしまうかもしれないぞ』と言ったん

だけどね。青木自身はフェードにしたいという意味ではなく、単純にフックボールを直したかったんだと思

う。そのときストロングに握っていたから、それをスクェアに戻しただけ。直してもさ、人間っていうのは打つ瞬間、本能的に握りやすい握り方をしてしまうもので、それで手ぬぐいで縛ってやったんだ。手が使えないものだから、昼はおにぎりを食べさせながら打ってたくらい、徹底的に体で覚えこませたんだよね」

 グリップは上達すればするほどチェックしなければいけない重要なポイントです。中部 銀次郎が言う通り、グリップでスウィングまで変わってしまうのです。

 昔は、初めてゴルフを習うと「1週間クラブを握ってグリップの練習をしろ。それが出来てからスウィングを見てやる」などと言われたこともありました。グリップ練習器具を買い込んで日々グリップの練習をした方もいると思います。ところが、ある程度球が打てるようになるとグリップを見直すという意識も薄くなり周囲からのアドバイスもなく、ひたすら飛距離追求のマン振りテクニックだけを追いかけているのではないでしょうか。グリップもレベルに応じて進化(改善)するのは当然のことです。

 初心者にゴルフを教えるときに、一般的にはグリップから教えます。はたしてそれが正しいかどうか疑問があります。グリップに集中すると、目がグリップばかりにいって、頭が下がって肝心の骨盤の前傾姿勢も崩れます。もちろんグリップを覚えなければ、クラブを振ることはできません。しかし、それでは手打ちをアドバイスする可能性すらあります。スウィングは下半身と体幹の捻転運動です。それができてはじめてスウィング(手と腕の球打ちではない)ができます。

 はじめはグリップが不完全でもいいのではないでしょうか。ポイントはクラブを持ってクラブを放り出さずに振れることだけで十分ではないでしょうか。そのとき、決してグリップに過度に力を入れないようにクラブを手(指)でひっかけるようにすることを覚えなければいけません。飛ばす、ナイスショットを打つことはもっと先のはなしになります。

 グリップの神髄は柔らかグリップです。しかし柔らかグリップは、かなり難しいことで、上級者でも柔らかグリップができていない人はおおぜいいます。試しにプロに自分の指をグリップしてもらうとその力感のなさに驚かされます。プロとシングルゴルファーのグリップを比較しても、その柔らかさは格段に違いがあります。グリップは初心者だけが教わるべきものではなく、アベレージゴルファーはもちろん上級者でも常に注意すべきものです。特にゴルフの経験が長いとグリップを修正するためにはかなりの努力を要します。それは中部 銀次郎、陳 清波や青木 功のはなしでもよく分かります。もしすでにいいグリップなら、そのゴルファーはすでにプロレベルと言っても過言ではありません。

いいグリップとは

 いいグリップとは、簡単に言えば、力を入れずに、しかししっかりとクラブが持てるグリップで、スムースにスウィングできる(クラブを振れる)グリップとでもいえるのではないでしょうか。

 いいグリップは、オーバーラッピングでもインターロッキングでもテンフィンガーでもかまいません。またウィークでもスクウェアでもフックでもいいかもしれません。またよく言われるロングサムかショートサムでもどちらでもいいかもしれません。

グリップの究極の目的

〇クラブを放さずにスムースに振れること

〇インパクトでクラブフェイスが飛球線に直角になること

 と考えてみてはどうでしょうか。

そのグリップは

〇クラブを持って、クラブヘッドを胸か腰のあたりまで上げてクラブフェイスが飛球線に直角になっている

〇インパクトのかたちをつくってクラブフェイスが飛球線に直角になっている

ことで分かります。

 そのとき、グリップには力を入れないこと(クラブヘッドを胸か腰のあたりまで持ち上げたときのような力感)がもっとも重要なポイントです。

 一般アマチュアは、クラブヘッドを腰あるいは胸のあたりまで持ち上げてみると、クラブフェイスが被っている人がたくさんいます。それで真っすぐなボールが打てるというのは、スウィングあるいはセットアップが歪んでいることになります。

 ほとんどのアマチュアは力を入れたグリップをしています。これはスウィングやセットアップが歪んでいるために、歪んだスイングプレーンになって、その歪んだスウィングプレーンを手(グリップ)と腕に力を入れて修正しなければいけなくなるために力が入ってしまうのです。グリップに力が入るのは、セットアップの歪みから来ているのかもしれません。

 グリップを修正すると、ミスショットの連続になることがしばしばです。多くの場合は左へのヒッカケ、プッシュ、スライス、ダフリ、トップなどのミスになります。多くの人はスタンス・アドレスが不完全でボールの位置もおかしな位置にあることが関連しているためです。

 よくある例は、スタンスが狭く、頭がボールの真上あたりにあり、背骨が左に傾いて、肩・胸・腰が開いているアドレスになっています。するとアドレス時から右手と右腕に力が入って、飛球線後方から見ると、左手首と左腕が右手首と右腕に隠れて見えなくなります。

 それではショートアイアンのようなダウンブローのスウィングになってしまいます。そのために(6I以上の)長めのアイアン、HB、FW、ドライバーでは球が上がらなくなり、インパクトでは右手でボールをすくい上げる球打ちになってしまいます。ヒッカケ、スライス、ダフリ、トップなどのミスが出て、ボールは左右に曲がってしまいます。これは初心者・アベレージゴルファーに限らず上級者でもよく見られる現象です。

 逆にグリップを柔らくするだけで、スウィングがスムースになり、球の高さも出て方向性が安定することがあります。以前100切りを目指す方にグリップを柔らかくすることだけをアドバイスしたことがあります。何回も同じことをアドバイスした結果、ある日突如としてスムースなスウィングになり安定したナイスショットになったことがあります。

グリップの最重要テーマは柔らかくグリップすることです。柔らかグリップは、スムースなスウィングでクラブの性能を最大限に引き出すことができるからです。

 グリップに力を入れるのはスウィング中に歪んだスイングプレーンを手と腕に力を入れて調整するためです。柔らかいグリップはスウィング中に力を入れることができず、手や腕が余計なことができなくなります。

はじめはミスの連続になることを覚悟して柔らかグリップを試し続けると、自然にスムースなスウィングになって、セットアップの問題点も見えてきます。

 その際、決してフルスウィンせずに、これでもかとハーフスウィングでトライしてみてください。きっと驚くほど力みのとれたいいグリップになり、スムースなスウィングでナイスショットが打てるようになれます。

1日1ミリずつ修正した 陳 清波のグリップ

                       文●柳生田幹久(YNG研究会 書斎のゴルフSTAFF)

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