百打一郎と申します! 第1ステージ第7回 

『もっともっと現象』

 正治さんが私に教えてくれた練習ドリルは、どれもユニークな名前がつけられていました。正直どれも驚く名前でしたが、正治さんは体の各パーツがスムーズに動き、筋肉と脳の回路が結びつきやすくなるドリルを試行錯誤しながら開発してきた結果、そういうネーミングになったと言います。

 正治さんは言います。 

「人の体や能力は人それぞれですから、どのドリルがその人にとって正解かはわかりません。しかし少なくともこれらのドリルを行うことによって、初心者がはまりやすい、筋肉が楽に動いてしまおうとすることによって起きる、間違ったスイングを作り上げてしまうことは避けられます」

 私は正治さんのその言葉を信じて、早速前回学んだ「ループドリル」を試そうと思います。とはいえ、その前に右手1本でクラブを持って「グルグル肩回しドリル」を行いました。これは肩関節を柔軟にするドリルで、私の右肩はゴリゴリと軟骨が音を立てました。左肩も同様のドリルを行いました(編集注※簡単な動作なので写真はありません)。

 それから「ループドリル」です。ユーティリティでアップループ、上から叩くダウンループで、ボールは引っかかり、フック回転していました。通常アウトサイドインはスライスとなるカット軌道、しかし私の場合はアームロールを入れるのでフックになったのです。

 私はボールを真っ直ぐ飛ばそうとせず、ボールを引っ掛けてつかまえる「引っ掛けショット」の練習から入っていたので何の抵抗もありませんでした。もし、私が真っ直ぐの打球を意識していたら、フォローで左脇が開き、スライスやシャンクになっていたでしょう。

 次々とボールを打ちながら、私は左へ飛び出すボールをセンターに出そうと意識しながら上から叩いてみました。不思議な感覚を覚えました。それは、上半身の捻りと腕の動きによる、レートヒット感覚でした。この言葉は後で正治さんに教えてもらって知ったのですが、要はボールを早打ちすることなく、待ってから打てるという感覚です。ヘッドを遅らせて、打つときにヘッドをサッと走らせて打つ感覚と言ってもいいです。

 ボールは高い、軽いフックになって70ヤードある練習場のネットの上段に飛んで行きました。多分、100ヤードは飛んでいたでしょう。私にとっては未知の世界で初めての体験でした。その後、ボールの位置に頭と目だけを残し、目だけでボールを追いかけてボールを打ってみるとミートが安定するようになりました。スイングづくりは基礎の上に少しずつ矯正を行って徐々にできあががっていくものだと実感しました。

 練習を重ねるうちに、正治さんが言う「もっともっと現象」に入ってしまいました。これは「もっと」いい球を打ちたい、飛ばしたいという意識です。私は「もっとスイングスピードをつければ、もっと飛ぶいい球が出る」と思いながらボールを打ち続けてしまったのです。すると、ミスショットの連続になってしまいました。

「いいボールを打つことなど、そう簡単にはいかない」

 そう思い直して、ゆっくり力を抜く打ち方に戻し、タイミングを調整することを念頭に練習を終えました。

 しかし、基礎がしっかりできていれば、スイングは日々成長して行くのだと少し希望が芽生えました。

 後日、この日の練習を正治さんに話しました。正治さんは「レートヒットになったのは、スイングに柔らかさが出たためだ」と解説してくれました。昔の玩具のデンデン太鼓のように、体の回転に伴って柔らかく腕が少し遅れてついてくる現象とのこと。別名「いやんいやん打法」だそうです。またしても驚かされるネーミングでした。しかし、これがレートヒット感覚ということです。

 しかし、このフィーリングは偶然の産物で、私が「引っ掛けショット」を熱心に続けているからこそ感じることができたフィーリングということでした。

 このフィーリングを度々感じるようになれば、私のスイングは上達に向かっているということになります。多分「引っ掛けショット」と「レートヒット」とのバランスが上手くとれた時だろうなと思いました。それは教えてもらうものではなく、自分で見つけ出すスイングということでした。

 正治さんは言います。

「初心者の上達は、基礎練習の徹底と、それに加えて、そこから生じる偶然のフィーリングの積み重ねによってもたらされる。偶然は『気づき』と言い換えても良いでしょう。『気づき』に数多く遭遇して自分の中に変化が起こり思考の柔軟性ができるのです。1つのことに執着せず、何でも受け入れられるようになれば、体は自由に動き上達の段階を一段ずつ上がることになるでしょう。また『もっともっと現象』はプレーヤーが誰でも陥る現象です。いいボールが打てるとさらにいいボールを打とうとそれを追い求め、スイング崩してしまのです」

 それに加えて「ワンポイント崩し」ということも正治さんは教えてくれました。「ワンポイント崩し」とは、何か良いヒントが練習中に見つかると、そこに意識が集中して体が硬くなりミスに繋がる。例えば今回のレートヒット感覚もそうです。偶然に上手く打てたワンポイントを求めてミスになってしまう現象です。

 また、スイングにおける意識は全体の流れを伴っていなくてはならない。簡単に体の力を抜くと言ってもできるものではなく、体をいろいろと動かす中で、徐々に各々のパーツが動くようになり、脳との回路もできてきてスムーズなスイングができるようになるとのことでした。そう言われても、私には良くわかりません。体のいろいろな部分に意識を向けず、流れるようにスイングしろということなのでしょう。心掛けたいと思います。

 正治さんの提案で次回は多摩川河川敷の打ちっぱなし練習場に行くことにしました。

                          (次回第8回に続く)

文:久富章嗣(ゴルフ工学研究所所長)編集:島田一郎(書斎のゴルフSTAFF)

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