編集長・ホンジョーのつぶやき その3

「あるがまま」の勧め

 ゴルフは羊飼いが自分の杖で石ころを打って兎の穴に入れていたことが起源だと言われている。それはあくまでお伽話、伝説だという人もいるけれど、いまでもまったく変わっていない。クラブでボールを打って穴に入れるという非常にプリミティブな遊びだと言うこと。個人の遊びからやがて相手のある遊びとなったが、原点は変わらず、「そのまま」打つということだけだ。それであれば公平に単純に競い合うことができる。それがゴルフの成り立ちだから、いまでもルールブックの冒頭にそのことが書かれている。

「play the ball as it lies」、球はあるがままに打て。つまり、ノータッチでプレーすることが大原則。6インチプレースがOKとされることがあるけれど、ボールに触った途端、それはゴルフではなくなる。違うゲームになるのだ。もちろん、ボールが芝のはげたベアグラウンドやディボットに入っていることもあるだろう。しかしそれもコースはあるがままにプレーすることが大原則だとルールブックに書かれているのだから、コースの状態がよくなくてもそのままプレーしなさいということだ。一見不公平にも思えるが、実は公平なのだ。運のいいときもあれば悪いこともあり、それは誰にもでもあることだし、18ホールを回ればおおよそ公平になるということである。

 最近のトーナメントではルール上、ウェットなライではボールを動かせるし、時にはその日のルールでボールに付いた泥を拭き取ることさえできる。しかし、それで良いものなのかと思ってしまう。運不運を受け入れてこそゴルフなのではないか。そう言った意味では中部銀次郎さんという人は絶対と言ってよいほどボールには触らなかった。雨の日でぐしゃぐしゃに濡れたライからでもそのまま打ったと言われる。ルール上救済処置がとれても、彼のルールにそれはなかった。彼のルールブックには「あるがままに打て」という大原則しかなかったのだろう。それがゴルフだというわけである。

 ホールアウトもまた同様である。ワングリップOKなどと言われ、カップにボールが入らなくても良しとされる風潮があるが、これもまたそれをしてはゴルフではなくなる。例え50cmでも外すことはある。ワングリップOKのスコアは本当のスコアではない。プレーを迅速にするためというのはあくまでも言い訳である。羊飼いも兎の穴に入れていたのだ。ボールを穴に入れないのはゴルフのお伽話、伝説さえも逸脱している。

 というわけで、ゴルフをするのであれば、ノータッチ・ホールアウトで行いたい。なぜならそれがゴルフの大原則であるからだ。厳しいという人がいるかも知れないが、一度やってみると、その潔さから清々しい気持ちになる。晴れやかな気持ちでプレーできる。ゴルフをやってよかったなとつくづく思えるのだ。しかも難しいライからしっかりと打つことができたときの嬉しさは格別であるし、ミスをしてもおおいに納得できる。ゴルフは自己満足のゲームである。他人にとやかく言われる必要は何もない。スコアもノータッチ・ホールアウトでこそ納得でき満足できる。自分を誇らしく思えることもあるが、当たり前のことをしているだけだと心すべきである。

 当たり前のことを当たり前にやる。真っ当なゴルフを真っ当にやる。何事においてもそういうことが少なくなってしまった世の中で、自分のゴルフくらいやってみてはどうだろう。気持ちよいゴルフになること請け合いである。

                            (文/本條強)

PAGE TOP