百打一郎と申します! 第1ステージ第8回

『バレリーナドリル』と『フェアウェイキープ率80%の考え』

多摩川河川敷の打ちっぱなし練習場は、ショートコースに隣接していて、バンカーもあり、距離は200ヤード、打席数は50席という広々とした設備でした。私はボールがつかまる感覚を確認し、同時に今のスイングでどのくらいの飛距離が出るのかを知りたいと思いました。

 正治さんからは、コンペに出場するには最低120ヤードの飛距離がないとスコアにならないと言われていました。広々した場所で、気分的にも期待は膨らみましたが、正治さんのアドバイスでスタンスは正治さん考案の「バレリーナドリル」のアドレスを取り入れて、ボールを右に置き素振りをしてみました。とてもいい感じで目標を意識して振り抜ける感じでした。

 このアドレスは飛球線に対して、右足を大きく引いて、スタンスは狭くし、ボールは右に置く、いわゆる体重移動の無い、従って初心者に多いスエーを防ぐ、一軸のスイングだそうです。バレリーナが一本足で立っている姿から名付けたとのことです。

 正治さんの話では、スイングの考え方には二通りあり、1つは一軸理論、もう一つは2軸で左から右、右から左への体重移動を伴うスイング理論だそうです。

 このアドレスの目的は、深いトップと腕の脱力にあります。腰はすでに開いていて懐は広く窮屈感がなく、パラレルに構えた時より腕がスムーズに上げられました。

 まずテークバックで肩、腰を回し、後から引きずるように手を上げていくと上半身の力が抜け、腕の硬直は感じませんでした。

 左腕を伸ばせというレッスンは上級者向けで、私の目的はいかに腕を脱力するかです。腕と上半身に力が入ればトップは浅くなり、打ち急ぎの原因になります。

「バレリーナドリル」のアドレスにも正治さんの「思考の脱力」のポリシーが活かされていると感じました。

 私の「バレリーナアドレス」はクローズドバレリーナアドレスで、逆のオープンバレリーナアドレスもあり、人によって体の柔らかさや手首の柔軟性が異なるので、正治さんは両方試してみて自分に合うアドレスを探すことが大切だと言っていました。

 当然ボールの位置も右から真中、左と変えてみることが必要です。

 普段から、体のいろいろなパーツを動かしておくと、ミスショットが出た時に、体が反射的に反応して、大きなミスに繋がることを防いでくれる効果があるとのことです。

 正治さんが様々なドリルを考えるのも目的はここにもあるようです。

 初心者が120ヤードの飛距離で、ゴルフの大原則である、フェアウェイキープ率80%を維持するには、この打ちにチャレンジすることも選択肢の1つと思いました。

 200ヤードの飛距離が出てもフェアウェイキープの確率が20%ではゴルフになりません。プロゴルファーでもテレビ画面に映るのは、このフェアウェイキープ率80%の考えが通用するスイングを身につけた人たちです。そうでないプロは永久にテレビ画面には現れて来ません。

 今年も3月4日に沖縄で女子プロゴルフ第1戦「ダイキンオーキッドレディース」が開催されました。注目の渋野日向子選手は3日目、ロングホールの2オン狙いを封印、100ヤード以内の第三打を残すマネージメントでパー5のすべてのホールをバーディーで仕上げています。

 サム・スニードは若い頃、ロングホールをツーオンするのが自慢でしたが、3打目をSWで打つように考えを変えてから、大きな大会に勝つようになったと言っています。

 野球では3割バッターは素晴らしいが、ゴルフでは「フェアウェイキープ率80%の考え」が基本にないと上達しない。とりわけ、100切りゴルフには最も大切なコンセプトだと正治さんは繰り返し話してくれました。

 打球がばらけ、フェアウェイキープが難しい、いわゆるポップコーンショットではいつまで経っても、スコアが纏まらない。上達しないのだと。

 正治さんが私に言います。

「この50年間のゴルフクラブの進化で、アマチュアゴルファーのドライバーの飛距離は30~50ヤード伸びたと言われている。しかし、残念ながら、スコアは伸びていない。飛距離が伸びても、腕前は変わらない。

 未だに100切りが大きなテーマなのです。初心者に必要なのは、部分的なハウツーレッスンではなく、ゴルフは「確率」のゲームだという「全体像」を学ぶことが大事なのです。

 いかに、致命的な、OB、池ポチャ、チョロ、トップ、シャンクといったミスをしないで、挽回可能なより小さいミスでプレーを続ける。それが『ゴルフは確率のゲーム』と言われる本質。

 プロのように格好良くプレーする必要はありません。それはTVで楽しめばいいのです」

 いかに「かっこ悪く」自分のゴルフに徹するかが、「レッスンを受ける心得10ケ条」の「今やっていることだけに集中する」ことの本質だということです。

 正治さんは続けて言います。

「120ヤードしか飛ばさなくても良いと書いてあるレッスン書はありませんし、あっても売れないでしょう。だから、上級者向けのレッスン書を参考にして、初心者は200ヤードフェアウェイキープ、20%の確率を80%にしょうと5年も10年も先の見えない練習に励むのです。それには桁外れの練習量とラウンド回数が必要となります。それは絵に書いた餅だとは誰もアドバイスしてくれません。初心者がスコアアップで悩むのは、初心者向けのレッスン書が存在していないからなのです」

 そして、最後に正治さんが笑いながら私に言いました。

「一郎君は飛ばさないゴルフのどこが面白いのだろうとほとんどの人に言われるだろう、辛抱できるかな~」

                          (次週に続く)

文:久富章嗣(ゴルフ向学研究所所長) 編集:島田一郎(書斎のゴルフSTAFF)

このたび、久富さんのドリルを集めた本『月3回の練習で100を切る!久富ゴルフ・レッスンブック』の電子版がアマゾンより発売されました。オールカラーの改訂版です。『百打一郎と申します!』がよりわかりやすくなること請け合いです。

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