YNGゴルフ研究会 書斎のゴルフSpirits その6

ゴルフの練習で大切にしたいもの その6 セットアップ

(スタンス・アドレス/ポスチャー・ボールの位置)の練習こそが基本中の基本

 アマ100勝の坂田哲男さんは「打つ前にミスをしない」と語っています。それは故・中部銀次郎さんの言う「アドレスがすべて」に通じることだと語っています。阪田さんは続けてこう言います。

 「ゴルフは技術や体力だけで押し切れるものではない。「考える」というキーワードが加わってこそ、総合的な「ゴルフ力」が育ち、鍛えられていく。

 「考える」とは状況を読む、正しいクラブや攻め方を選択する、正しくアドレスするなど多岐にわたる。

 「考える」とは「打つ前にすべきこと」と置き換えられる。その部分をいい加減にしてしまったり、間違ったことをしていては、いい結果は望めない。うまいゴルファーほど打つ前の過程を大切にし、なおかつそこでのミスが少ない。だからこそ、スコアメイクに長けているのだ。つまり「打つ前にミスをしない」ということが上達するうえで絶対に必要になってくるのである

 練習場でアマチュアゴルファーを観察していると、打席に着くとすぐにクラブを持って、

“フルショットばかり打つ”

“次々と球を打つ”

“ドバイバーばかり打つ”

 という典型的な上達しない練習をやっている人がたくさんいます。なかには打席に着くなり、いきなりドライバーのマン振りをする人も少なくありません。

 それに比べて一部の上級者やジュニアはウォームアップのバット素振りから始まってアライメントスティックを置いてセットアップ(スタンス・アドレス・ボールの位置)をチェックしてから、左右の片手スウィング、アプローチ、ハーフショットといった順番で練習をし、ドライバーのフルショットはごくわずかの球数です。

 多くのアマチュアの場合、坂田哲男さんがいう、「考える」というキーワードを持ち合わせず“打つ前にすでにミスをしながら、ミスショット”の練習をやっているような感じです。

 日本アマ、ミッドアマ、シニアの3冠を達成した和田博さんは次のように語っています。

プロのように球数を打てないからこそ、ゴルフ感を養うための工夫を家で行っている。毎日5分自宅でのアドレスチェックを怠らない」
「ゴルフで最も大事なのはアドレスです。アドレスが狂っているとあらゆるミスを生みます。もしバランスがとれた理想的なアドレスを常に作ることができれば、毎日球を打っていなくても好不調の波を小さくすることができ、“ゴルフ感”を保てるのです」

「自宅の練習法は、アイアンを持って正面と横にセットした大きな鏡の前に立ってアドレスチェックをする。
飛球線、もしくは後方に置いた鏡では前傾時の背中のラインをチェックします。反りすぎていてもダメだし、丸く曲がっていてもダメ。ソールした時の正しいライ角に構えて、股関節の入った自然な背筋の角度のアドレスを作ることが大切です」
「正面の鏡では左右の体重配分が5対5になっているかをチェックします。日常生活で最も狂いやすいの

が左右のバランス。左右のバランスがとれて、重心が下に下がった安定した構えになっているかを試しま

す」

「暇があればグリップを握ってフィンガーで握れているかをチェックしたり、パターマットで緩まず打てるかを

チェックしています」

 故・中部銀次郎さん、坂田哲男さん、和田博さんという日本を代表するトップアマは口をそろえてスウィング以前の準備が大事だとアドバイスしているのです。

■グリップとセットアップ(スタンス・アドレス(ポスチャー)・ボールの位置)はすべてがつながっている

 今年は「ゴルフの練習で大切にしたいもの」をテーマに研究してきました。スタンスに始まりアドレス(ポスチャー)、ボールの位置、そして最後にグリップでした。一般的なレッスンはグリップから始まりますが、はじめにグリップを考え過ぎるとグリップばかりを気にして、頭が下がって(目をグリップに近づけて)、猫背で前傾が崩れたアドレスになってしまいます。人間一度にいくつものポイントをチェックできません。スウィングは両脚で立って行う運動です。まずは足の構え、スタンスから考えるというのも一つの方法ではないでしょうか。

 ある上級者の方から「球を上げたい」と尋ねられたことがあります。その方はかなり狭いスタンスだったので「右足を一足分広げたスタンスにしてみてください」とアドバイスしたことがあります。さすがに上級者で、すぐにいい感じの高さで球が飛んでいきました。上級者といえども調子が悪くなると、前傾が深くなり、スタンス幅が狭くなり、左脚荷重になってきます。つまり大きな構えができずに詰まった感じの構えになってしまうのです。

 クラブを持たずに、両足均等に荷重してから右足を広げると、頭は右へ動きやすく、背骨(軸)は当然右に傾くアドレスになります。するとボールの見え方がまるで違った感じになります。ボールを真上からではなく斜め(横)から見るような感じになります。

 すると、いつものグリップではない違和感を覚えます。しかしグリップをつくってからスタンスとアドレスをとるようにすると、グリップにこだわって頭を右へ動かすことができず、下半身と背骨が逆くの字やS字に曲がったアドレスになってしまうことが多いようです。

 そうなると下半身と体幹の回旋が連動しなくなり、肝心の下半身と体幹の捻転が十分にできなくなります。コマの軸が曲がっているのと同じです。背骨が逆くの字やS字に曲がったアドレスをしている人はたくさんいます。そうなるとたいてい頭がボールの真上近く(左過ぎ)になります。上級者のアドレスは、頭から背筋がスーッ伸びて、広くて恰好よく見える感じがします。もちろん頭はボールの右にあります。練習場で前方の打席のゴルファーの背中を観察してみるとよくわかります。ほとんどの人は頭がボールの右にありません。

 スタンスとアドレスを修正すると、頭と上体(軸)が右へ動くために、ボールの位置も元の位置から右へ動かす方が合理的なボールの位置になります。このようにスタンス・アドレス・ボールの位置はすべて関連します。

 グリップとセットアップ(スタンス・アドレス(ポスチャー)・ボールの位置)は密接に関連しています。それをすべて一度に修正することはほとんど不可能に近いのではないでしょうか。だからこそ練習が必要になります。

 ベン・ホーガンのスクウェアグリップに修正してスウィングそのものを変えた故・中部銀次郎さんのはなしやストロンググリップを1日1ミリずつスクウェアグリップに修正した陳清波プロのはなしは貴重な教訓です。

 グリップとセットアップ(スタンス・アドレス(ポスチャー)・ボールの位置)を一つ変えるとミスショットが多くなります。多くの人は、それでは(ナイス)ショットが打てないために、またすぐに元のグリップとセットアップに戻してしまいます。それでは、真の上達はできないのではないでしょうか。日々スウィングの手と腕の使い方ばかりを変えている。それが一般的なアマチュアの実態です。

 真に上達を望むなら、坂田哲男さんの言う「打つ前にすべきこと」をきちんと準備する必要があります。

 「激芯ゴルフ~93期生への道~」というTV番組があります。JLPGAプロテスト合格を目指すゴルファーの奮闘記です。からだ、スウィング、パッティング、コースマネジメントやクラブフィッティングなど大変興味深い内容です。一般のレッスンでも、からだ、クラブ、マネジメントやグリップとセットアップについて、「打つ前にすべきこと」をもっとたくさんアドバイスしてもらいたいものです。

 この番組のなかで、ドラコンプロの安楽拓也さんは飛ばしのスウィング、南秀樹プロはパッティング、海老原清治プロはアプローチについてアドバイスしています。そのほか4スタンス理論によるからだの使い方、トレーナーによるトレーニング、プロキャディーによるコースマネジメント、クラブフィッティングではバラバラなセッティングのチェックと適正なセッティングなどをアドバイスしています。

 面白いのは、一般的なスウィングのテクニックではなく「打つ前にすべきこと」に焦点をあててアドバイスしていることがポイントになっていることです。

〇安楽拓也プロの飛ばしのアドバイスでは、グリップの力を抜く、右脚にしっかり荷重したアドレスとトップスウィング

〇南秀樹プロのパッティングのアドバイスでは、パッティングのグリップとセットアップ

 2人ともにグリップとセットアップを重視したアドバイスしています。つまり坂田哲男さんが言う「打つ前にすべきこと」です。ナイスショットが打てるプロの卵でもまだまだ未完成だということがよく分かります。

 アマチュアは歪んだグリップと歪んだセットアップでナイスショットを追求しようとしています。アマチュアは「打つ前にすべきこと」、すなわちグリップとセットアップのレベルアップに努める必要があることは当然です。加えてクラブチェックとフィッティングも「打つ前にすべきこと」です。能力に合わないクラブ、バラバラなセッティングではいくら練習しても上達することはできません。コースでは当然マネジメントも「打つ前にすべきこと」です。こうした基本をおろそかにしているのが一般のアマチュアの実態なのです。

スタンス

 スウィングは足首から上のからだ全体を捻転する運動です。しかも、デコボコな地面の上に立ってボールを打つゲームです。スタンスがその運動を支えることができなければ、1m以上あるクラブヘッドでわずか1センチほどのフェイスの芯でボールを打つことはできません。

 スタンスの幅はクラブの長さと飛距離に応じたものがあります。アマチュアの多くはスタンスの幅がすべてのクラブで同じという人がたくさんいます。両足を揃えてドライバーのフルショットはできません。逆にドライバーのスタンスで10Yのアプローチは打てません。

 スタンスが狭い、広いは人それぞれですが、クラブと飛距離にあったスタンス幅を見つけるととてもシンプルなスウィングになります。ドライバーのフルショットで狭いスタンスや広いスタンスを試してみたり、10Y、30Y、50Yのアプローチでスタンス幅を変えてスウィングすると、何も考えなくても距離が合うスタンス幅があることに気づくようです。

 いろいろなクラブで左脚荷重、両脚均等荷重、右脚荷重と、左右の荷重を変えてスウィングしてみるとスムースにスウィングできる荷重が分かってきます。同じようにつま先荷重、土踏まずに荷重、かかと荷重と変えてスウィングしてみるとスムースにスウィングできる前後の荷重が分かってきます。さらにオープン、スクウェア、クローズドスタンスと変えてスウィングしてみるとスムースにスウィングできるスタンスの向きがあるはずです。

アドレス(ポスチャー)

 前傾姿勢をとらずに直立してスウィングしてみてください。とてもスウィングなどできません。上体を90度曲げてスウィングしてみるとこれもスウィングできません。お腹から前傾して体幹の捻転してみる、骨盤から前傾してみる、どちらが腰と胸と肩が十分に回旋できるかが分かります。骨盤から前傾した方がはるかに腰と胸と肩が回旋しているはずです。

 からだ(脚・腰・胸・肩)の向きを開いたり、閉じたりしてスウィングするとターゲット方向にスウィングできる向きを感じとることができます。

 頭の位置と背骨の傾き(曲がり)はアドレスのポイントです。これはボールの見え方が大きく変化するために自分でチェックするのは難しいかもしれません。プロにチェックしてもらうことをお勧めします。頭の位置と背骨の傾き(曲がり)はアドレスの最重要課題かもしれません。他の人からアドバイスを求められるといつも背中の方から見て、アドレス時の頭の位置と背骨の傾き(曲がり)をアドバイスしています。ポイントは、頭がボールの後方(右)にあることです。アドレスを背面から見ると、骨盤の傾きと背骨の傾きがよく分かります。

ボールの位置

 ダフル人はボールをからだから離す、トップする人はボールを近づける、スライスする人はボールを右に置く、フックする人にはボールを左に置くようにすると多くの人はそれだけでミスが減ってきます。

 ただし、この時もボールの見え方が大きく変わるために、相当な違和感を覚悟しなければいけません。ボールの位置を変えただけで簡単にスムースなスウィングになる場合もあります。

 ボールの位置はアライメントスティックやクラブで自分でもチェックできます。はじめのうちは違和感があるためにプロにチェックしてもらうことをお勧めします。そして、練習はボールの位置探しが目的だと考えると練習の中身が一段階レベルアップしたものになります。

グリップ

 スタンス・アドレス・ボールの位置が変わるとグリップも微妙に変わります。もともと長さとライ角度の違うクラ

ブでは、グリップは微妙に変わります。グリップはスウィングの顔の表情であるとも言えます。

 レッスンの神様 ハーヴィー・ペニックは「グリップが悪いと、いいスウィングを望むことはできません。 グリップが悪いのに、スクウェアにボールを打とうとしたら、スウィングの至るところを醜く矯正しなければなりません」と語っています。

 グリップはインパクトでクラブフェイスがボールにスクウェア(飛球線に直角)に当たることが基本です。そのためにも柔らかグリップを試し続けると、自然に良いグリップに近づくのではないでしょうか。

 グリップとセットアップは切っても切れない関係にあります。スウィングはグリップとセットアップでつくられます。プロに教わり、時間をかけてしっかり練習すべき基本中の基本の課題です。

 キング・オブ・プロ、ウォルター・ヘーゲンはグリップは手だけのものではない。スタンスにおける両足の『グリップ・オブ・ザ・グラウンド』は、手のグリップにまさるとも劣らないほど重要なのだ」と語っています。

 もう一度チェックすべき基本中の基本

 ハーヴィー・ペニックは「調子が悪いなら、グリップ、スタンス、目標の定め方、ボールの位置などの基本をもう一度確認してみることです。大半のミスは、スイングする以前のものものなのです」とアドバイスしています。

 故・中部銀次郎さんは「ゴルフにとっていちばん難しいのは“立つ”ことなのである。そんなバカな――という人がいるかもしれない。確かに、バカなことに聞こえるもするだろうが、実は違うのである。いったんクラブを握り、ボールに向かうとなると自然に立てなくなってしまうのだ」と語っています。

 故・中部銀次郎さんは、ラウンド前の練習では2番アイアンだけを練習したといいます。それは2番アイアンが当時のクラブセッティングのなかでちょうど中間の長さで、アドレスの前傾角度をチェックするためだったからだそうです。アドレスの前傾が決まれば、スタンス・ボールの位置とグリップも同時にチェックできます。“ゴルフはアドレスがすべて”という言葉を実践した練習だったのです。

「多くの初心者はゴルフスイングの基本を理解する前にスコアーをつけようとする。これは歩くことができる前に走ろうとするようなものだ。」とジーン・サラゼンが語っています。

 この言葉を借りるならば“多くのゴルファーはゴルフスウィングの基本を理解する前にボールを飛ばそうとする。これはグリップとセットアップができる前にナイスショットを打とうとするようなものだ”と言い換えることができます。基本とはグリップとセットアップということを意識すれば、かならず目の前に光がさしてくるはずです。この基本の意識が薄いと、スウィングはいつまで経っても日替わりの手と腕の使い方だけに終始してしまうのです。

ある100切りゴルファーのはなし

 先日ある100切りを目指す方がニコニコしながらこんな話をしてくれました。「やっと分かった。手や腕はなにもしないことだ。今まで何回も注意されたように、グリップの力を抜いてやっと分かった」とのことです。

 このお話を伺って思わずサムアップでした。かれこれ3年以上、“グリップの力を抜いて、ただクラブを振るだけ”というアドバイスをしてきた成果がようやく実ったように感じました。

 そして、その方が自作の練習用のクラブを見せてくれました。古い3番アイアンのシャフトに鉛をべったり貼ってとても重くしたものでした。「これを振ると、手や腕は何もできないのがいい」とおっしゃっていました。これは驚きです。スタンスにはやや歪みがあるものの、アドレスとボールの位置が以前とは比べものにならないくらいいい感じで、スウィングがスムースになりました。ショットももちろん安定感が出てきました。これなら安定した100切りは間違いなしです。

あるシングルゴルファーへのアドバイス

 あるシングルゴルファーの方から「試合ではグリーンオーバーを何とかしたい。そのために高いボールを打ちたい。頭が突っ込んだフィニッシュを直したい」と言われたことがあります。ミスショットはたいてい低いヒッカケです。何日も練習場でスウィングを観察して、次のようなアドバイスをしたことがあります。

〇アイアンでは、両脚均等荷重のアドレスにする(本人は相当右脚荷重の感じという感想でした)

〇ドライバーでは、さらに右脚荷重でアドレスにする

〇そのとき 頭の位置は今よりかなり右になる。ボールの位置もボール2個分くらい右に寄せる

というものでした。結果は、いい感じの球の高さになり(ドライバーで15mくらいから25mくらいにアップ)になりました。低いヒッカケ気味のミスは陰を潜め、方向性も断然よくなりました。これでグリーンオーバーは解消し、ピンをしっかり狙っていけます。結果は研修会でNo.1だったとのことです。

 故・中部銀次郎さんがこころからの声で語っていた“ゴルフはアドレスに始まってアドレスに終わる(グリップとセットアップ)”をしっかりとかみしめたいものです。

若かりし頃の中部銀次郎

                         文●柳生田幹久(YNG研究会 書斎のゴルフSTAFF)

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