YNGゴルフ研究会 書斎のゴルフSpirits その7

ゴルフの練習で大切にしたいもの その7 

リズム・テンポとルーティン

 練習場ではナイスショットが打てても、スコアがよくならない人はたくさんいます。

 「プレーは、結果によって考えず、原因で考えるのが上達の秘訣である」

 このベン・ホーガンの言葉に従えば、我々は練習のための練習をやっていて、実際のプレーのための練習をやっていないということかもしれません。コースでは練習したことしかできず、練習したことがないものはできません。練習場でスウィングだけを練習しても、スコアには結びつきません。スイング練習は、リズム・テンポとルーティンを見直すことでスコアアップにつながるのではないでしょうか。

Play fastでスコアアップした

 以前、100切りしたいという方にプレーのリズム・テンポとルーティンだけをアドバイスしたことがありました。それ以外は一切アドバイスしませんでした。これが効果てきめんで、何回目かのラウンドでは見事に100切りしました。

 その方は、周りからプレーが遅いと言われていて、少し煙たがられていました。

「〇〇さん、もう少しプレーを早くした方がいいスコアになりますよ」とアドバイスすると「自分は、プレーは遅い方ではない」という答えです。

  そして、その方が聞くことと言えば決まって「飛距離を伸ばすにはどうしたらいいか」「(スライスを)真っすぐに打つためにはどうしたらいいか」「高くて止まるスピンの効いた球はどう打つか」でした。これには「プレーを早くすると、ショットがよくなり、スコアはがよくなります」としつこくアドバイスし続けました。

 その方の実際のラウンドを見ると、ハーフで3時間近くかかることもあります。まず動作がゆっくりで(実際は緩慢という感じ)、歩きも遅く、ルーティンは目標を確認してから素振りとスタンスの確認を何回も繰り返していました。

 スコアもさることながら、他の人からプレーが遅いと煙たがられていることを何とかしてあげたいと思い、練習場で顔を見かけると1時間ちかく(いつも1時間の打ち放題で練習するため)付きっ切りで練習にお付き合いしました。もちろん3つの要望については何もアドバイスしません。 

 「なぜ何回も目標を確認するのですか」とお聞きすると、「目標を確認しても、アドレスすると目印(スパット)が分からなくなる」という答えです。

 「なぜ何回も素振りをするのですか」とお聞きすると、「打つ前に、素振りをした方がいいと言われた」という答えです。

 「なぜスタンスを何回も仕切り直しするのですか」とお聞きすると、「目標が分からなくなるのでスタンスを確認している」という答えです。

 練習場で多くの人は、目標を決めず、スタンスの確認をせず、素振りもしないで、次から次へと球を打つています。そういう意味では、この方はルーティンをしっかりやろうとしているのでいいことをやっています。しかし、そのルーティンがスウィングとプレーのリズム・テンポを壊すことになっていることが惜しいところです。これは、ルーティンの意味とやり方を正しく理解していないために起きる現象です。ルーティンはいいリズム・テンポをつくるためのものと考えることが必要です。

完璧なセットアップと思う事がイップスに繋がる

 スロープレー氏の練習を見ながら再び話しかけます。

 「そういう感じで構えると、ナイスショットが打てそうな感じになりますか」とお聞きすると、「うーん・・・、何か不安がある」という答えです。

 本人はしっかり準備してからスウィングしようとしているにもかかわらず、時間をかけ過ぎて不安だけが増幅する結果になってしまいます。つまりこれはイップスに通じる心理現象です。不安や恐怖はそれを感じる時間が長くなればなるほど増大することは心理学で証明されています。

 バンジージャンプでは準備したらすぐに飛ぶことはできても、5分間待ってから飛び降りてくださいと言われたら、誰も飛び降りることはできなくなります。それと同じです。

 その後、目標を決めたら、すんなり構えて、すぐに打つことを何度もアドバイスしました。いつも通りのルーティンで打ったショットと時間をかけずに打ったショットを交互に打ち比べてもらいました。結果は時間をかけずに打ったショットの方がはるかに安定したショットになりました。「そうなんだ。すべて完璧にしないとナイスショットにならないと思っていたけど、細かいことを気にせずに、すぐに打つ方がいいんだ」というのが感想でした。

 練習場で目標を何度も確認して、素振りを何回も繰り返して、スタンスをあれこれ変えていると、それがルーティンになって身についてしまいます。時間をかけ過ぎたルーティンを実際のティーイングエリアでやっていたら、プレーが遅くなり、スコアは良くなるはずもありません。

 PGA会長の倉本昌弘は「構えたら3秒で打つ」と語っています。

 練習ではしっかりグリップとセットアップを確認しながら練習すべきです。しかし、それを一つ一つ考えながら時間をかけ過ぎていてはスウィングをいう運動はできません。グリップとセットアップならまだしも、スウィングをテイクバック、トップスウィング、切り返し、ダウンスウィング、インパクト、フォロー、フィニッシュを一つ一つ考えていたのでは、とてもスムースなスウィングはできません。そういう感じでスウィングの流れを無視して、スウィングの恰好ばかりを気にして練習している人はおおぜいいます。

 ツアー82勝のサム・スニードは「ゴルフは音楽だ」と語っています。いいリズム・テンポはいいスウィングといいプレーにつながります。そのリズム・テンポはスウィングの前のルーティンでつくられます。

ルーティンがないからいいリズム・とテンポができない

 練習場で上手くなれない練習をやっている人がたくさんいます。

〇ターゲット・グリップ・セットアップを確認しないでスウィングする

〇飛ばしのフルショットばかりを打つ

〇次から次へと球を打つ

〇ナイスショットばかりを打とうとする

〇手と腕の使い方(からだの使い方)ばかりを気にしてスウィングする

〇ボールに上手く当ることばかりを気にしてスウィングする

 ほとんどの人がこうした練習をやっているのが現実です。こうした練習では上達は難しいのではないでしょうか。これらは、練習のための練習になっているのです。

 コースでは、コースマネジメントが必須です。どんなにナイスショットしても、アライメントが間違っていてOBになったら何にもなりません。ショットから次のショットまでは5分程度の間隔があります。1ホール中に同じクラブを使うことはほぼありません。最後は必ずパットをします。上達しない練習は、とにかく飛ばす、ナイスショットを打つだけの練習は、スコアアップのためにはあまり役に立ちません。大切なことは、コースで役立つプレーのリズム・テンポを身に付けることです。プレーのリズム・テンポを一定にすること、そのためのルーティンを身に付けることではないでしょうか。練習場で身に付けた癖(ミス)をコースで直そうとしても無理な話です。だからコースでは、ルーティンのないおかしなリズム・テンポでしかスウィングもプレーもできません。

名手たちのルーティン

 今日の黄金世代・プラチナ世代のあこがれ宮里藍は、試合前の練習場では1球ごとにアドレスを解いて練習をしていました。宮里家の教えは「セットアップが正しければ、ショットの7~8割は成功したようなもの」です。

 松山英樹は試合のときのルーティンについて聞かれ、次のようにコメントしています。めっちゃ決めてます。1時間半前にコースに着いて、1時間20分前から練習開始。パットを20分やって、ショットを30分やって、アプローチを10分、残りの20分をパットで終わります。」

 Hideki Matsuyama pre-round warm-up routine Hideki Matsuyama pre-round warm-up routine – YouTubeで確認すると、Time 1Hour10Minites、Full Shots 49、Chip Shots 59、Putts 72、Shots  180(73%>100Yardsです。もちろんその前には入念にストレッチとトレーニングをやっています。

 中部銀次郎は、試合の1週間前に組み合わせ表が届くと、スタート時間に合わせて寝る時間や起きる時間も決めていたといいます。そしてこんなことを語っています。

 「スコアを縮めるために、ショットの向上を図ることは、不可欠な要素である。正しいスイングを身につけ、ボールを正確にとらえる感覚をつかまなければならない。

 しかし――と、わたしはあえていう――スコアを縮める最大の要素は、必ずしもショットばかりではない。ほかにさまざまなことがあるのである。

絶えず一定のリズムで歩くこと。たとえミスを犯しても、走り出すなの論外なのである

 スウィングのリズムについて、ジーン・サラゼンは重いグラブで素振りをすると、グリップとリストの力を強めるばかりでなく、スイングで最も大切な正しい体重の移動、フットワーク、腰の回転、リズムなどを自然に会得するとともに、自分の悪いクセまで知らぬまに矯正または予防する効能がある」と語っています。

 タイガー・ウッズがツアーにデビューしたときのコーチ、ブッチ・ハーモンはゆっくり素振りすることをアドバイスしています。

 「フルショットの動作に入る前に、ゆっくり素振りをしてみる。普段のスウィングを100%とすれば、その75%のスピードで素振りするのだ。そして実際に打つ時も、その75%のテンポを崩さない意識を持つ。自分を信じてデービス・ラブⅢ流でいこう。

 効果はてきめん。結果にはあなたも驚くはず。たった75%を意識するだけ?と侮るなかれ。今日一のショットが出ること請け合いなのだ。

 ということで、また1人スコアアップを請け負うコーチが現れました。もう一度、いいリズム・テンポでスウィングしているか、プレーしているか、そのためのルーティンを意識しているか、自分自身を見直してみようではありませんか。

 球聖ボビー・ジョーンズは「滑らかさは、良いスウィングをする上での鍵である。スウィングに欠陥のあるものは、滑らかなスウィングができないような何らかの欠陥を抱えている。」と語っています。そして自身も「わたしは自分のスウィングが異常なほど速くなっていることに気づいた。・・・スムースにバックスウィングを始動させれば、その後の打ち急ぎの弊害を回避することができる。また、ゆったりとダウンスウィングを始動させれば、完全にバランスが保たれ、タイミングのよい正確なショットが生まれる。」と語っています。

 さらに「わたしのこれまでの観察によれば、実際のところ、振り遅れの悪癖を持っているゴルファーなど一人もいない。」とも語っているのです。

リラックスできるリズム・テンポとそれを可能にするルーティンを身につける

 多くのアマチュアには、いいルーティンがありません。スウィングの前の諸準備が不十分で、それは練習していないために当然のことと言えます。

 ナイスショットはスムースなスウィングから生まれ、スムースなスウィングはいいルーティンから生まれます。いいルーティンがリラックスできるいいリズム・テンポをつくります。

 リラックスできるルーティンをいきなりコースでやろうとしてもできるはずもありません。日頃からリラックスできるリズム・テンポに繋がるルーティンを身につける必要があります。ルーティンは、ショットのルーティンだけではありません。日頃の生活習慣を含めてルーティンと言えるのではないでしょうか。

 朝ゴルフ場のロッカーではなぜか人にぶつかりそうになることがあります。練習場の通路や階段でもそういうことがあります。

「練習場では80%のスウィングを心掛けてください。人は誰でも、コースに着くと130%、ティーイングエリアでは150%の出力になってしまいます。練習場で100%のスウィングを練習していたら、ティーングエリアに上がったらそれこそ200%近い出力になってしまいます。200%のマン振りでは、ボールはどこへ飛んでいくか分かりません」と私はアドバイスをしています。

 打席に着くといきなりドライバーを振り回す人、すべてのクラブでフルショットばかり練習している人、次から次へと球を打ち続けている人は注意が必要です。

 スウィングのリズム・テンポはその人の歩くリズム・テンポが基本だと言われます。日頃から背中を丸めて足を引きずるように歩いていては、スウィングのリズム・テンポもそうなってしまいます。中部銀次郎は普段から歩くリズムにも気を付けていました。

 ルーティンは、いいリズム・テンポを作り出すための準備です。ベン・ホーガンはワッグルについて「ワッグルという語感が、無意味に振り動かすだけでよい、と受け取られがちで、・・・それはただ身体が固くならないようにゆったりさせるためだと思い込んでいる。

 ワッグルには、それどころか多くの目的がある。それこそ、ショット・メーキングの特に重要な部分なのである。」と語っています。

 いいリズム・テンポとそれをつくるルーティンは人それぞれです。サム・スニードではありませんが、ゴルフが音楽だとすれば、自分がリラックスできる音楽を口ずさんで練習やプレーしてみてはいかがでしょうか。

                                                      (次回は再来週)

文●柳生田幹久(YNG研究会 書斎のゴルフSTAFF)

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